展覧会Exhibition
中岡真珠美 - 錯誤:Parapraxis
2012.9.14(金) -9.30(日)
この度、アートフロントギャラリーでは中岡真珠美個展「錯誤:Parapraxis」を開催致します。
作家の詳しいプロフィール、作品については下記リンクにある作家ページをご覧ください。
作家の詳しいプロフィール、作品については下記リンクにある作家ページをご覧ください。
日程 | 2012.9.14(金) -9.30(日) |
---|---|
営業時間 | 11:00~19:00 (月休) |
会場 | アートフロントギャラリー |
イベント | オープニングレセプション9月14日(金) 18:00~20:00 |
作家在廊日 | 9月14日(金)、9月15日(土)は昼まで |
中岡は実際に見た風景の輪郭をなぞり、切り取り、色彩を配置し、カシューなど、さまざまなメディウムを使いながら余白を生かした質感のある平面を制作している。通常背景として余白として扱われている空間に色が与えられ、逆に物として存在している手前にあるものが余白になることもある。そのため具象的であったはずの目の前にあるものが抽象的な風景となる。2007年のVOCA展、2008年のINAXギャラリーや第一生命ギャラリーでの展覧会における作品はこうした傾向の作風で、絵を描いているというだけでなく、むしろ大きな作品を通してより大きな空間造形をしているかのような印象があった。目の前にあるものの輪郭を色彩によって仕切りなおし、白い大きな余白を充分とって描かれたこれらの作品群は確かに今見ても魅力的である。同時にひとつのパターンとして完成されており、次にどのよ
うな作風に転じていくのだろうかと思いながら作品をみていた。
昨年のアートフロントギャラリー展覧会「柔らかな楕円形を求めて」では、それまでの作風から大きく変化をしていた。広島の原爆ドームなど、より具象的なモチーフを扱うことで匿名性のあるそもそも美しい風景を別な形で綺麗に再構築する安全な道から、意識的に道のない新しい場所を歩き出したのではないかと思いながら作品を見ていたのを思い出す。
今回の展覧会はParapraxisという言葉が展覧会のタイトルとして使われている。日本語としては「錯誤行為」という難しい言葉になる。これは作家の今現在の製作の姿勢を表している言葉だそうである。これは例えば勘違いなどに基づき無意識のうちに間違った行為に及ぶことを意味する。このような行為は日常的に誰もが経験しているであろう。例えば画は風景を描いている。風景=画として私達は同一視してどこに何が描かれているのであろうかと、目を凝らしてみるのだが、実は画は画でしかない。大きな風景を小さな画に閉じ込めること自体が不可能であり、絵を描くことはそれを無理に、経験を通して、それが美術に見えるように制作しているに過ぎない。絵を描くことにはそれを前提にする行為を美術と呼ぶという前提がある。ところが、それらの画は展覧会で壁に設置される際には壁に窓があって、小さな窓の向こうに元の大きな風景があると見立てているに過ぎない。
中岡の近年の作業において顕著なのは描かれたものや風景が展示されているということを、その思い込みの前提から離れようということではないかと思う。どこかにある風景の置き換えでなく、実際に展示空間に置かれた「もの」として画を扱おうということである。今回の展覧会において中岡は人為的に作られた採石場の風景や、人為的に風景を作りこんだ「庭」を描く対象として選ぶ。例えばその庭に盆栽が置かれるとすると、盆栽はそれぞれ絵画のように風景を模したミニチュアであって、実際の庭という風景の中に作られた風景が置かれていることになる。この展覧会では、ギャラリーをそうした人為的に作られた空間に見立て、その中に人為的に作られた風景を描いた人為的な中岡の画を配置する。画を使って空間を再構成しながら、それぞれの絵の中にも丹念に作られた人為的な空間を配置するという2重、3重に仕掛けられた展覧会になると思う。
2007年のVOCA展も2009年のアートフロントでの個展も、全体的な柔らかな色彩と余白をうまく生かしながら、実際に何を見て描いているのかは分からないほど、画面の中で現実が整理されていた。それは、実物の「代償」でなく、現実との距離や差異や、作家が現実をどのように解釈しているかなどを類推する必要も無い対象として、見る側としては感覚的にそれを受け止めるしかない平面としてその作品は見事に成立していた。
昨秋の展覧会では変化の兆しが現れたように感じた。例えば窓のような具体的なモチーフを絵から読み取ることができる作品が出品され、大きく変化しはじめた作風に驚き、今後の展開にも大きな期待を持った。中岡作品の特徴である爽やかさはそのままで、法枠 (斜面で土砂崩れをとめるコンクリートの枠)や砕石場など、ある意味ではハードな対象を描いていることが作品の題名から伺われ、描かれる対称として選択されるものに作家のオリジナリティーを感じさせる。それまであまり見えてこなかった作家の目と制作手法、私たちの知っている現実と作品を対比させながら作品を読み解くことができ、描き手と見る側の関係も変わってきている。
