展覧会Exhibition

逸 ITSU- Japanese Paintings beyond Tradition
左写真:トラとトラ /長沢明
展示の様子
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逸 ITSU- Japanese Paintings beyond Tradition

2010.3.9(火) - 3.14(日) 

大西博、鴻崎正武、菅原健彦、長沢明による展覧会「逸 ITSU: Japanese Paintings beyond Tradition」をヒルサイドフォーラムとアートフロントグラフィックスを会場に開催します。
 いわゆる「洋画」「日本画」の枠を超え、真に「日本の絵画」と呼ぶに値する4名の作家が創り出す世界は、豪華なもの・ダイナミックなもの・荒々しいものとそれに対峙する、精緻なもの・小さなもの・濃やかのものの両極への志向があり、自由闊達で世界に開かれた精神を持っています。今回の展示は、4人の作家の過去の作品と一部最新作を含む一連の作品をタイムリーに紹介するものです。「絵画」のあり方が問われている現代、これらの作品は絵の根源的な姿を示唆してくれるものと思います。皆様のご来場をお待ちしております。

※アートフロントグラフィックスでは3/2(火)~4/4(日)まで鴻崎正武、長沢明をはじめ取扱作家の作品を展示しております。
日程 2010.3.9(火) - 3.14(日) 
営業時間 11:00~19:00 月休
イベント アーティストトーク : 3/13(土)15:00より、ヒルサイドフォーラムにて開催します。(要予約)
関連情報 青梅市立美術館で開催中の、『「日本画」の現在』-現代画家9人の競演-展に長沢明作品が出品されています。
http://www.ome-tky.ed.jp/bijutsu/bijutukan_top.html
関連情報 菅原健彦個展がアサヒギャラリー(山梨県甲府市若松町10-6)で開催されます。
http://www.asahi-gallery.net/top.html

会場地図

本展は、従来の日本画、油絵を背景に独自の絵画スタイルをもつ4人の画家、大西博、鴻崎正武、菅原健彦、長沢明の近作を紹介する展覧会です。既成観念から逸脱した秀逸なアーティストの作品群を「逸」一文字に表し展覧会のタイトルとしています。

油絵出身の大西博(1961-)は南ドイツのニュールンベルク美術大学で6年間学ぶうち、油絵に対してある種の距離感をいだくようになったといいます。「油絵の国に来て、自分が油絵から急に離れ、日本という存在がおぼろげになり始め」た後、アフガニスタン産のラピスラズリとの運命的な出会いがありました。膠、卵黄などによってラピスラズリや水彩絵具を馴染ませながら、バラエティに富んだグラデーションを駆使し、淡い光と影がつつみこむ画面をつくりだしています。

鴻崎正武(1972-)のテーマはTOUGEN、六朝の陶淵明の詩に由来する桃の花咲く仙人郷で、ここにヒエロニムス・ボッシュの絵から飛び出してきたような奇怪な人間や生物がパッチワークされ独特な世界をつくりだしています。伝統的な州浜や金雲や「かけあわせ」で造られた動植物を愛でるのもよし、画面から発せられる中世的なエネルギーに身をまかせるもよし、鴻崎の作品には様々な楽しみ方があるかと思います。最近チベット曼荼羅のコレクションで知られるアメリカの美術館に作品がはいったことからもわかるように、確かに国境、時空を越えて共通に理解されるメッセージを発信しているようです。

菅原健彦(1962-)は多摩美術大学で日本画を学び、都市景観や軍艦島を岩絵具で描く大画面に挑んできました。1994年に受賞した五島記念美術新人賞により翌年ドイツを中心にヨーロッパを旅した菅原は、帰国後山梨県白根町に居をうつし、大自然に対峙した水墨画へとその作風を変えていきました。今回出品される「雪桜―久保桜」「山水」はいずれも2000年に描かれた円熟期の作品で、その豪放な筆使いは自然景の只中に割ってはいっていく作家の姿勢を示しているようです。
近年にはアメリカのフリーア美術館が所蔵する「雲竜図」(傳宗達)に取材し、伝統的な竜の図様を杉板・金箔・白亜・雁皮紙、ガスバーナーなどを用いてまったく別趣のものへと変化させています。具象でありながら、その圧倒的な物質感が抽象画にも通じる新たな境地を拓きつつあります。昨年から今年にかけて練馬区美術館にて大規模な個展が開かれ、今もっとも旬な作家の一人といえるでしょう。

長沢明(1967-)は岩絵具・鉄粉・膠など様々な素材を併用しながら90年代から多様な作品を発表してきました。長沢は近年、「色々な要素が重なり、形のあるものをしっかり描きたい」という理由から「トラ」をモチーフとした作品を制作しています。「獣であればそれで良く、虎らしくないほど自分のイメージに近い」そして「画材混ぜ、下地をつくっているうちに描くべきトラのイメージが決まる」という、時に画面からはみ出す生命力に溢れた存在感のある「トラ」達は、見るものを強く惹きつけ、絵の世界へと引き込みます。

めざす方向も作風も異なる4人の作家ですが、各自の興味の追及、あるいは素材との格闘において現代の日本を今後牽引していく力を備えていることは疑いありません。豪奢で繊細、ときに異界からの要素も積極的にとりいれようとする自由闊達な創造活動の一端を、ヒルサイドテラスの白い静謐な空間の中で体感していただければ幸いです。

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