展覧会Exhibition

藤原泰佑 ‐ 街 ‐ 現在、過去 
追憶 2013 パネルに油彩、コラージュ

  • 藤原泰佑 ‐ 街 ‐ 現在、過去 

サムネイルをクリックすると、拡大表示します。

藤原泰佑 ‐ 街 ‐ 現在、過去 

2013.4.12(金)- 4.28(日)

アートフロントギャラリーでは、東北を拠点に都市の姿を問う作家、藤原泰佑の個展を開催します。

同時開催の竹内絋三展についてはこちらをご覧ください
日程 2013.4.12(金)- 4.28(日)
営業時間 11時より19時(月休)
藤原は、都市を描いてきた。都市といっても藤原の作品では私たちが住んでいるような見慣れた住宅や、昔からある商店などがうずたかく積み上げられ、ビルのようになっている。描かれた都市は日本であるようだがこのように狭い場所に建物がぎっしりと蓄積された街を見ていると日本だけではなく、不思議とアジア諸国の都市をも連想する。
今回の展覧会に出品される作品以前の作品群では都市のランドスケープを描いている。近年の東京のように無限大とも思える既存の街並みの広がりの一角を区画整備によって更地にしてどこも似たり寄ったりのショッピングモールが埋め尽くしていくのとはまた違った、住居や商店の蓄積によって街が形成されてゆく様をランドスケープとして描いていたように思われる。そこには増築されることでより都市がより複雑に成長してゆく姿が捉えられていた。
近年の藤原の作品ではランドスケープという形ではなく、建物という形に複合体としての都市を表現している。むろん東北を襲った未曾有の地震の影響もそこには見られるかもしれない。しかしむしろ、彼の作品は地震や再開発という瞬間的な破壊よりも、むしろ建て増しの隙間を縫うようにして建て増しされることで巨大に成長してゆく都市の形成のありようが主題となっていると思われる。例えば東京という都市を例にとるとマンハッタンのように島として外側に水などの輪郭があるのと違って、地図のような行政区分ではない形で東京という街の全貌を形でとらえることは非常に困難である。ましてや地下を含む都市の姿を立体としてとらえることはできるのだろうか。街は実生活の用途に従い、外に向かって街は成長するだけでなく限られた地面を有効に活用しながら立体的に成長してきたものなのだろう。
藤原の都市には人物は描かれない。それでも描かれた街に生活の気配があるのは、どこか人が使ってきた気配のある家や商店だからだろうか。現在、日本だけではなく、中国などアジアでは再開発が進み、ひと昔どこにでもあった古くからの住宅街や商店街が消えつつある。その代わりに生活感のない近代的なビルやショッピングモールが建てられてゆく。藤原の描く街とは近年ますます片隅に追いやられてゆく、実生活をベースに成長してきた街という失われつつある景色の断片なのかもしれない。
                                   アートフロントギャラリー 近藤俊郎

トップに戻る