展覧会Exhibition
ニキータ・カダン個展「ダンサーと爆発」
7月11日(木) - 8月18日(日)
アートフロントギャラリーはウクライナの作家ニキータ・カダンの個展を開催します。
日程 | 7月11日(木) - 8月18日(日) |
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営業時間 | 水~金 12:00 - 19:00 / 土日:11:00 - 17:00 |
休廊 | 月火、夏期休廊 8月12日~15日 |
アーティストトーク | 7月11日(木)18:30-19:20ごろ (日本語/ウクライナ語) ※下記リンクより申し込み受付中 https://forms.gle/sKm1TpqrcJkUvLJh9 |
ニキータ・カダン(Nikita Kadan、1982〜)は、2007年に国立美術アカデミー(キーウ)を卒業。ペインティング、インスタレーションなど様々なジャンルで制作し、PinchukArtCentre賞(2011)、カジミール・マレーヴィチ賞(2016)などを受賞。ウクライナの現代アートを牽引してきました。
カダンにとって、歴史と美術史は創作と思索の源泉です。カダンが8歳だった1991年、ソ連は崩壊しウクライナは独立するが、ソ連という歴史、記憶とどのように向き合うかは、作家にとって大きな課題であり続けています。
本展は、ウクライナ侵攻後も国内外で活動を続けるニキータ・カダンの東京での貴重な作品発表の機会となります。どうぞご期待ください。
ニキータ・カダン −−歴史と現在
鴻野わか菜 [早稲田大学教授]
あの空の異変、燦然と光る天宮図を彼が写し撮るあいだ、私は頭を光に漂うに任せながらうっとりと外套の上に横たわったまま、夢を永つづきさせようと物憂く露出を繰り返した。 ブルーノ・シュルツ 『春 』工藤幸雄訳
本展は、ウクライナ現代アートを代表するニキータ・カダンの日本初の展示となる。
カダンにとって歴史は創作の源泉であり、ソ連やウクライナの歴史、社会の様々な側面を主題とする一方で、2014年のクリミア併合、2022年のウクライナ侵攻以降は、現代の戦争が彼の創作の中心を占めることになった。
カダンの創作の特徴は、特定の事象を想定しながらも、それを他の歴史的事象と比較し、それらに共通して現れる人間の本質を見据えることで、詩的で内省的な表現を可能にしていることだ。本展と同時開催となる「大地の芸術祭」で制作した、誰も入ることができない児童公園《別の場所から来た物 》が、手に入れることのできない幸福の象徴であると同時に、ソ連の公園を想起させる宇宙船型の遊具の溶解が“ソ連的ユートピア”の終焉を表し、なおかつ現代のウクライナの公園の惨状をも示しているように、カダンの作品ではしばしば複数の時空が混在している。カダンは、彼が愛するブルーノ・シュルツの小説の主人公さながら、足を大地に置きつつ、夢想の中で歴史を旅し、その眼差しは遠い星座を捉えている。
本展で展示される《共同の部分の保護》は、銃弾の跡のある防弾服を用いたオブジェで、少数民族や先住民に対する抑圧と現在の戦争を重ねながら、身体に対する暴力の歴史を照射している。世界初公開となる《ダンサーと爆発》は、ウクライナの踊り子を描いたものでありながら2022年まで《ロシアの踊り子 》と題されていたエドガー・ドガ の絵画とカダンの幼年時代の体験、現在のウクライナの状況を重ね合わせた連作ドローイングである。カダンは、「この戦争は人類最初の戦争ではありません。そして歴史を振り返れば、戦争中に美術がいかに大きな役割をはたしてきたかは明らかです」と語り、俯瞰的視点で現在を見つめ、社会や人間の根源を思考し、美術によってそれを表そうとする。
カダンにとって、歴史と美術史は創作と思索の源泉です。カダンが8歳だった1991年、ソ連は崩壊しウクライナは独立するが、ソ連という歴史、記憶とどのように向き合うかは、作家にとって大きな課題であり続けています。
本展は、ウクライナ侵攻後も国内外で活動を続けるニキータ・カダンの東京での貴重な作品発表の機会となります。どうぞご期待ください。
ニキータ・カダン −−歴史と現在
鴻野わか菜 [早稲田大学教授]
あの空の異変、燦然と光る天宮図を彼が写し撮るあいだ、私は頭を光に漂うに任せながらうっとりと外套の上に横たわったまま、夢を永つづきさせようと物憂く露出を繰り返した。 ブルーノ・シュルツ 『春 』工藤幸雄訳
本展は、ウクライナ現代アートを代表するニキータ・カダンの日本初の展示となる。
カダンにとって歴史は創作の源泉であり、ソ連やウクライナの歴史、社会の様々な側面を主題とする一方で、2014年のクリミア併合、2022年のウクライナ侵攻以降は、現代の戦争が彼の創作の中心を占めることになった。
カダンの創作の特徴は、特定の事象を想定しながらも、それを他の歴史的事象と比較し、それらに共通して現れる人間の本質を見据えることで、詩的で内省的な表現を可能にしていることだ。本展と同時開催となる「大地の芸術祭」で制作した、誰も入ることができない児童公園《別の場所から来た物 》が、手に入れることのできない幸福の象徴であると同時に、ソ連の公園を想起させる宇宙船型の遊具の溶解が“ソ連的ユートピア”の終焉を表し、なおかつ現代のウクライナの公園の惨状をも示しているように、カダンの作品ではしばしば複数の時空が混在している。カダンは、彼が愛するブルーノ・シュルツの小説の主人公さながら、足を大地に置きつつ、夢想の中で歴史を旅し、その眼差しは遠い星座を捉えている。
本展で展示される《共同の部分の保護》は、銃弾の跡のある防弾服を用いたオブジェで、少数民族や先住民に対する抑圧と現在の戦争を重ねながら、身体に対する暴力の歴史を照射している。世界初公開となる《ダンサーと爆発》は、ウクライナの踊り子を描いたものでありながら2022年まで《ロシアの踊り子 》と題されていたエドガー・ドガ の絵画とカダンの幼年時代の体験、現在のウクライナの状況を重ね合わせた連作ドローイングである。カダンは、「この戦争は人類最初の戦争ではありません。そして歴史を振り返れば、戦争中に美術がいかに大きな役割をはたしてきたかは明らかです」と語り、俯瞰的視点で現在を見つめ、社会や人間の根源を思考し、美術によってそれを表そうとする。