展覧会Exhibition

浅見 貴子  個展   光合成
「錦木 1401」
2014年 72.7 x 91 cm 白麻紙に墨、顔料、樹脂膠

  • 浅見 貴子  個展   光合成

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浅見 貴子 個展  光合成

2015.3.6(金)- 3.29 (日)

この度アートフロントギャラリーでは、浅見貴子個展を開催致します。
日程 2015.3.6(金)- 3.29 (日)
営業時間 11:00 - 19:00 (月休)
会場 アートフロントギャラリー(代官山)
レセプション 2015年 3月6日(金)18:00-20:00
浅見貴子の過去の作品、プロフィールについてはこちらをご覧ください
作家在廊日 3/14土(4pm?)、21土(午後)、29日(午後)
 浅見貴子の表現は一貫している。木々を観察すること。ドローイングを描きため、黒々と滲んだ点や繊細に淡く細く伸びる線で構成された木々を画面の上に再構成してゆく。枝や節が関節の様に折れ、葉をなし、あちらへ伸びたかと思うと立ち止まり、陽を求めて別な方向へ向かって広がってゆく様を観察する。木は私達の視点より高く伸びてゆく。その下に入り込むと当然のことながら、空という光の塊に対してきわめて自然に光のあたり方によって同じ木々も別の姿を現すであろう。あるいは夜はどうであろうか。月夜に黒々と塊のようにシルエットとして見えてくる木々。浅見貴子の作品を見ていると何故か夜の木々を思うことが多いのは単にうねるような墨の色からだけではないであろう。今でもはっきり記憶しているが、以前アートフロントで浅見の個展を準備していたころ、2011年3月11日に未曾有の震災があり、東京もまだ日々揺れていた。15日から浅見の展覧会を私達も予定していたが各地で交通が復旧せず、町も普段より照明が絞られ暗く、そうした中で展覧会を延期するかどうか検討したが、開催を決意した。仕上がり間近の作品を暗がりの中で仕上げていた当時の作家の姿が浮かぶ。
 今回の展覧会ではこの作家のその後の歩みを一堂に展示する。その中に夜の木々を描いたものがある。夜の樹木に注目するようになったのは、作家によれば、震災の停電の時に月明りが明るく、昼間の日光の下とは全く違う表情だと気づいたからだという。「強い日差しの下でキラキラしている樹も良いのですが、夜の樹木は、ザワザワと怖い雰囲気だったり、静かに呼吸している感じだったり。意識して観察すると、月明かりや外灯に照らされて、意外と多様な表情で昼間より固有色を感じるように思いました。」
 果たしてこうして得られた新たな視点は浅見貴子の作品にどのような変化をもたらすのであろうか。作品は紙の裏から墨を表に滲ませてゆく手法で描かれる。つまり、全てが反転された裏から描かれた世界であって、表からであれば最後に木々に一番印象的な色を加えることも出来るのであろうが、裏からであれば一番手前に見える物こそ先に描かなければならない。近いものから遠いものへ、通常とは逆の順序で描かれている。表への滲みで表現されるため、やり直しがきかないという手法である。そうした緊張感のある画面に今回の展覧会では作家が言うようなざわつきと言ってよいのだろうか、私達が本来木と言えばそこに静止している対象として思い描かれるのに対し、より生命を持ち、光の中で風に揺れ、刻々と見え方の変わってゆく姿、そうしたものが塊となってより力のある物体としてこの作家の画面に立ち現れ、画面を支配してゆくように感じられる。浅見貴子の描く木が作家によって描かれる対象から、むしろ作家の視点をも切り替える主体として立ち現れる。そうした現場にいま私達は立ち会っているのではないだろうか。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎

作品解説:山椒の木、宵

浅見さんの作品を遠くから眺めると、まずその構図の力強さに圧倒されます。松、竹、山椒、錦木といずれも作家の庭に植生している樹木で、朝に晩に異なった表情を見せる木々たちを作家は慈しみつつ冷徹な眼でデッサンしていきます。納得がいくまで何枚も。
そうであればこそ、細部を細かく見たときに新たな発見があるのでしょう。
浅見さんの作品は、一見すると力強く即興的な絵に見られがちです。しかし実際には、主に和紙の裏から墨を置き、非常にゆっくりと筆を走らせます。その滲みが画面の表側から見えてくるところに特徴があります。作家は偶然みつけたというこの方法を何年間もかけて磨きあげ、描いているものと見えるはずのものの間に豊かな想像力を働かせながら多くのバリエーションを生み出してきました。

例えば羊の毛でできた筆にたっぷりと墨を含ませ、黒点をじっくり留めた後、少しひきずるようにして次の点へ。ゆっくりじっくりと時間をかけて裏から描かれた点は、表から見ると非常に力強くまた、その引きしろのにじみが風に揺れ木々がざわめく様子、またはその生命力を表現しています。

今回の展覧会においてその作品群を見ていくとこれまでとは異なり、墨以外の色が使われていることに気が付きます。上辺にうっすらとみえる青い帯は、藍と胡粉を混ぜた絵具で裏から彩色され白と黒との間にさらに空間を感じさせる効果を生んでいます。宵の澄んだ空気をわずかな色とそのにじみで表現しています。

藍がひそやかに使われている部分は、墨と墨の間にさらなる奥行き感を生み出しています。画面の裏側から描くため、ある程度計算されたものでありながら、紙の滲みこみ具合いが生み出す効果によって作品の表情が異なってくるということをリアルに伝えてくれます。どこかユーモラスな動きもあり、古今東西描かれてきたTree of Lifeを想起させます。樹幹の肥痩と相まって視線を奥へと引き込んでいくこの作品は、見るものの眼を惹きつけずにはおかない秀逸な一点ではないでしょうか。

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