展覧会Exhibition
中岡真珠美 - 緩衝 - バッファ
2013.10.11 (金) - 11.3 (日)
10/11 - 11/3
アートフロントギャラリー(代官山)では、中岡真珠美の個展を開催します。
アートフロントギャラリー(代官山)では、中岡真珠美の個展を開催します。
日程 | 2013.10.11 (金) - 11.3 (日) |
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営業時間 | 11時より19時(月休) |
会場 | アートフロントギャラリー(代官山) |
レセプション | 10月11日(金)18:00~20:00 |
中岡真珠美のこの数年の作品を振り返ると、抽象から具象へ移行している。2007年から2008年にかけVOCA、INAXギャラリー、第一生命ギャラリーと続いた展覧会に出品された作品の多くは深みのある質感を持った白の広がりが印象的で、その白とのコンポジションとして他の色が平坦に、しかし見事なバランスで配置されており、描かれた対象が何であるかということを気にする必要もないほど美しい抽象画であった。このころ中岡は美しい風景を写真に収め(おそらく写真としても美しい写真であったろうが)その写真を元に作品を作っていたという。つまりこの頃の作品は美しさの秩序を幾度ものプロセスを通じて求めた結果であり、余分なものを削り、最低限の要素だけを残した、純化された風景の代償として成立していた。私達はもはや風景とは別の「もの」になったタブローを見ていたのだ。
こうした一定の法則を元に描いた「美しい」平面をシステマティックに描くことを避けるためであったのであろう。その後、中岡は一転して採石場の砂利の山、崖崩れを止めるコンクリートのグリッドである法枠、ガードレールなど、美しい風景を選びながらも風景画家であるならば回避するであろう対象を意識的に画面の中央に配置する。対象を選ぶことが創作の姿勢として重要であるならば、作品が次第に具象に寄って行くのも当然であった。それでも中岡の作品には感傷に寄った筆致が見られない。隙のない凛とした画面の品格と、質感のある白を基調とした起伏のある精巧な仕上がりは中岡ならではの美しい仕事であった。この製作のプロセスが今回の展覧会タイトルとなる「バッファ」につながる。
バッファとは衝撃を和らげるための緩衝器であるが、現代では情報処理機器の転送速度などの誤差を調整する機能を指すことが増えている。私達はバッファの前に「緩衝」という邦題を置いてみたが、「変換」「転位」など他にも候補はあり、どれも完全には当てはまらなかった。バッファを経て送られてくるデータが像を結ぶのを待つあのもどかしい時間が表現できない。私にとって中岡の仕事とは機械のように目の前にあるどんな風景をもいったん蓄積したうえで新たな別格の「もの」として現前させることともいえる。
今回の展覧会は看板をモチーフとした新作で構成される。交差点にたくさん立っている看板。空き地にぽつんと立っている看板。看板には美しさというより、常に奥行のある景色を突如遮断する平面としての存在である。当初作家はギャラリーを看板の作品で埋めることでインスタレーションのように見せる予定だった。そうならなくとも看板は中岡にとってこれまで以上に難敵だと思う。平面として構成される画と平面としての看板の衝突がどのような形で作家によって変換され、像として私たちの前に像を結ぶのか、ぜひ見ていただきたいと思う。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
こうした一定の法則を元に描いた「美しい」平面をシステマティックに描くことを避けるためであったのであろう。その後、中岡は一転して採石場の砂利の山、崖崩れを止めるコンクリートのグリッドである法枠、ガードレールなど、美しい風景を選びながらも風景画家であるならば回避するであろう対象を意識的に画面の中央に配置する。対象を選ぶことが創作の姿勢として重要であるならば、作品が次第に具象に寄って行くのも当然であった。それでも中岡の作品には感傷に寄った筆致が見られない。隙のない凛とした画面の品格と、質感のある白を基調とした起伏のある精巧な仕上がりは中岡ならではの美しい仕事であった。この製作のプロセスが今回の展覧会タイトルとなる「バッファ」につながる。
バッファとは衝撃を和らげるための緩衝器であるが、現代では情報処理機器の転送速度などの誤差を調整する機能を指すことが増えている。私達はバッファの前に「緩衝」という邦題を置いてみたが、「変換」「転位」など他にも候補はあり、どれも完全には当てはまらなかった。バッファを経て送られてくるデータが像を結ぶのを待つあのもどかしい時間が表現できない。私にとって中岡の仕事とは機械のように目の前にあるどんな風景をもいったん蓄積したうえで新たな別格の「もの」として現前させることともいえる。
今回の展覧会は看板をモチーフとした新作で構成される。交差点にたくさん立っている看板。空き地にぽつんと立っている看板。看板には美しさというより、常に奥行のある景色を突如遮断する平面としての存在である。当初作家はギャラリーを看板の作品で埋めることでインスタレーションのように見せる予定だった。そうならなくとも看板は中岡にとってこれまで以上に難敵だと思う。平面として構成される画と平面としての看板の衝突がどのような形で作家によって変換され、像として私たちの前に像を結ぶのか、ぜひ見ていただきたいと思う。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
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