展覧会Exhibition
水戸部七絵:Study of Dansaekhwa / Dansaekhwa
【第一期】 2025年3月5日(水)- 3月16日(日)/【第二期】2025年3月21日(金)- 4月20日(日)
この度、アートフロントギャラリーでは初めてとなる水戸部七絵の個展を開催いたします。
※今回の個展は、会期を2つに分けて開催します。
※今回の個展は、会期を2つに分けて開催します。
日程 | 【第一期】 2025年3月5日(水)- 3月16日(日)/【第二期】2025年3月21日(金)- 4月20日(日) |
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営業時間 | 水~金 12:00 - 19:00 / 土日 11:00 - 17:00 |
休廊日 | 月曜日、火曜日 |
レセプション | 2025年3月22日(土)18:30-19:30 |
Talk event(対談)予約制 | 2025年03月22日(土 ) 17:00~ / 登壇者:高橋龍太郎(精神科医、アートコレクター)x 水戸部七絵(アーティスト) 時間 / 料金: ¥1000円(税込) ※下記URLよりお申込みください。 https://forms.gle/cBYdK7V2aXQ5c9xp7 |
한국어는 여기
見どころ
今回の個展では、「Dansaekhwa(ダンセクファ)」をテーマに水戸部七絵の新しい挑戦を発表します。
テーマ
「Dansaekhwa(ダンセクファ)」とは、1970年代の韓国の芸術家たちによって実践された絵画形式で、モノクローム絵画の意味です。しかし、視覚表現だけではなく、精神やパフォーマンスといった多様な形式と素材を特徴としています。「Dansaekhwa」は日本語で「単色画」と訳されますが、先駆者たちの作品を参照すると、単に色数の少ない絵画という事ではなく、色数を絞ったことで、より物質的に、身体的に体感できる作品が多いように感じられます。
⽔⼾部はこの「Dansaekhwa」を 2024 年末から 2025 年にかけて参加した韓国廣州京畿道のヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスで知りました。これまで水戸部は、多彩な色と、重圧感のある盛り上がった絵の具が印象的な絵画作品を多数発表してきましたが、今回「Dansaekhwa」の見識を深めたことにより、「色数を絞ることで伝えたいことをより強く表現できるのではないか」と新しい挑戦への意気込みを語っています。また、「Dansaekhwa」の先駆者でもある朴栖甫(パク・ソボ)や李 禹煥(リ・ウファン)、鄭相和(チョン・サンファ)の作品が、例えばキャンバスを折り曲げ、それによって生じるひび割れを利用し、絵具を繰り返し塗ったり、剥がしたりすることによって強度のある絵画をつくりあげていることに気づき、「絵画の物質性と行為」という点で、水戸部のこれまでの絵具やオブジェクトの物質性を活かした作品との類似点を見つけ出しました。さらに、1960–70年代の韓国は物資質的にも困窮し、独裁的な政治制度下にありました。そんな状況を背景に、河鍾賢(ハ・ジョンヒョン)は、制作したモノクロの油絵具を麻布の裏面から押し付け「裏ごし」し、あふれ出た絵画表面を、さらに筆でなぞって擦り付ける「接合」シリーズに着手しています。水戸部は、このような彼らの作品の絵具の持つ物質性や、単なる支持体としてではないキャンバスの可能性を追求し、物質性絵画において「身体」という物理的なアナロジーがDansaekhwaを理解する上で極めて重要であると確信した、と語っています。
本展では、色を絞るという新しい試みに加え、物質的、身体的に語り掛ける、より強度のある作品を展開します。
第一期:Study of Dansaekhwa
3月5日- 3月16日
韓国 廣州のヨンウン美術(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスで制作した絵画作品を発表。約3か月のレジデンスでは、Dansaekhwa(単色画)と言っても、単にシンプルな画面を真似るのではなく、水戸部独自のDansaekhwaを目指すべく、少しずつ少しずつ地道に色を減らしながら、抽象化した人物画の習作を50点ほど描きあげました。第一期では、その中から選りすぐりの数点と新作を展示します。
