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竹中美幸 in 新宿クリエイターズフェスタ

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竹中美幸 in 新宿クリエイターズフェスタ

ギャラリー

竹中美幸が8月21日(水)より、新宿クリエイターズフェスタのアーティスト展にて新作インスタレーションを発表します。
竹中の新しい試みとなる本展は、自然光を閉ざした215平米(天井高5m)の空間の中、移動する光源が感光させたポジフィルム等、透明な物質を照らし、透過、反映を繰り返しながら色の影を映し出し、空間を構成します。新宿という都市の中で掬い上げた音と光から、新たな世界を創りあげます。

(作家については こちら

■竹中美幸 都市のさざめき
in collaboration with Taira Ichikawa(市川平/特殊照明家)

会期|2019.8/21(wed)-8/25(sun)11:00-19:00 (最終日−17:00)

会場|新宿パークタワー1F ギャラリー1(163-0001 東京都新宿区3-7-1 新宿パークタワー1F)
入場無料

主催|新宿クリエイターズフェスタ実行委員会 後援 東京都
協力|アートフロントギャラリー

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世界が奏でる光と音楽
平田剛志 (美術批評)

 新宿は光と音の都市だ。新宿駅の1日の平均乗降者数は約353万人(2017年)を記録し、日々多くの人が行き交う。この都市・新宿の「さざめき」を光と音で表したのが竹中美幸の「都市のさざめき」だ。

”溢れる時間”2011 / 各130x100cm / 樹脂、水彩紙、顔料、蜜蝋、布 他


 竹中はこれまで光と影を空間的に探究してきた。初期には水彩やパステルで種子を描き、後に透明樹脂を水滴のように用いた平面・立体作品を手がけた。2013年からは映画の35mmフィルムに色彩や家具、言葉などを感光させ、展示空間の光と影の揺らぎとともに見せるインスタレーションへと展開してきた。そして今展で竹中は空間そのものを支持体に、光と影が透過、反射する空間を作り出した。

新作イメージ


 会場は、新宿パークタワー1Fの自然光を閉ざした215平米(天井高5m)のギャラリー1だ。ここで竹中は、2017年のグループ展で展示経験がある特殊照明家・市川平とのコラボレーションによって、都市の光と影、音のインスタレーションを展開する。

 会場は、天井から吊り下げられた薄布がスクリーンや円柱、六角形の空間をつくる。その周囲には譜面台が点在し、新宿の10数箇所で収集した音を楽譜にして焼き付けたフィルムが張り巡らされる。入れ子構造になったこの空間に、市川による回転や上下する光を当て、新宿の雑踏に透過、反射する光と音のさざめく空間を構成するという。

新作イメージ


 本展で竹中の新しい試みはフィルムに感光された「楽譜」だ。フィルムに刻まれた五線譜の作品と言えば、35mmカメラに五線譜が印字されたフィルターを取り付け、月や鴨の飛翔を撮影した野村仁の《’moon’ score》(1975)、《‘Grus’ score》(2004)を想起する。
 だが、野村の写真が自然現象の月や野性動物を通じて、人知を超えた自然の時間を視覚化するのに対し、竹中のフィルムは日常生活の営みから生まれる都市・新宿の「音」の採譜であり楽譜化だ。

新作イメージ


 光と音はどちらも現れては消える儚い現象だ。竹中は都市に現れては消えていく人や光、音から物語や気配漂うフィルム・インスタレーションへと昇華した。この「物語」は、洞窟画から江戸時代の回り灯籠、スライドショーの起源であるマジック・ランタン、映画フィルムが生み出してきた幾多の光と影のイメージを映し出す現代の写し絵(ファンタスマゴリア)だ。

 今展のモチーフとなった新宿もまた変わり続ける都市だ。この街を行き交う人々と都市が作り出す光と音は竹中によってどのような二重奏(デュオ)を奏でるのだろうか。その「世界」を歩くのを楽しみにしている。

