展覧会Exhibition
山本晶:Playing with Maps
2021年3月12日(金) – 4月4日(日)
日程 | 2021年3月12日(金) – 4月4日(日) |
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営業時間 | 水~金 12:00-19:00 / 土日 11:00 - 17:00 |
休廊日 | 月曜、火曜 |
作家在廊日 | 3月12日(金) PM、3月13日(土)、14日(日)、 |
今回の個展では山本のこれまでにない新たな試みとして、地図のパースペクティヴのなさや非対象性、地図上の境界と明確にその場所の区分ができないイデアなど、地図の持つ普遍性と場所の関係性をテーマにした展示を展開します。山本が地図に注目したきっかけは、昨年11月に山本が参加したアートプロジェクト「木曾ペインティングス」での制作中の体験が元になっています。滞在中フィールドワークとして域内を探索した際、山本は地図と実際の場所との感覚のズレや、住人の暮らしや感情など地図の区分どおりには分け隔てられないものの存在に気づきました。山本はこの地図が形成する境界と目に見えない要素との関連を以下の通り記しています:
図は国や海との境界線をくっきりと分けていますが、歴史を遡るとその線は揺らいでいることがわかります。河川は自然によって流域を変えてきました。たとえ国境にフェンスを建設しても鳥は自由に行き来しています。日本が島国だからといってはっきりとした境界を作っているのだろうかと文化や芸術で感じ取ることができます。絵を描いていて、なにか一つの事象の内側と外側を形成するのは輪郭線でないことは、色と色の狭間を見ていながらいつも考えていたことで、それが地図にも同じ感覚を覚えることに気がつき、作品にしてみようと思いました。
本展において山本はシルクスクリーンや糸など、油絵以外のメディウムも積極的に取り入れた作品を発表します。木曽の地図をベースに流域や道路、行政区の地理的情報に4色の色面がシルクスクリーン印刷された新作《Water mark》は、其々の版のレイヤーが微妙にずらされることにより、其々の色面の境界線が侵食しあいその境界を曖昧にします。研ぎ澄まされた色彩感覚を用いつつも、常に次代の表現を探究する山本晶の新境地を是非ご高覧ください。

《Playing with Maps》の為のドローイング
山本晶個展によせて
佐川夕子/目黒区美術館 学芸員
山本さんは、自身の作品制作の中で、見ることと描くことの狭間に浮かんでくる“境界”と向き合い続けてきた。彼女は、確かな描画術による線や面の画面構成と、色彩に対する優れた感性で、これまで高い評価を得てきたが、描くことについての彼女の関心事は常に、見ていること、見えているものへの疑問が出発点にあり、以前から一貫している。
日常の中で目にする街の風景や自然のすがた、毎日通る道、連なるビル、木々のシルエット、光の反射、影の色。見知っているはずの何かの色も形態も、記憶の中では確かなようで定かではない。この不確かさを、色と抽象化した形でどのように絵画化するか、山本さんの目と手は、キャンバスの中で、可視と不可視のあいだを行き来しながら表現の可能性を探っていく。そして、素晴らしく美しい色彩をまとって、山本さんの絵画は完成する。見えていないものの気配を感じる絵、そんな印象を私は持っていた。2018年に私が所属する目黒区美術館で担当してくれたワークショップは、色鉛筆や水彩絵具などさまざまな画材で「花を描く」というものだったが、副題につけた「見ることと描くことのあいだのやりとり」はまさに山本さんの絵画制作の姿勢を表わす言葉なのだと、今あらためて思っている。
新作は地図を元に描いた作品で、しかもシルクスクリーンで色を重ねていく。そう山本さんから聞いた時は、正直驚いた。シルクスクリーンの版を少しずらして色を置く、透過性のあるインクの輪郭線は積層し、境界はとけていく―。そんなことをつらつらと考えていたら、今回の展覧会タイトルが「Playing with Maps」と題されたと知り、少しだけ感覚がひらけたような気がした。山本さんは境界をめぐる新しい冒険にのりだしたのだと思った。色は重なり、重なりは“関わり”となる。観る者の想像力をかき立ててやまない、この画家の新しい冒険にぜひ対峙してほしい。
アーティスト
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