展覧会Exhibition
磯野迪子 - Looking into the Street
2013.11.8 (金) - 11.24 (日)
このたびアートフロントギャラリーにおいて磯野迪子の個展を開催します。
日程 | 2013.11.8 (金) - 11.24 (日) |
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営業時間 | 11:00~19:00 (月休) |
会場 | アートフロントギャラリー(代官山) |
オープニングレセプション | 11月8日(金)18:00-20:00 |
大きなスクリーンに団地の映像が投影されている。古い団地はたいてい南向きにベランダが規則正しくにびっしりと並んでいる。団地であるから当然人がたくさん住んでいて、それぞれの窓にそれぞれの世界があることを想像すると気が遠くなりそうである。しかし建物の外からの眺めはひどく無表情で何もないベランダが並んでいるだけである。それが朝になると風景は一変する。一斉に洗濯物や布団が干され、姿は見えなくても人の気配によってその建物の外観の表情はがらりと変わるのだ。磯野が2012年初頭に発表した映像作品は、私たちの見慣れた団地の風景と見えないけれどもそこにあるであろう生活の気配をゆっくりとしたテンポでうまく見せていた。
磯野は人間の日常、その行為に興味を持つ作家だ。人がいるということが本来そこでは重要であるはずだが、磯野にとっての興味は集団としての人間であり、作家はそれを見る観察者といっていい。人それぞれの個性は作品には全く現されない。信号が変わると一斉に動き出したり止まったりする車や人の流れ、雨が降り出すと走り出す人々。一斉に開く傘。例えば大都市のスクランブル交差点を見下ろす窓からそうした人々の動きをじっと観察しているような面白さが磯野の作品にはある。作品の基調となっている対象からの距離感が、作品を見る側には当たり前の風景の中から日常を再発見するような面白さとなっている。
その後も何度か磯野の作品を見てきたが、新聞などから拾った言葉や人の写真をガラスに封じ込めた作品などイメージの選び方が非常に面白いのは作家の天性のセンスなのだろう。今回のアートフロントギャラリーでの展覧会のために磯野は大きな駅の周りを歩き、無数の看板を撮影している。駅ごとに分類していくつかのガラスの中に写真を閉じ込めたオブジェからは何が見て取れるのだろうか。渋谷駅、上野駅などそれぞれの駅によって集まる写真はどう異なるのであろう。あるいはどこへ行ってもチェーン店だらけになっていることを考えれば、渋谷も上野も大差はないのだろうか。一方、傘をテーマに制作した新作群でも作家は街に出て取材を重ねている。開かれた傘を上から撮影した写真が主体となっているが、開かれた傘から人の気配を充分感じさせる優れた作品である。集まったものを作品として再構築し、単なる資料展示のインスタレーションではなく確固たる作品として空間を仕上げる、そうしたこの作家の魅力が伝わる展覧会になると思う。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
磯野は人間の日常、その行為に興味を持つ作家だ。人がいるということが本来そこでは重要であるはずだが、磯野にとっての興味は集団としての人間であり、作家はそれを見る観察者といっていい。人それぞれの個性は作品には全く現されない。信号が変わると一斉に動き出したり止まったりする車や人の流れ、雨が降り出すと走り出す人々。一斉に開く傘。例えば大都市のスクランブル交差点を見下ろす窓からそうした人々の動きをじっと観察しているような面白さが磯野の作品にはある。作品の基調となっている対象からの距離感が、作品を見る側には当たり前の風景の中から日常を再発見するような面白さとなっている。
その後も何度か磯野の作品を見てきたが、新聞などから拾った言葉や人の写真をガラスに封じ込めた作品などイメージの選び方が非常に面白いのは作家の天性のセンスなのだろう。今回のアートフロントギャラリーでの展覧会のために磯野は大きな駅の周りを歩き、無数の看板を撮影している。駅ごとに分類していくつかのガラスの中に写真を閉じ込めたオブジェからは何が見て取れるのだろうか。渋谷駅、上野駅などそれぞれの駅によって集まる写真はどう異なるのであろう。あるいはどこへ行ってもチェーン店だらけになっていることを考えれば、渋谷も上野も大差はないのだろうか。一方、傘をテーマに制作した新作群でも作家は街に出て取材を重ねている。開かれた傘を上から撮影した写真が主体となっているが、開かれた傘から人の気配を充分感じさせる優れた作品である。集まったものを作品として再構築し、単なる資料展示のインスタレーションではなく確固たる作品として空間を仕上げる、そうしたこの作家の魅力が伝わる展覧会になると思う。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