展覧会Exhibition

阪本トクロウ: gap
"地図" 530 × 530 mm / アクリル、高知麻紙 / 2020

  • 阪本トクロウ: gap

サムネイルをクリックすると、拡大表示します。

阪本トクロウ: gap

2021年2月5日(金) – 3月7日(日)

この度アートフロントギャラリーでは、阪本トクロウの個展を開催致します。
日程 2021年2月5日(金) – 3月7日(日)
営業時間 水~金 12:00-19:00 / 土日 11:00 - 17:00 ※2月11日(木・祝)は12:00-19:00
関連情報 個展「デイリーライブス」@武蔵野市立吉祥寺美術館 2021年1月9日(土) - 2月28日(日)
https://www.artfrontgallery.com/whatsnew/2020/post_271.html
阪本トクロウとその時代
小金沢 智 (キュレーター、東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)

 阪本トクロウが日本画を専攻した東京藝術大学の前身・東京美術学校では、明治という新時代、アーネスト・フェノロサと岡倉天心によって西洋と対抗できる日本国発の美術としての「日本画」創造が目指されていたわけだが、その当初の目的の「声高さ」と比べれば、阪本の描くモチーフはささやかだ。日本の近代化と不可分のものとして生まれた「美術」そして「日本画」は、かつて大義名分を欲しいままにしていたが、おそらくそれはアジア・太平洋戦争期を頂点として敗戦後ゆるやかに失われていき、いまや当初の働きはそもそも求められていない。本展のタイトル「gap」は、「間隙」や「隙間」を観察して制作している阪本自身の態度をあらわすというが、そこには日本画をめぐる時代間の「gap」=「裂け目」も指摘ができるだろう。

 かつての大義名分は失われ、「自己表現」としての美術が主張される昨今、阪本もまた学生時代はそれを求めて苦心したようだ。大学入学当初はバルテュスに傾倒し、同大卒業後入学した早見芸術学園造形研究所日本画塾のころは、徳岡神泉やマーク・ロスコを好んでいたという。画面も、大学二年時からしばらくは、岩絵具を盛り上げゴツゴツとしたマチエールを作っていたと聞く。

 けれども、表現するほどの自己などない。その諦めは、大学に身を置くなかで次第に形成された「日本画」「現代美術」「絵画」を一旦捨て、対象となるモチーフを色も形も変えずそのまま描く、すなわち、自身の内側から湧き出たものを表現するのではなく、外側の世界を発見して制作するというスタイルへと阪本を至らせる。エポックとなった2000年の作品《daily life》は日本画のアイデンティティとも言われる岩絵具を素材としているが、当時の村上隆や千住博の仕事からアクリル絵具を使用することへの抵抗感が減り、以降、自身の視点から風景を観察・再構成し、アクリル絵具を主としてフラットな画面で描写する阪本の表現が確立されていく。『美術手帖』2000年9月号では、「風景新次元 スーパーフラット・ランドスケープ」と題した特集が組まれ、さながら21世紀の新たな風景表現が探し求められていた。

 なんでもないように見えるかもしれない阪本の描く風景の背景に、この日本の美術がたどってきた歴史と、現在の状況・環境に向き合い、描こうとする、作家の思考の反映が見つけられる。

"ハイウェイ" 1303 × 1303 mm / 高知麻紙、アクリル / 2020

トップに戻る