展覧会Exhibition

イザベル&アルフレド・アキリザン展 - Habitations: Another Country
イザベル&アルフレド・アキリザン
Two Tower
2014, mixed media

  • イザベル&アルフレド・アキリザン展 - Habitations: Another Country

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イザベル&アルフレド・アキリザン展 - Habitations: Another Country

2014.11.28 (金) - 12.23 (火・祝)

アートフロントギャラリーでは11月28日(金)より、イザベル&アルフレド・アキリザンの個展を開催します。日本のギャラリーでの初個展となります。是非お越しください。

イザベル&アルフレド・アキリザンの作品、プロフィールについてはこちらをご覧ください
日程 2014.11.28 (金) - 12.23 (火・祝)
営業時間 11:00 - 19:00 (月休)
会場 アートフロントギャラリー(代官山)
レセプション 11月28日(金) 18:00~20:00
アキリザン夫妻はフィリピンに生まれ長らくチームとして活動。1999年の第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレから、ベネチア(2003)、光州(2004)、シンガポール(2008)リバプール(2010)、シャルジャ、モスクワ(共に2013)など様々な国際展などで活躍する作家。日本でも福岡アジア・トリエンナーレ(1999)、越後妻有アート・トリエンナーレ(2006)、市原アート×ミックス(2014)などに参加しています。

日本が近代化の中で盛んに欧米の文化を取り入れ、市民の生活スタイルが急激に変わってきたように、フィリピンもかつてのスペインとアメリカの植民地時代を経て、様々な文化が複雑に交錯して成り立っている。アキリザン夫妻はこうした文化背景をアートの切り口として、身の回りの様々な物を材料として集め、そしてそれを組み合わせることを基本に作品を作ってきた。フィリピンでは日本などから要らなくなった車を分解して輸入し、車の修理にもそうした部品を使う結果、一台の車が様々な車メーカーの部品で成り立っていることがあるそうだが、2003年に彼らがベネチアに出品した作品は一見米軍の使っているようなジープに見えつつ、様々な材料の寄せ集めで出来ていた。2013年のモスクワではロシアの橇とともにスーツケースや家具などを集めて組合せ、並んで進む橇がいつの間にか巨大な戦車の行進になるインスタレーションを展示していた。日常的なものを集積することで現代のハイブリッドな文化の断層を見せるとともに、同時に政治や経済を痛烈に批判する側面も見え隠れする。
一方で製作の拠点をフィリピンからオーストラリアに移した2006年以降は自身のアイデンティティや「家」が重要なテーマになってきている。その代表作のひとつ「アナザー・カントリー」というシリーズではオーストラリアや金沢21世紀美術館、市原アート×ミックスなどそれぞれの開催場所で地域の住民と共に無数の段ボールの箱の家を作るプロジェクト。フィリピンを離れることで自分たちも本来の拠り所であった「家」を失ったこと、引っ越しの際にアーティストの子供たちに段ボールを渡して必要なものだけを選んでオーストラリアに送った話などが金沢21世紀美術館のインタビューでも語られているが、荷物、移動、新しい住み家、コミュニティなどをテーマにしながら、世界中で加速化する人々の動きと都市の形成について考えさせる作品である。
今回のアートフロントギャラリーの展覧会では展示室いっぱいに「アナザー・カントリー」を制作するとともに、家をテーマとした小作品群を準備している。アジアの現代美術を代表する作家となったこの作家にはもはや「フィリピンの作家」という背景もふさわしくないのかもしれない。彼らの作品からは地方から都市へ、アジアから欧米へ、経済を背景に地域や国境を越えて移動を続けることを宿命づけられた私達現代人にとっての「家」が見えてくるだろう。

アートフロントギャラリー 近藤俊郎

インタヴュー: 作品について語る

今回は作家に作品について語ってもらいました。

ギャラリースタッフ(以下G) :
どこにでもあるありふれた素材の段ボールを使って今回の作品を制作されている理由はなんですか?

イザベル&アルフレド・アキリザン(以下I&A) :
みなさん引っ越しの時にいろいろ大事なものを段ボールの中に詰め込みますよね。
詰め込まれた段ボールの一つ一つに実はそのひとの性格や暮らしが表れていると思うんですよ。つまり段ボールは、その人の家自体を象徴するんじゃないかと思っています。
家が集まると村になり、村が集まると都市になっていきます。

G: リバプールビエンナーレの時にも(上記写真)、船をモチーフにした作品を制作されていましたね。あの時は床面を水面ととらえて桟橋や島があり、段ボールの家が上に向かって伸びているような作品でした。
今回は実物のボートを用いて大きな家の塊が船の下に伸びていますが、船をモチーフとする理由はなんですか?

