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北城貴子:white out -- 作家に訊く
作家と新作《white out no.3 -L-、-M-、 -R-》2022

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北城貴子:white out -- 作家に訊く

ギャラリー

2022年9月30日(金) – 10月23日(日)

現在開催中の北城貴子個展「white out」にて作家にインタビューを行いました。これまでも一貫してテーマとしてきた「光」。本展では「迫ってくる光」と風景を溶かすような「包み込む光」を描き、風景の中に存在する「光」の多様な感覚を表現しています。これらの作品に込めた想いや、その先にある新しい表現への気づきなど、今回の新作について語っていただきました。

日程 2022年9月30日(金) – 10月23日(日)

形から飛び出す色、迫ってくる光


この展示室の作品は学生時代にもやっていた白地に油絵具で描くシリーズです。私は一貫して「光」をテーマにしていまして、これらの作品は水面にちらちらと反射してこちらに向かってくるような光のイメージで描いています。風景の再現性というよりも、光を見出して描いています。

個展「white out」展示風景、Room 01

左:《white out no.2》1940x970mm、右:《white out no.1》1940x1940mm、キャンバスに油彩、2022

《white out no.1》部分

白地に描いたこのシリーズは、白のマットな面がこちらに向かってくる、攻撃的な感覚をもっています。マットな下地にテロっとした艶のある油絵具で描くことでメリハリをつけ、こちらに迫ってくるようにできないかと試みました。細かい筆触も少し肉厚にし、筆圧の違いも意識して制作しています。

抽象的なイメージを描くようになったのは学生の時で、そのとき住んでいた家の庭で写生をしていたときに育てていた植物の色がとても前に飛び出てきたような感じを受けたのがきっかけでした。そこから形から色が飛び出してきたみたいな抽象的なイメージを描くようになったんです。どうやったら前に迫ってくるように描けるのか――今回、白地に描いた作品もそのときの経験と、光が強い真夏を描こうという想いが重なり形になりました。

左《white out no.3 -L-》、中央《white out no.3 -M-》、右《white out no.3 -R-》、各1940x1303mm、キャンバスに油彩、2022

また、今回は新しい試みとして、これまでも描いてきた水面に映り込んでいる樹々の緑や空の色のさざ波とは異なる黄色い有機的な丸っこい形も水面のなかに描いています。異質なものを入れることで見え方に不思議な感じが出ないかなと考えています。単に透明色の強い筆触で描き、私の動かしている筆圧みたいなものを感じられるような感覚を込めました。
3連作の作品については、軽やかなイメージにしたいと思い、鮮やかというか、そんなに多くの色を使っているようには一見みえないけれども、華やかに、軽やかにみえるような印象の作品に仕上げました。ぱっと気分があがるような感覚になってもらえたら良いかと思っています。

画面の分割は昔からよくやるのですが、自分の身体に対して見ているものが大きかったりする場合、視点が動く感覚というのがあり、動く視野の「ずれ」や、見ているものと自分との関係性などで画面を分割しています。

《white out no.14》530x530mm、パネル、キャンバスに油彩、2022

左:《white out no.9》、右:《white out no.6》、各225x280mm、パネル、キャンバスに油彩、2022

小さい作品に関しては、近い距離で鑑賞される事が多いので、よりモノとして美しい印象を与えるように、マットと光沢のメリハリのある質感なども意識して描いています。小さい作品は特にいろいろな色味の作品を描いていますが、それは周りの映り込んでいるものや、空のちょっとした反射のイメージという意味で使っている色味です。厳密に再現しようという気持ちは私の中にはないので、何時ですかといわれても困るのですが、夕方の空であったり、陽が暮れる前の空であったり、そういうイメージから色彩を採ってきていることが多いです。


光に包まれて溶ける風景

《Melts with light 2》910x727mm、キャンバスに油彩、2022

この展示室で最初に描いたのがこの《melts with the light 2》になります。
近所の公園に行くと、光に包まれて光景が溶けていくようなイメージがあって、それを絵にしたいという気持ちで、2日ぐらいで描きました。この展示室の作品は、とても楽しく鼻歌交じりではないですが、リラックスして描いた作品です。これまでずっと温めていたイメージがあり、それをスムーズに画面にのせた感覚で制作しました。

この作品の元の風景は、川が流れていてそのまわりに草むら、遠くに山がみえていて本当はすごく奥行きのある風景です。作品の描き方は、モチーフによって変わるというよりもそのときの感覚によって変えています。そのときに見ていて感じたものを、感覚的により出していければいいなと考えています。

《Melts with light 6》910x727mm、キャンバスに油彩、2022

この作品《Melts with light 6》も光が溶けるような感じで画面を構成できるといいかなと思い、新しい感覚として描いた作品です。ドローイングしているのと同じ感覚でタブローを描いており、再現性を意識せず感覚的に描いている作品になります。

上:《Melts with light 3》727x910mm、下:《Melts with light 7》 727x606mm、キャンバスに油彩、2022

《Melts with light 3》や《Melts with light 7》は、以前から描いている作品の描き方に近いかと思いますが、今回の新作はいつもより絵画の平面性を出していきたいという想いがあり、筆触を少し垂れさせたり、少しぐじゅっとさせた筆触を多めにしています。

《Melts with light 5》727x910mm、キャンバスに油彩、2022

今回の作品は、いつもの光を感じてそれを画面に定着させるという手法に加えて、絵画の平面性を足しています。透明色の太いストロークを垂れさせたり、筆触を出していくようなことで、絵画の平面性をより感じさせるようなことをできないかと思ってやっています。
《Melts with the light 5》 を描いたときに自由になっているような感じがして、何でも描けるような気がしました。これまで自分を狭めていたのかもとも思いました。今までのシリーズごとの方法が定まってくる中で、感覚の差でシリーズを変えてきましたが、モチーフにこり固まらなくてもよいのではないかと思うようになりました。そもそものテーマが光を感じるのであれば、もしかしたら自然物以外にも広がっていけるのではないかと今回描きながら思いました。


展覧会は、10月23日(日)まで。北城作品の新たなる展開への息吹も感じられる本展へ、ぜひお越しください。
北城貴子 個展:white out
2022年9月30日(金) – 10月23日(日)

※最終日の10月23日(日)は作家も在廊します。この機会をお見逃しなく!

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