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井村一登 「自分が映らない鏡」の世界を語る

  • 井村一登 「自分が映らない鏡」の世界を語る

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井村一登 「自分が映らない鏡」の世界を語る

ギャラリー

2022年5月20日(金)- 6月12日(日)

日程 2022年5月20日(金)- 6月12日(日)
営業時間 水~金 12:00 - 19:00 / 土日 11:00 - 17:00
休廊日 月曜、火曜日
現在開催中の《村山一登×井村一登:重複するイメージ》で展示されている井村一登の作品は、作家が追及している鏡の作品を中心としています。鏡と人間の関係が変遷してきた長い歴史に着目し、その一歩先を様々なアイディアによって具現化しつづける井村の世界観を、作品を前に語っていただきました。

《wall-ordered ellipsoid'》2022年  ガラスミラー、LED、額縁 342 x 662 x 148mm

井村:最初に鏡の作品を作り始めたのは学部の3年次ですからもう8年になります。最初につくったのはそちらの壁にかかっているこのシリーズなんですが、このときはまだ鏡を使うということに終始していました。去年初個展を日本橋のMITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERYにて行ったのですが、そのときにこれまでの作品を振り返って鏡というものを深堀りしようと鏡のシリーズの作品を作り出しました。

鏡というものは、最初は水面で、その次に人工的につくられたのが、黒曜石を研磨して、それから銅鏡といった金属鏡が生まれて、それからガラスに金属蒸着や塗装という感じで、素材や技術自体も変遷しているし、鏡というものへの人の向き合い方が変わってきました。最初はもっと神秘的なものであったのが自分を見るためのものになり、さらには光学的に仕組みの中で取り入れられたり、人との付き合い方が変わってきているなという思います。
今自分の制作は「自分が映らない鏡」をテーマにしているんですけれども、素材の変遷に伴ってひととの向き合い方がどう変わってきたのかを追体験しながら探っています。

《invisible layer creature #4》2022年 ABS 板、塗料、666 x 666 x 15mm

これは魔鏡をモチーフにした作品です。魔鏡は銅鏡とほぼ仕組みは同じなんですが、大体金属で作られた銅鏡は数時間の磨きで鏡面になります。それからさらに同じ面を磨き続けると、銅鏡の裏の模様の凸凹によって同じように磨いてもかかる圧力が違うので裏面の模様が光に反射して像が映る、例えばそれで後ろに十字架を描いたら鏡の面では見えないけれども光に映せば十字架がみえる、そうやって隠れキリシタンの人が信仰の対象にしていたんですけれども、この円形の作品はその制作方法をモチーフにしています。当時はひ研磨を続けていたんですが、これは塗装を重ね制作しています。油が虹色にみえるのと一緒で、微細な凹凸ができて色味が出てきます。(床に落ちた像を差しながら)光を反射するとこういう模様も出てきます。過去のコミッションのときには、この作品をピンポイントにつけていただき床に像を出しておりました。

《mirror in the rough 5650g》2022年 ガラスにアルミ蒸着, 160x 200 x 200mm

こちらはガラスの塊をつかった作品です。
ガラス鏡というのは、ガラスの板の裏に金属を蒸着させているので、ガラスミラーというのはガラス越しに鏡をみている。ただその3ミリとか5ミリの厚さというのはなかなか日常では感じることができなくて、これは歪で立体感のあるガラスなのでものすごく複雑な反射になっています。これは「自分が写らない鏡」の作品例です。ガラス自体の形は坩堝に溜っていたガラスがずっと溶けている状態が作業後に火を落とした時に温度差で割れてこのような歪な形になり、それを使用し鏡にしました。

これは僕が石器づくりが趣味なので、石器サークルのメンバーでガラスの瓶の底で石器をつくっている人がました。もし、ガラス塊があればもっと大きな石器が作れるのではと思い、ガラス工房に行くと廃材として残っていたガラスがそれ自体で面白い形をしていたのでそれをヒントに制作しました。そしてこれを接写した作品がこちらの《self portrait #74》です。

《self portrait #74》 2021年 アルミミラーに UV プリント、400 x 600 x 8mm

自分が映らない鏡で、自分が写らないセルフポートレートを撮影しました。写真自体をさらに鏡に印刷して、留め方も鏡用の金具です。なので行為としては鏡を撮影して鏡に印刷しているということです。自分が写らないセルフポートレートとして自分の存在を消す方法として、他人が映ることなのかなと考え、鏡に印刷しました。

《wall-ordered horizon'》2022年 ガラスミラー、LED、額縁 482 x 482 x 98mm

一番、最初に制作した鏡のシリーズです。8年つくってきたのでかなりクオリティがあがってきたのではないかと思います。凸面と直面が合わさる鏡が反射によって2種類の数列を画面上に作り出します。

これはタイプCで充電していますが、以前制作した(隣の展示室にある)作品では充電しながらでは使えなかったんですが、こちらは充電しながら光るように充電装置のバッテリーなどを使っています。電気を消すと鏡に戻ります。

《wall-ordered ellipsoid'》2022年  ガラスミラー、LED、額縁 342 x 662 x 148mm

(こちらは部屋が真っ暗だと一切自分が映らない作品です。)

《spherical mirage forest》2022年 アクリルミラー、ガラスミラー、 ステンレスミラー、LED、額縁
300 x 300 x 152mm

この作品は真正面から見た時に先ほどの『wall-ordered』の逆で、鏡の手前に球形の像を浮かべます。

アトリエに様々なサイズ、素材、形の鏡があるのですがそれらで別の現象を想像しながら試していた時に、
一瞬ふわっと何かが浮かびあがってこれはなんだろうと思い、観察しながらその何かを像として一番いい状態で安定できるよう全体を設計しました。

モチーフはいつも360度カメラで撮影した風景を使用しています。その自身を囲んでいる風景が球形のホログラムとして鑑賞者に一望させます。

鏡オタクでもあるのでコレクションしている様々な鏡で遊びながら実験しつつ、そこで起きた現象から拡張させています。


展覧会は6月12日(日)まで。ぜひご高覧ください。

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