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浅見貴子展@中村屋サロン美術館、2021
《花蘇芳 1902》2019 墨・顔料・金泥・樹脂膠、雲肌麻紙

  • 浅見貴子展@中村屋サロン美術館、2021

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浅見貴子展@中村屋サロン美術館、2021

作家情報

先日、6日間だけ公開された新宿・中村屋サロン美術館での展覧会《浅見貴子展―変容のプロセス》。
大変残念ながら新型コロナウィルスの影響により、短い会期となってしまいましたが、この度2021年に延期されることが決定しました。

ここでは、来年の再展示に先駆けて今回展示された作品群を紹介いたします。ご自宅にて展覧会《浅見貴子展―変容のプロセス》をお楽しみください。


本展は、年を経て季節ごとに変容する梅の木の作品を中心に、窓からの眺めを描いた作品から網戸越しの風景を描いたgray net 等で構成された展示です。樹木の瑞々しい生命の息吹が力強い発言となっています。

展示風景「浅見 貴子 - 彼方 / 此方」アートフロントギャラリー、2017


2017年アートフロントギャラリーでの個展以来、浅見は日経日本画大賞を受賞し注目を集め、2019年には瀬戸内国際芸術祭の会期中にせとうち美術館での二人展や館林美術館でのグループ展など、作品発表の機会が多くありました。紙の裏から描く独特の技法、身近な樹木を大小の点と線で表現する作風がグローバルな人気を博していますが、一方で新たな作風の模索も始まっています。

展示風景「浅見 貴子 - 彼方 / 此方」アートフロントギャラリー、2017


今回中村屋サロン美術館での中心となっている樹木は梅の木。松や竹、桜、花蘇芳と共に作家が好んで描いている木です。何度も繰り返しスケッチをして木の構造を把握したら画面に描き出すといいます。和紙の裏側に樹木の骨格を描き写した後に、 樹木の葉などを墨の点々によって重ねていきます。一度おかれた墨の痕跡は消せず、時折おもての様子を確認しながら点々を重ねていきます。作家によれば、紙の滲み方は、同じ麻紙でも雲肌麻紙・白麻紙といった種類や、紙の状態によって染み込みに大きな違いがあるそうで、できあがりに僅かな差異が生まれるとのこと、いわば紙との対話を繰り返しながら作品ができあがっていきます。

《梅の木 1907》2019 墨、樹脂膠、白麻紙 2030 x 2650mm

《梅の木 2001》2020 墨、樹脂膠、白麻紙 2650 x 2030mm


季節を違えて描いた新作《梅の木 2001》は、中央に梅の木をすえ、点と線に還元された木の姿が浮かび上がってくるのが感じられます。近寄ってみると太い筆を転がして穿たれた点々が、確かな質感をもって、迫ってきます。葉が生い茂っている頃の《梅の木 1907》、枝や幹の構造までも描いた《梅の木 2001》が一堂に会されているのを見ることができます。

《梅枝(うめがえ)》2019 墨、顔料、膠、樹脂膠、雲肌麻紙 700 x 700mm


梅枝は2019年11月3日付け日経新聞の文化面を飾ったこともある優品で、墨以外の色彩を加えることで変化をつけています。違った時間帯の梅のありようを示すかのような淡い色彩ではないでしょうか。

展示風景「浅見 貴子 - 彼方 / 此方」アートフロントギャラリー、2017


このような存在感のある樹木シリーズに加えて眼をひくのがgray net の新作群です。そもそも2017年アートフロントギャラリーでの個展、《浅見貴子 - 彼方、此方》で初めて世に出したネットシリーズ。

《gray net 200102》2020 墨、顔料、樹脂膠、雲肌麻紙 910 x 1165mm


これは格子状の網目で画面を覆うという、今までにない作品でした。画面全体をグレーの「網戸」で埋め、さらに樹木・背景の地が描かれます。

《gray net 191201》2019 墨、顔料、樹脂膠、雲肌麻紙 910 x 1165 mm


今回は、gray net や樹木作品へ展開した1990年代に初めて点々だけで描いた作品も展示されています。
また、網戸を越えて点々が浮かぶ《gray net 191201》、葉の落ちた枝のかたちを描く《gray net 200101》から《gray net 200201》まで多少の諧調のバリエーションを持ちながら作品を描き切り、展示されている様は連作性を感じさせます。
格子状の層に、枝幹が加わる新たな構図は、絵画として新たな境地を開いているようです。
今後、このシリーズはどのように展開していくのでしょうか。ぜひご期待ください。

《浅見貴子展―変容のプロセス》展示風景、中村屋サロン美術館、2020 / 撮影:長塚秀人

開館時間など展覧会詳細はこちらをご覧ください。(中村屋サロン美術館HP)

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