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[インタビュー]内海 聖史 : squid

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[インタビュー]内海 聖史 : squid

ギャラリー

現在、個展「squid」を開催中の内海聖史に作品について語っていただきました。


まず、最初の部屋のインスタレーション作品はギャラリーへの導線を想定して構成しました。ここのギャラリーは、ウィンドウから絵までがとても遠いという特徴があります。路上からファーストコンタクトで絵を見たときに手前にせり出したいなという想いがあって、前回の展覧会でも作品を星型にして星のとんがり形をつくったのですが、それと同じように、今回は、壁を建てて絵画をせり出すということをやってみました。

アートフロントギャラリーは建物が珍しく、通常多くの展示空間は最初のファーストコンタクトをひきずりながら作品に近づいていくわけですが、ここでは一旦、路上からのファーストコンタクトでこんな感じだなーと見てから、改めて展示室に入ってきて、また同じ作品をもう一度見ることになる。その2回ファーストコンタクトがあるのが珍しいので、壁をたてることによって「違うファーストコンタクトを2回」持てるようにしたわけです。


内海聖史squid2020_展示風景_加藤撮影_07.jpg

この青い絵は今年の1月ぐらいからコンセプトを考えて手を入れて、この11月まで描いていました。生理的に一緒にならない2つの絵画、例えば外側の作品は縦にパネルを9分割、内側のやつは横に分割されているんですが、生理的に一緒にはみえないけれども実は一緒ということがありえないかなーと思って、パネルのできあがりを想定してやっています。

内海聖史_2020-25 squid_2020_キャンバスに油彩、パネル_4600x7200x46_01.jpg

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artwork1 "2020-25 squid" 4600x7200x46mm

それを補足するために八角形の作品はまさに欠損している部分がわかりやすい作品です。ここがないな、というのがわかりやすいし、それらが組み合わさっている状態です。こっち側の4つの斜め切りの作品は、ピンクの部分が欠損しているという。

内海聖史squid2020_展示風景_加藤撮影_05.jpg

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artwork2 "2020-24" 1300x1685x43mm


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artwork3 "2020-22 squid ring" 1810x1810x33mm

二つの空間にある関連した二つの作品を時間差で見ることで頭の中で展開できると面白いかなと思います。例えば10mの長さの絵巻物を一度には見られないからくるくる回しながら見て、一人ひとり、それぞれが面白いと思った部分は違っていて、それぞれが頭の中で編集していて、それぞれが違った完成形を見ていると思うんですね。

この柱上の絵画にしても、一眼では見えなくて後ろまで自分が来て初めて絵画が完成するというものになっています。

"2020-23" キャンバスに油彩、24枚のパネル 750x1775x33mm

僕は絵画っていう物質について扱っていますけれども、絵画とは絵画という物質がごろんとあるんじゃなくて、それに付随しているものがある。その中で、絵画は見るという行為がくっついている物質なんだろうと思うわけです。例えば石や岩が落っこちていてもなんとも思わないけれども、裏をみようと思わないけど絵画が裏返しに置いてあったらちょっと裏返してみようかな。やるかやらないかはわからないけれどもやろうかな、という行動意識が出るんじゃないかと思います。

絵ってマグロのお刺身とかにも似てるんじゃないかと思っています。マグロのお刺身もとても大きい魚の一部を切り身として使っている。キャンバスに描かれている絵、一点一点も、表現としては「部分」、僕が気づいたときには四角い「部分」になっている。ただ、絵画というものはもっと、切り身のような部分ではなくて、イカとか貝みたいに全体であるはずなんですよ。内臓と、みんな。絵画だって、内臓ごと複雑に絡み合っている全体を見て欲しいんですね。そういう洗練されていない部分、そぎ落とされてしまった部分も含めて全体を見るために今回のインスタレーションを構成しています。大型の絵のキャンバスも横割りと縦割りを混ぜて、通常整理してしまうところをワザと複雑にして、そうすることで考えることがあるのではないかと思って制作しました。

"2020-18, 19"(2点組)キャンバスに油彩、パネル、額装 563x463x150mm

これはアクリルの裏側にも絵がはいっています。見えない絵、ですね。2点は実はデュアル状態になっています。見え方としては向こうの絵と同じで見えてない絵も存在する。絵画を見るという経験というのも、1点だけ見てるわけじゃない、という考え方もできるし、この壁の裏にだって絵はあるから掛けてるじゃないか、というのもあるし、絵画はこっちにもあっちにもあるじゃないかというのを経験として考えるとなると、勿体ないけど、と自分でも今感じるのですが。

"2020-58" キャンバスに油彩、パネル 805x710x50mm

絵の構図についてお話しすると、宇宙とかモノクロとか、銀河を並べるとこんな感じかなと思いながら描いているんですけれども、実は対象がなくて、対象物を描くというよりは絵具同士の関係性だったり、キャンバスとかの関係性、絵具とキャンバスのぶつかり方、絵具同士のぶつかり方。絵画と空間のぶつかり方、空間にはいってくる、人間がはいってくるぶつかり方、みたいなことを考えています。既に、展示空間が決まっている大きい絵は、鑑賞者の導線がわかっているので、最初に見るであろう場所から最初に描いていって、そこから構造をつくっています。

"2020-50" キャンバスに油彩、パネル 500x500x35mm

色については、例えば青も青に決めるまでに結構、メーカーによって色が全然違うのでホルベインのセルリアン系でいってみようとかいろいろな色を混ぜていくうちに、これがあうな、というメインのカラーが決まる。それを基軸に他の色が決まっていく。あと、油絵具ってほかの色をつぶすのが強いので、無理やりほかの色を入れてしまっても平気というか、むしろそれを工程の中にいれることによって複雑にしていく感じですね。

たぶん眼ってすごく解像度が高いというか、こわいぐらいの見え方をしているのではないかと設定して僕はやっているので、例えば下に赤がある青と、緑がある青。同じように見えるかもしれないけど、違うのではないのかな?と。そういうことを考えて、わざわざ回り道をするように描いていくと、複雑になっていくので、自分でももう再現できないところまで絵が行けたらいいかな、と思っています。



今回の展示は夜になると照明の色が変わるようになっています。通常、夜にになって照明が当てられたとき、私たちは人工的に光を補って絵を見ることになります。そして、その人工的な光をわざわざ太陽光に合わせた昼光色に補正する、という行為をしています。そのことを示すために、逆に昼光色以外の光をあてる、ということを今回やってみました。



展覧会「内海 聖史 : squid」は2020年12月27日(日)まで。
ショーウィンドウのライトアップは2021年1月6日まで行っております。
是非お立ち寄りください。

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