今回の大地の芸術祭を機にオープンした清津峡美術館では4人のアーティストの作品が見られる。H鋼を斜めに建て、従来は地中に埋まって展示されていた基礎部分も露出させた原口典之、杉を彫りこんだ柱を森のように配置した戸谷、上部空間を支えるような軽やかな鉄の造形12体を林立させた青木、長さ10メートルの木の船を置いた遠藤利克。それぞれがマッスとして空間を占有しながらもお互いの余白が響きあって心地よい。
戸谷成雄 Shigeo Toya
photo Ishizuka Gentaro
遠藤利克 Toshikatsu Endo
photo Ishizuka Gentaro
これらの作家はいずれも長い活動歴を持ち、海外でも高く評価されている。原口は2009年のBankARTでの「社会と物質」展の後作品がヨーロッパの美術館に収蔵されるなど近年再評価が高まっている。青木は昨年大規模な個展がスイス、ポーランド、ドイツを巡回した。戸谷と遠藤はハワード・フォックスが企画した「プライマル・スピリット」展(1991)にいちはやく名を連ね、西欧から観た視点の一つとして、日本のアーティストが物質そのものに向かい、自然に内在する精神との自己統一化を図っていく傾向のある作家として位置付けられた。欧米でアートの自立性が声高に唱えられた時代を経て、それぞれ独自の道を続けている彼らが今また新鮮な空気を吹き込むのは見る側として純粋な喜びを感じる。
photo Ishizuka Gentaro
キナーレの分館として構想されたこの倉庫美術館は、旧清津峡小学校を建築家の山本想太郎が改築したもの。展示空間となっている体育館は築30年余りの建物で、床の木を撤去したあとモルタルで均一にするなどコンテンポラリーなアートに合う仕様とした。会期中はカフェも営業。こちらもどうぞご利用ください!
(レポート 奥野恵, reported by Kei Okuno, Art Front Gallery)
大地の芸術祭のパスポートは東京事務局、代官山のアートフロントギャラリーでも販売しております。ガイドブックと合わせ出発前に手に入れて事前に計画を練って行かれると効率よく廻れます。