I&A: この作品はたくさんの家が集合体となって移動していく様子を表しています。今時、船で移動する人は少ないですが、船は人の移動の歴史の中でも歴史あるものです。

それから、人の人生ってよく航海に例えられたりしますよね。長い時間をかけてゆっくりどこかにたどり着くというのは、民族やコミュニティーの移動にも通じると思うんです。



G : なるほど船は移動の象徴なんですね。そう考えると、段ボールも移動を表している気がしてきました。さっきの引っ越しの話が急につながってきましたよ。
では、ではなぜその船が逆さまになっているんですか?

I&A : この作品を少し離れてみて見てください。ディティールを追うのではなく全体を見てみるとボートが屋根のように見えませんか?
小さな家が集まって出来上がった大きな家それがコミュニティーではないでしょうか。

G: そうですね。ということは、この船は、このコミュニティーのアイデンティティのようにも感じますね。このボートはコミュニティーの屋根と言われましたが、傘のようにも見えます。
同じイデオロギーの傘下と考えれば、目的を持った集団や国家のようにも見えますね。
きっとこのボートはコミュニティー自体を他から守る傘であり、バラバラの家々をひとつのものとしてまとめる傘でもあるんでしょうね。

G: 最後に、これらコミュニティーが移動していく先には何があるんでしょうか?このインスタレーションをよく見るとロープに引かれて同じ場所に向かっているようですが。。

I&A: よく気づかれましたね。この作品では世界中に散らばったコミュニティーがやがてひとつの場所に集まって行くさまが表現されています。私が2006年に参加した越後妻有もそうでしたが、地方に行くと人口が大都市などに集中していく結果、過疎化が進んでいきます。これはグローバルな社会的な問題ですが、ここではネガティブな側面だけではなくこの作品は様々な場所に散らばった一人一人をここに迎え入れる作品でもあると思っています。

アルフレド&イザベル・アキリザン(Alfredo & Isabel Aquilizan) というアーティストについて

この度のアートフロントギャラリーおよび近年の日本での展示を見ていると
アキリザンという作家はあたかも段ボールの作家というみえかたをしてしまうかもしれない。

しかし、実は彼らは、研ぎ澄まされた目で社会を見る事のできる、極めて優れたアーティストである。彼らはよく、社会の中でいらなくなったものを用いて違った価値として創造している。
上記の写真はシンガポールで発表された作品だが、巨大な天使の羽根を模した作品だ。
実はこれらは、岸辺に流れ着いたりそのあたりに打ち捨てられたビーチサンダルの集まりなのだ。ビーチサンダルは彼らにとってただのゴミではなく、今ではどこに行ったかもわからないその所有者の影を忍ばせる現実に残された物体だ。作家はそれらを集め消えてしまった人々への思いをはせながら制作している。
それによって普段の生活の中ではごみでしかなくなってしまった、遺物をコンセプトでつなぎ合わせ美しい造型として昇華している。

また、アートフロントの展示では、消えていくものの一方で、増え続けているものを物体の集積と増殖によって表現している。展示室内に立つ二つのタワーは彼らの故郷フィリピンのスクワッターと呼ばれる人々の住処の有り様が根底にある。
まるで、何もないところに集まり、必要なものを取り込みながら増殖するコミュニティーを見るようだ。段ボールは彼らにとって移動の象徴であるとともに、移動の際に自らの生活を詰め込む個人の生活のメタファーでもある。人が様々な処から集まり荷物が積み重なるように、家が積み重なりそこに流れ着いタ人々に合うかたちとしてコミュニティーを形成していく、それはあるコミュニティーが成長していくようにも見えるが、他に行き場がなく上へ上へと追いやられているようにも見えるのである。

造形力とコンセプトがマッチした素晴らしい展示となっています。
是非お越し下さい。

アートフロントギャラリースタッフ

2015年7月17日から始まる東京都現代美術館での企画展にアキリザンが参加します。
子供とともに考える私たちの場所とは?その境界とは?「私」と「社会」の接点を探る展覧会です。
アキリザンは事前ワークショップにより地元小学生たちと作った段ボールの家をつかって新作インスタレーションを展開。寄り添い密集する小さな段ボールの家のタワーが林立する光景は子供たちに何を語りかけるでしょう。
展覧会詳細についてはこちら.

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