第二期:Dansaekhwa
3月21日- 4月20日
日本に帰国後「Dansaekhwa」の研究と体験をより自身の作品へと昇華させ制作した最新作を発表します。
幅2.5mを超える大作は、絞られた色彩とその絵の具の物質間によって、新たなる水戸部作品の新シリーズを見せてくれるでしょう。第二期では、日本帰国後の最新作、約10点を展示予定です。
作家プロフィール
水戸部七絵 Nanae Mitobe
神奈川県生まれ。画家。現在、ウィーンと日本を拠点に作家活動を行っている。2011年、名古屋造形大学 卒業、画家 長谷川繁に師事。2022年-2023年、ウィーン美術アカデミーに交換留学し、アラステア・マキンブン(Alastair Mackinven)に師事。2024年、東京藝術大学大学院卒業、画家 小林正人に師事する。
主な近年の展示に、「日本現代美術私観 高橋龍太郎コレクション」(2024/東京都現代美術館)、個展「project N 85 水戸部七絵」(2022/東京オペラシティ)、VOCA展(2021/上野の森美術館)個展「APMoA , ARCH vol.18 DEPTH -Blue Pigment-」(2016/愛知県美術館 )など。ほか多数の展示歴や収蔵作品がある。
日本の若い作家である水戸部七絵は、日本国内ではすでに大変有名な画家であるが、韓国のキュレーターである私は、勤務しているヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスプログラムを通じて、彼女とその作品を初めて知ることになった。彼女に直接会う前に見たイメージ資料を通して、私は彼女の制作に対し「とても独特で個性豊かな、感覚的な作品だ」という印象をもった。また、彼女がレジデンスプログラムに自身の作品を持ちこまなかったため、私は完成した作品を見るよりも先に、彼女に送られてくる制作用の材料(夥しい量の絵具)を「実際に」みるという経験をした。そしてこれは、今回のプログラムの企画者として特異で印象的な経験となり、彼女の個性的な作風を理解するのに大いに役立つこととなった。それは水戸部が使用する絵具の重さが、その作品に使用されるキャンバスよりもずっと重たいからだ。大変厚い表面と彫りを入れたような立体的なマチエールが、彼女の作品の代表的な特徴の一つである。
厚みのある表面の制作をするために彼女は手袋をはめて、まるでボクサーのような動作でキャンバスに色をのせていったり、筆よりはパレットナイフをたくさん使いながら非常に荒々しく抽象的なタッチを見せてくれる。しかし荒々しい中にも繊細な形態表現、感覚的な画面構成と調和のとれた色彩の塩梅は、作家の生まれもった才能を一目で読み取らせる。しかし、彼女の作業をより一層深いものに感じさせるのは、その向こう側に込められたストーリーとメッセージである。主に顔をテーマに制作してきた彼女は、外見や肌の色などによって引き起こされる問題に対し一種の反旗を翻すメッセージを作品に数多く込めてきた。また、さまざまな国家で起こる社会的なイシューを作品のテーマとして扱うこともあった。そのような彼女が、韓国で強く印象を受けたのがまさに「Dansaekhwa」(ダンセクファ)だった。
「Dansaekhwa」は、韓国の現代美術において、単色調のミニマリズム系抽象絵画作品を包括する言葉として、2012年以降に韓国語の名称の「단색화 (単色画)」と、ローマ字表記の「Dansaekhwa」の二つを併用して使用されている。単色画で強調される物質性と行為性は水戸部の制作作業にも重要なポイントであり、彼女はヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)でレジデンスをしていた期間にこれらをより精密に研究するため、単色画を制作と展示における主題と定めた。彼女は、韓国で制作したキャンバスにモノクローム系統で抽象化した人物とオブジェたちを描き、また、単色画からインスピレーションを受けた形式的な実験以外にも、同じ東アジアの作家として、単色画がヨーロッパの模倣だという一部の意見に対する疑問も併せて表現しようとした。
