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ムニール・ファトゥミ 新作紹介 vol.1:The Machinery

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ムニール・ファトゥミ 新作紹介 vol.1:The Machinery

大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ

2017年 11月16日(木) - 12月24日(日)

現在開催中のムニール・ファトゥミ個展「Mounir Fatmi Peripheral Vision」で発表された新作についてご紹介します。

ムニール・ファトゥミは今、最も注目されているアーティストのひとりで、今年のベニス・ビエンナーレにも参加しています。モロッコ生まれでアラブ文化のアイデンティティを現代美術の文脈の中にとりいれるとともに、より普遍的な問題として政治と密接に関わるものとしての言語や教育、また大量消費といった社会問題を扱っています。

日程 2017年 11月16日(木) - 12月24日(日)
営業時間 11:00-19:00(月曜休廊)
歯車のような鋸の刃が天井から吊り下げられ、壁や床に影を落としている作品は、The Machinery というタイトルで一つ一つの円形にアラビア文字が彫り抜かれています。触れば手の切れそうな危うさをはらみながら、ラビリンス迷宮のような文字に書かれているコーランの美しさに目を奪われます。コーランはイスラムの神を賛美する内容のほか、或る刃には「知識ある者も知識ない者も平等である」と書かれ、「知識」を作品のテーマの一つとするファトゥミの姿勢が表れています。

今でこそヨーロッパだけでなく世界各地で作品を発表するムニール・ファトゥミですが、モロッコ出身であり移民としての辛酸を舐めた日々もあったといいます。パリとリールに在住しても未だフランスにおける選挙権はなく、移民労働者ともいえる自分の立場を逆手にとって、政治情勢や宗教や社会問題にも踏み込み作品を通してアートと日常の境界をなくすような試みを続けています。

このThe Machinery も、チャップリンのモダンタイムスを想起させるように近代化に向かって前進を始めたアラブ諸国の象徴とも解釈できるとファトゥミ自身がいっています。美や知識=コーランに引き寄せられる先には危険が待ち受けているかもしれないというメッセージも読み取れるかもしれません。物事に常に表と裏があるように、作品も両義的に読み取れるように制作しています。そして、作家の言葉を借りるならば、「アートには世界を変える力はないが、人々が立ち止まって問題について考える時間を作り出すパワーはあると思う。」

「Mounir Fatmi Peripheral Vision」は12月24日まで。会期中にかけてほかの新作解説も随時アップしていきますので、ぜひご高覧ください。

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