今回の展覧会では、展示空間ごとにテーマを考え展開する。この作家が新たな地平へ乗り出していく大きな一歩となる展覧会になるはずだ。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
うな作風に転じていくのだろうかと思いながら作品をみていた。
昨年のアートフロントギャラリー展覧会「柔らかな楕円形を求めて」では、それまでの作風から大きく変化をしていた。広島の原爆ドームなど、より具象的なモチーフを扱うことで匿名性のあるそもそも美しい風景を別な形で綺麗に再構築する安全な道から、意識的に道のない新しい場所を歩き出したのではないかと思いながら作品を見ていたのを思い出す。
今回の展覧会はParapraxisという言葉が展覧会のタイトルとして使われている。日本語としては「錯誤行為」という難しい言葉になる。これは作家の今現在の製作の姿勢を表している言葉だそうである。これは例えば勘違いなどに基づき無意識のうちに間違った行為に及ぶことを意味する。このような行為は日常的に誰もが経験しているであろう。例えば画は風景を描いている。風景=画として私達は同一視してどこに何が描かれているのであろうかと、目を凝らしてみるのだが、実は画は画でしかない。大きな風景を小さな画に閉じ込めること自体が不可能であり、絵を描くことはそれを無理に、経験を通して、それが美術に見えるように制作しているに過ぎない。絵を描くことにはそれを前提にする行為を美術と呼ぶという前提がある。ところが、それらの画は展覧会で壁に設置される際には壁に窓があって、小さな窓の向こうに元の大きな風景があると見立てているに過ぎない。
中岡の近年の作業において顕著なのは描かれたものや風景が展示されているということを、その思い込みの前提から離れようということではないかと思う。どこかにある風景の置き換えでなく、実際に展示空間に置かれた「もの」として画を扱おうということである。今回の展覧会において中岡は人為的に作られた採石場の風景や、人為的に風景を作りこんだ「庭」を描く対象として選ぶ。例えばその庭に盆栽が置かれるとすると、盆栽はそれぞれ絵画のように風景を模したミニチュアであって、実際の庭という風景の中に作られた風景が置かれていることになる。この展覧会では、ギャラリーをそうした人為的に作られた空間に見立て、その中に人為的に作られた風景を描いた人為的な中岡の画を配置する。画を使って空間を再構成しながら、それぞれの絵の中にも丹念に作られた人為的な空間を配置するという2重、3重に仕掛けられた展覧会になると思う。
2007年のVOCA展も2009年のアートフロントでの個展も、全体的な柔らかな色彩と余白をうまく生かしながら、実際に何を見て描いているのかは分からないほど、画面の中で現実が整理されていた。それは、実物の「代償」でなく、現実との距離や差異や、作家が現実をどのように解釈しているかなどを類推する必要も無い対象として、見る側としては感覚的にそれを受け止めるしかない平面としてその作品は見事に成立していた。
昨秋の展覧会では変化の兆しが現れたように感じた。例えば窓のような具体的なモチーフを絵から読み取ることができる作品が出品され、大きく変化しはじめた作風に驚き、今後の展開にも大きな期待を持った。中岡作品の特徴である爽やかさはそのままで、法枠 (斜面で土砂崩れをとめるコンクリートの枠)や砕石場など、ある意味ではハードな対象を描いていることが作品の題名から伺われ、描かれる対称として選択されるものに作家のオリジナリティーを感じさせる。それまであまり見えてこなかった作家の目と制作手法、私たちの知っている現実と作品を対比させながら作品を読み解くことができ、描き手と見る側の関係も変わってきている。
今回の展覧会では、展示空間ごとにテーマを考え展開する。この作家が新たな地平へ乗り出していく大きな一歩となる展覧会になるはずだ。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
![](/exhibition/assets_c/2012/09/%E4%B8%AD%E5%B2%A1%E7%9C%9F%E7%8F%A0%E7%BE%8E%E3%80%8Ctranscription2%E3%80%8D2012ff-thumb-600x217-743.jpg)
写真: 「Transcription 2」、キャンバスにアクリル絵の具、カシュー、350 × 950㎜、2012年
アーティスト
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