<インタヴュー 竹中美幸:新作について 新宿クリエイターズフェスタをとおして>

今回は新宿クリエイターズフェスタで大きな変貌を遂げた竹中美幸さんの作品について本人から語ってもらいました。

AFGスタッフ(以下AFG)
これまで竹中美幸さんといえば、アートフロントでの個展で見てきた限りでは、近年の個展で見せた35㎜フィルムに光を直接焼き付けた失われたものの記憶を見せる作品や、水彩のドローイング、アクリル樹脂を使った作品というイメージでしたが、今回の展示では全く異なった展示に見えました。
光を使って空間を演出する、まるである種の舞台のような作品への飛躍はどのようにして生まれたのでしょうか?何かこれまでとは違う経緯があったのでしょうか?
(AFG2018個展展示風景)

竹中
今回、新宿クリエイターズフェスタという新宿区主催のイベント内で、個展を開催する機会とパークタワーギャラリー1という場所を与えられました。このギャラリーは215平米、天井高も5mを超え、私がこれまで個展をした会場の中では一番広い会場になります。下見前、ここで何ができるだろうと図面をみつめ、まだ見ぬ空間の広さに不安でいっぱいでした。下見の際には35mmフィルムと懐中電灯を持ち込んで消灯してもらい、空間に広がるフィルムの影をみてインスタレーションでこの空間を使いたいと思いました。

AFG
なんと、下見の際にすでに空間を意識されていたんですね。確かに急にこんな大きな空間をあてがわれたら通常の平面作家さんは唖然ですよね。平面作品飾るにしても壁画でもやらない限り、この天高の空間にどう対処するか迷いますね。場所を変えてもらうとか考えちゃいますよね。

竹中
実際、様々な事情で他の場所案があがったりもしたのですが、不安がありつつもここでやりたいという気持ちがどんどん募りこの場所で展示がしたいと自ら志願しました。私が今まで展示をした場所は割と自然光が入る場所が多かったのですが、この場所はほぼ自然光が遮られている場所でした。決定後はすぐに、以前グループ展でご一緒したことのある特殊照明家の市川平さんに光をお願いしました。

AFG
よく調べたら、すでに市川さんとのコラボは今回が初めてではなかったんですね。それで、光を使うとか
空間的なイメージがあったんですね。

今回のテーマについて
AFGスタッフ 
今回の作品は、静かな会場内で光が変遷していく中で様々な表情が見て取れます。強い光、弱い光、現れては消えていく様子に一種独特の間のようなものもみえる気がします。そして、ディティールをよく見ると、譜面台のインスタレーションに紛れて、ビルのような角柱のアクリルがあったり、薄い布に投射されたフィルムの陰には音符のようなものもみえていますね。一部は過去の懐かしい作品のようでしたが。。
作品のテーマは何だったのでしょうか?

竹中
学生の頃、西新宿に割と近い場所に1年住んでいました。その頃から昼も夜も新宿は音と光にあふれた場所だと感じていて、この音と光を採集して作品にできないかと街を歩き始めました。正式に場所が決まったのが今年の6月頭でしたので、あまり時間はありませんでした。気になる音をおさめ、その場にある気になる光も撮影していきました。例えば、駅の改札。ずらりと並んだ改札機から人が通り抜けるさいの“ピッ”となる音が、郊外や田舎とは違い絶えず鳴り響き、それは音楽のようにきこえてきて思わず採取しました。他にもネオン街や、喫煙所、公園など十数箇所で光と音を捕えてゆきました。それらの収集した都市の奏でる音を、音ではなく可視化したいとPC上で譜面に変換していき、それを暗室でフィルムに焼き付けていきました。35mmのフィルム(主に映画上映に用いられていたポジフィルム)は2013年から自分の作品に取り入れています。その際は、どうにかここにある光を捕えたいと光そのものを色として焼き付けていきました。その後デジタルの波においやられ消えつつあるフィルムそれ自体にも関心がうつり、記録する媒体として使用し、また、初期の作品では本来の映画のフィルムの役割から奪ってしまっていたフィルムに与える光や動きを今回は作品の中でもどして複雑にしていきました。新宿を歩き、また、制作しながら展覧会タイトルは”雑音”かな、と思っていたのですが、静かな楽譜と対面し、“さざめき”ということばが浮かび、“都市のさざめき”というタイトルにしました。展覧会会場では作品から音を発することはなかったのですが、ときおり向かいにあるシティホテルのカフェから人々の話し声が、ことばや意味を失った音として展示会場にはいりこんできていました。

