展覧会Exhibition
アルフレド&イザベル・アキリザン:Home / Return 2019
2019年6月19日(水) - 8 月 4 日(日)
日程 | 2019年6月19日(水) - 8 月 4 日(日) |
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営業時間 | 11:00 - 19:00 (月、火休) |
レセプション | 2019年6月19日(水) 19:00-21:00 |
同時開催 | 【特別企画】ミゲル・アキリザン : Lost and Found |
協力 | フルーツジュースファクトリー |
フィリピン生まれの二人はその活動の 幅を広げ 2006 年頃にオーストラリアに移 住しました。彼らはそれまでも多くの国々 で作品を発表してきましたが、住み慣れた 文化圏を離れ、文化の異なる土地へ移住し た事は、改めて自らの存在を見つめ直すき っかけになったといいます。
アキリザンの作品の多くはこの時の移住の経験から発生しており、彼らが作品制作においてよく使う段ボー ル箱も移動や移住を象徴する素材の一つです。これらの素材を組み合わせ作り出される作品、特に美術館など の大きな空間で展開するインスタレーション作品は圧巻で、そのモチーフは都市的なランドスケープや船、飛 行機など多岐にわたります。近年は金沢 21 世紀美術館に船の作品が収蔵されるなど、日本でも徐々にその知 名度を上げてきています。
今回のアートフロントギャラリーでの展示では、アキリザンが過去の自身のプロジェクトに手を加えること で新たな展開を試みます。アキリザンは 2015 年に東京都現代美術館で開催された「おとなもこどももかんが える、ここは誰の場所?」展に参加しましたが、この春リニューアルオープンしたばかりの同美術館でかつて 披露したインスタレーション作品を素材として、新たな作品を制作します。近隣の小学校の児童や来場者によ り作られた無数の段ボールの家を、タワーのように組み合わせ積み上げた本作品。その一部は、数か月間の美 術館展示の後、作家とともに台湾、フィリピンを経由して旅をしてきました。今回「Home / Return 2019」の タイトルのもと、これまでに旅した土地や人々の記憶、生活を新たな文脈として背景に背負い再び日本へと帰 ってきます。オリジナルから切り離され、違う文脈を背負ったこれらの造形物がこの日本で再びどのように表 現されるのか、それは私たちに何を語りかけてくれるか、注目の展覧会です。
もう一方の部屋ではアルフレド&イザベル・アキリザンの息子である、ミゲル・アキリザンの展覧会を同時 開催します。
今回はミゲルの代表的な作品数点を日本で初めて展示します。主に日本から海外に流れ着いた文化の破片を収 集し、フィリピンの今を生きる若者の感性を通して組み合わせる彼の作品は、親譲りのアッサンブラージュの 技術を駆使し独特の雰囲気と感性を見せつけます。日本には古い道具に神が宿る付喪神という話がありますが、 彼が見つけた日本からの漂流物はその長い旅の中で蓄積した時間を背負いながら別の土地に土着したのよ うな不思議な姿をしています。その作品の多くは、この材料たちが道具や置物として身近にあり、それをよく 知る日本人には到底思いもつかないような組み合わせばかりです。今回のこの展示において再び日本に帰るこ とになったこれらの文化の破片による作品はまるで、日本書紀に記されたまろうど神のように日本の観客にと って刺激的な存在となるでしょう。
今回、アルフレド&イザベル・アキリザン夫妻と、ミゲル・アキリザンによってもたらされる異なる二つの 帰還は、ものにあふれグローバル化の名のもと均一化されていく社会の中で揺れ動く、最先端のアジアの表現 になります。ぜひご高覧下さい。
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"住む:プロジェクト ― もう一つの国" 2015 / 東京都現代美術館 展示風景 / 撮影:木奥惠三 / 提供:東京都現代美術館
Home/Return 2019
アニウェイ・アキリザン(キュレーター)
永遠に埃が積もらないとすれば何がおきるのか? 常に移動し、常に変化し続けるように残された私たちは何者なのか? これらの問いは、アルフレド&イザベル・アキリザンが新作《故郷/帰る》(2019) において提起しているものだ。今回、彼等が素材として使ったのは2015年に東京都現代美術館で開催された展覧会《この場所は誰のもの?》で展示した、サイトスペシフィックでその時だけのインスタレーションから取ったもので、それらが彫刻作品と壁付けの作品として新たな形で蘇った。4年前に一人の子供、或いは一人の大人によって作られた家は、彼等が所属していた当初のコミュニティから引き離されて、新たな形に再構成される。我々はかつてその家があったコミュニティにぽっかりと穴があいた情景に想いを馳せることになる。
しかしながらこの「不在」の中にこそ、作り手の物語や語りが存在する。これらの物語はコラージュされ、抽象的なアッサンブラージュ作品として今ここに屹立する。東京から台北、フィリピンのフルーツジュース・ファクトリー工房を経由して、「素材」は再び生まれ故郷に帰って来た。それぞれ印象深い瞬間をとどめたエピソードが集積され、永遠の形に結晶化した。当初の文脈から完全に引き剥がされることはなく、またそこにこめられた逸話も完全に奪われることのない、かつての「家」で再構成されたこれらの作品は、我々の存在や思考における一直線ではない動きを提示しているのではないだろうか。
さらに大切なことは、それが私たちに「見えないもの」を思い起こさせることだ。つまりは作品を創る、あるいは壊す過程で生まれ出て、切ってもきれない関係性や縁、出会いが作品の向こう側に浮かびあがる。
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"Assemblage11" 2019
![](/exhibition/assets_c/2019/06/82b4c3d4d6ea4c369de31256836f9af0af5a837c-thumb-665x945-6675.jpg)
【特別企画】ミゲル・アキリザン : Lost and Founについては、こちらをご覧ください
ミゲル・アキリザン(1986年、マニラ生まれ)
フィリピン北部のラグーナにあるロス・バニョスで活動。
「フルーツジュースファクトリー」を拠点に、先祖伝来のお宝や、自ら漁ったり発見したりしたモノを組み合わせて作品を制作。作品を通して問いかける社会問題は、移動や移住、文化的アイデンティティなど。一見ユーモラスな作品の様相が、実は見えない国境を越えた問題と密接に結びついている。両親がフィリピンからオーストラリアに移住した理由の一つに子供達の教育問題があったが、彼はグリフィス大学とクイーンズランド美術大学(ブリスベーン)を卒業し、ジュエリー制作の資格も持つ。多彩なバックグラウンドを活かして複数のルーツを示唆す るような制作活動を展開。
フルーツジュースファクトリーはフィリピンにあるアーティストの創造拠点。アキリザン夫妻の馴染み深いロス・バニョスの地にあったナタデココジュースの工場を買い取り、複数のアーティストが仕事をしたり、アート関係者が集まれるようにした。もともと何かを「作る」場所であり、かつ世界と繋がっていたジュース工場は、ローカルなコミュニティに根ざしながら世界に向 って開かれている彼らの姿勢を貫く場所としてスタンスが似ているといえるだろう。
アーティスト
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