展覧会Exhibition

内倉 ひとみ 個展:Lumière
《Lumière》(部分) 紙、切り抜き、エンボス 栃木県立美術館(2012)

  • 内倉 ひとみ 個展:<i>Lumière</i>

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内倉 ひとみ 個展:Lumière

2022年9月2日(金)- 25日(日)

このたび、アートフロントギャラリーでは初めてとなる内倉ひとみの個展を開催いたします。
日程 2022年9月2日(金)- 25日(日)
営業時間 水~金 12:00 - 19:00 / 土日、9/23(祝)11:00 - 17:00
休廊日 月曜、火曜日
作家在廊 9月2日(金)、3日(土)、9日(金)、10日(土)、11日(日)、16日(金)、17日(土)、23日(金祝)、24日(土)、25日(日)、いづれも午後
Lumière展によせて/光・共振

青野和子(原美術館ARC 館長)

19世紀末のパリで、印象派の画家たちが伝統的絵画を横目に、原色の油絵具と素早いタッチで風景のなかの一瞬の光を捉えることに挑んでから100年余、内倉ひとみは、文化庁海外派遣研修以来拠点とするパリやベルリン、自宅のある那須で、紙・樹脂・革・レンズ・金属・鏡といったマテリアルを味方につけ、光そのもののドラマを現出させる挑戦を繰り返している。代表的シリーズLumièreでは、白い大判紙の表面にランダムに付けた大小の丸いエンボスだけでその深淵に迫る。作品の前に立つと一瞬、風にそよぐ木々の梢が映し出す木漏れ陽のシルエットや、水中にダイバーが残した呼吸の痕跡や、共振し分裂を繰り返す細胞といったイメージが溢れ出す。やがて視線は果てしなく拡がる光の粒子の内側、あるいは周辺へと誘われてゆく――

遡ること80年代の半ば、ようやく男女雇用機会均等法が施行され、バブル景気の予兆漂う日本で、インスタレーションを多用する華やかで元気のよい作風の若い女性アーティスト達を、『超少女』と括った時代があった。内倉もその一員として、段ボール紙やビニールシートといった支持体に、かつて学んだ日本画用の水干絵具による、伸びやかで強靭な色彩の線を躍らせ、明るい未来を予感させる作品を次々と発表していた。昨春、惜しまれつつも閉館の時を迎えた原美術館(品川)が、1979年の設立直後から10年間にわたって開催した「ハラ アニュアル」の第5回展のメンバーに選出され、注目を浴びたのもその頃のことだ。

やがて内倉の中に漠然とした違和感が生まれ、流行や批評に左右されない自分だけの表現の模索が始まる。知識ではなく本能が追い求め、この身体が孕み、産み落とそうとしているものは何か。ある日、作家のアトリエに、丸い形をした光の粒のシャワーが溢れるほどに降り注ぐ。窓際に置いた割れた鏡の山から「魔法のように」やってきた<いま・ここにある・美しい光>—―生涯を懸けるテーマが決まった瞬間であった。

内倉は、「人体の細胞の中には小さな光の粒が潜んでいる」という。「それが外部の美しい光と呼応することで、人の光は輝きを取り戻し活性する。体内の光を呼び起こす=生(一瞬)が輝く。物理的な感応。」と。
その話を聞きながら、ふと、弘法大師空海は、室戸岬の洞穴で過酷な修業の末、突然、明けの明星が口から飛び込んできたことで宇宙と一体となり、悟りを開いた、という伝説を思い出した。

いま、ウィズ/ポスト・コロナという時代の大転換点に立ち、急速に拡張し多様化してゆく視覚体験に翻弄されそうな日々を迎えている。だからこそ立ち止まり、ここで「見る」ことの意味を再考してみたい。全身が光に包まれる穏やかな充足感と魂の震え(共振)を実感するひとときは、その好機となるに違いない。

内倉 ひとみ
■略歴
1956 鹿児島県に生まれる
1982 多摩美術大学院芸術研究科絵画科日本画専攻修了
2003-4 文化庁海外派遣研修生としてパリに滞在
アーティストインレジデンス、フランス シテインターナショナルデザールより招聘
2011 アーティストインレジデンス、フランス アルルスルテック村より招聘
■近年の個展
2018 「リュミエール」セミヨンコンテンポラリー(ベルリン ドイツ)
2015 「光・彩 リュミエール」シュンアートギャラリー(上海 中国)
2013 「内倉ひとみ」 ガレリエ ディュツコ(パリ フランス)
2012 「リュミエール」日独センター(ベルリン ドイツ)
■近年の主なグループ展
2022 「雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション」原美術館ARC(群馬)
2021 「XxX セミヨンコンテンポラリー10周年記念 」セヨンコンテンポラリー(ベルリン ドイツ)
2020 「競演―永徳・探幽・応挙」ハラミュージアム アーク觀海庵(群馬)
2018 「フランス・ジャポン」ガレリエディュツコ(パリ フランス)
2017 「光と影」ヴァッサーギャラリー(ベルリン ドイツ)
■パブリックコレクション
霧島アートの森(鹿児島)、都城市立美術館(宮崎)、原美術館ARC(群馬)、ワコールアートセンター(東京)

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