AFG
なるほど、これは新宿のノイズを空間的に表現したものだったんですね。
音ではなくあくまで視覚的な情報をもって新宿の何気ない日常のさざめきを表していたとは。
新宿での展示という場所に合わせて非常にサイトスペシフィックなテーマの設定だったんですね。
インスタレーションを鑑賞しているときに、会場内が静かなので、周囲の人の話し声や、環境の音が聞こえてくるというお話は、私に即座に、ジョン・ケージの名作「3分33秒」を思い出させました。
この作品も、作品自体を通して、日常では気付きえないささやかなものたちを浮き立たせて見せてくれるんですね。


3.苦労した点
AFG
今回、これまでとは全く異なるアプローチで作品を作られたようですが、この大きな変化にはいろいろ苦労があったのではないでしょうか?具体的にどの世なことが困難と感じましたか?

竹中
苦労した点は何と言っても設営まで作品の完成がみられないということでした。完成形はみられないとしてもなんとか展示空間の広さに身体を慣らしておきたいと、同じような広さと天井の高さのある倉庫を借りて、印をつけ、空間を歩きながら想像して設営にのぞみました。あとは作品の部分ごとに自分のスタジオで実験や制作を重ねてゆきました。
不安要素は普段よりおおかったのですが、今まで平面のなかで展開させようとすると物理的な壁(アクリル板の重さやたわみなど)にぶつかっていたところが、空間に展開させることでそれらの問題点をかわしつつ大きな作品に昇華させることができ、それは大きな収穫であり喜びでした。透明樹脂は、合計36メートルのシートに垂らし、高さ6メートルの空間で艶めきと影を薄い布や壁に映しだし、市川さんの上下の光の動きと共に新宿の時間の流れを色の光で表現しました。
また、普段展示空間での在廊は最小限にとどめているのですが、今回はやっと姿を現した自分の作品をくまなく見届けたいという思いで全日程作品のなかで過ごしました。光と物質と影、それらの狭間にあるものを観察していました。

4.伝えたい思いなど
AFG
このインタヴューを通して、鑑賞者に伝えたいことはありますか?

今回、5日間という短い期間にもかかわらず多くのお客さんが残暑のなか足を運び、作品のなかを歩きながらゆっくりみてくださりとても感謝しています。それぞれの都市のイメージと重ねつつみていただけていたなら嬉しいです。自分自身がみてみたい世界をつくり、それを共有できること。これは他の何にも変え難い喜びであることを再認識しました。これからも、どんなに時間や労力を費やし自ら不安を呼び込んでも、また発表出来るようつづけていけたらよいなと思っています。

5.次回への意欲
AFG
今後の活動についてこうしたいなどありましたら教えて下さい。
竹中
この展覧会で、今まで大事にしてきた透明性、透過、光、影、闇、など自らの視点は今までと大きく変わらずとも、空間に放つことで新しい発見があることがわかりました。
また、今回初めて自分が焼き付けた35mmフィルムをスキャニングしてもらい本来の姿である動画としても作品にしました。アナログとデジタルのはざまの映像、今後も展開していけそうです。
わずかな期間現れた大きなわたしの作品は、思っていたよりも多くの課題を与えて姿を隠しました。待つ光(自然光)と、裏切らない光(人口光)、それぞれの美しさ。そして今回奪ってしまった音を次は作品に戻すか…消えゆく前にフィルムのことももっと代弁したくもなり…また、平面でしかかなわないことがあることも分かり…したいことはたくさんです。

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