大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015 リポート No.5 - レアンドロ・エルリッヒ
作家名: レアンドロ・エルリッヒ Leandro Erlich
作品タイトル:トンネル Tunnel
作品番号: T224
場所: 越後妻有里山現代美術館(十日町)
制作年: 2012

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大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015 リポート No.5 - レアンドロ・エルリッヒ

今年の大地の芸術祭もいよいよ終盤に入りました。
まだこれから、という方も多いはず。
300を超える作品の中からギャラリースタッフの厳選したお薦め作品を新旧とりまぜて
アートの視点から解説します。完成に至るまでのアーティストや製作スタッフの活動についてもご紹介します。

レアンドロ・エルリッヒは1973年生まれアルゼンチン出身のアーティスト。金沢21世紀美術館にあるプールの作品で有名な作家であるが、日本の中で最も広く知られている外国人の現代美術アーティストと言っても過言ではないだろう。

その作家の作品が越後妻有にある事はご存知だろうか?
2006年に初めて参加し、大きな鏡を用いた、妻有の家という仮設の作品を発表。その後も2012年から越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭のメインステージの一つ、越後妻有里山美術館[キナーレ]に不思議な倉庫を展示している。

十日町のメインステージとして、原広司によって設計された交流館キナーレは、前回の芸術祭、2012年に現代美術館としてリニューアルオープンしている。
ディレクターの北川フラム氏は大地の芸術祭が行われる里山全体をフィールドミュージアムと定義し、この施設をそこへの玄関口と位置づけ、植生、気候、食、文化など越後妻有の様々な要素を盛り込み、縮図として魅せようとしている。その基幹施設の2F展示室に入ってすぐのところにレアンドロの倉庫は鎮座している。

(Photo Osamu Nakamura)

展示室に入るとまず目に飛び込んでくるのは展示室内いっぱいに配置された広葉樹の林である。そしてその中にこの地域でよく見られる天井部が半円状の形をしたかまぼこ型の倉庫がある。

この地域は非常に雪深く冬季には4mを超える雪が降り積もる。この世界でも有数の豪雪地帯ならではの耐雪を考えた形である。入り口には、ドラム缶などが置いてあり、この作品は美術館の中にあるのだが、まるで道端にある倉庫のようにディテールにも凝っているのが非常に彼らしい。中に入るとなんとそこはトンネルになっている。こちらもまた、精巧に作られており、地面や壁の少し湿った感じまでしてくるようだ。

トンネルもまた、この地域に欠かせない物の一つである。というのも、越後妻有は、6つの地域と200を超える集落がありそれぞれが山間部まで入り込み点々としている。1970年代の高度成長期以降これらの地域をつなぐ間には必ずと言っていいほどトンネルがあり地域の重要な交通手段になっている。作家はこの越後妻有に足を初めて踏み入れた時から魅了されてきたトンネルとかまぼこ倉庫をこの地域の重要な特徴と捉えその二つを組み合わせた作品へと昇華している。

最後にこの作品をよりよく鑑賞するためのポイントをご紹介したい。レアンドロの作品は、鏡などの現象をうまく用い、我々の視覚に対しトリックを仕掛けてくる。しかしそれが、ただのトリックアートと一線を画すのは、我々がよく知る当たり前のことを利用し、既知の物事に対して揺さぶりをかけてくるところである。それ故そのトリックは単純であり、わざと種明かしをしている。
実はこのトンネル中に入るとある視覚的作用によって人が突然巨大化して見えるのだ。しかし、この作品を訪れる人の約半数はこの作品の正しい鑑賞方法を知らずに、只々トンネル内を通り過ぎてしまっているように見受けられる。

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