3ヶ月にわたるレジデンスプログラムを終えて日本に帰国した彼女は、今年の3月に東京で開かれる個展を準備するにあたり、韓国で取り組んだものとはまた異なる解釈の単色画制作を進め、この展示で披露することになる。一方、ソウルのアートソンジェセンター(Art Sonje Center)では現在、今年の2月から、単色画の代表的な作家であるハ・ジョンヒョン(河鍾賢)の初期の作品を眺望する<ハ・ジョンヒョン 59-75>展が開催されており、4月まで展示される。この展示を鑑賞する間中ずっと私は、東京の水戸部七絵の制作を思い浮かべていた。韓国と日本という遠距離のために実際に見ることができず、イメージを膨らませていた彼女の最近の作品への実感を、制作されてから50年も経ったハ・ジョンヒョンの作品から想像してみることになったのである。二人の作家の作品は一見すると異なる印象のように見えるが、ハ・ジョンヒョンの「背押法」(キャンバスの裏面から絵具を押し出し、物質を強調する技法)から感じられる感覚は、水戸部の作品を鑑賞する際の感覚と明らかに共通する点がある。併せて今回のハ・ジョンヒョンの展示は、彼が大学を卒業した年の1959年から、代表的なシリーズである「接合」の連作が誕生した直後の1975年までを四つの時期に分けて披露しているが、彼の作品が戦後の混乱と都市化などそれぞれの時代背景とどのように相互作用し発展してきたのかを眺望しているため、この世界のイシューと絶え間なく呼吸し、変化していく水戸部の制作を改めて想起させるのである。作家、水戸部七絵の制作は今後どのように変化し発展していくのだろうか。これからもずっと彼女の制作を期待しながら観つづけるだろう。また、彼女が扱うイシューについても関心をもち、同じ美術家として、同じ東アジアの美術従事者として、彼女に引きつづき注目していくことになるだろう。
일본의 젊은 회화 작가 미토베 나나에는 일본 국내에서는 이미 꽤 유명한 화가이지만 한국의 큐레이터인 나는 내가 근무하는 영은미술관 레지던시 프로그램을 통해 작가와 작품을 처음 알게 되었다. 작가를 만나기 전 이미지자료로 먼저 접한 작업의 느낌은 “정말 독특하고 개성 있는, 감각적인 작품이다“라는 것이었고, 작가가 레지던시 프로그램에 작품을 가져오지는 않았기 때문에 나는 작가의 완성작을 실물로 보기 전, 작가에게 배달되어 오는 작업 재료(엄청난 양의 물감)를 더 먼저 ‘실제로’ 접하는 경험을 했다. 그리고 그것은 기획자로서 참 드물게 인상적인 경험이 되었고 작가의 고유한 작업을 이해하는 데에 큰 도움이 되었다. 미토베상이 사용하는 물감의 무게는 대체로 그 그림의 캔버스보다도 훨씬 무겁기 때문이다. 엄청나게 두꺼운 표면과 부조와도 같은 입체적인 마띠에르가 작가 작업의 대표적인 특징 중 하나이다.
두꺼운 표면 작업을 위해 작가는 장갑을 낀 손을 이용해 복서와도 같은 동작으로 캔버스를 칠해나가기도 하고 붓보다는 나이프를 더 많이 쓰기도 하면서 굉장히 거칠고 추상화된 터치를 보여준다. 하지만 그러면서도 전혀 무디지 않은 형태적 표현, 감각적인 화면 구성과 색채의 조화로운 안배는 작가의 타고난 재능을 한번에 읽어낼 수 있게끔 한다. 하지만 이에 더해 그의 작업을 한층 더 깊이 있게 하는 것은 그 너머에 담긴 이야기와 메시지들이다. 주로 얼굴을 소재로 작업해 온 작가는 외모나 피부색 등으로 인해 일어나는 문제들에 대해 일종의 반기를 드는 메시지를 많이 전했으며, 여러 국가에서 일어나는 사회적인 이슈들을 작품의 소재로 다루기도 하였다. 그러한 그가 이번에 한국에 와서 인상 깊게 접한 소재는 바로 ‘단색화‘였다.
단색화는 한국 현대미술에서 단색조의 미니멀리즘계 추상 회화 작품들을 아우르는 말로, 2012년 이후 한국어 명칭 ‘단색화’와 영문표기 ‘Dansaekhwa’가 함께 사용되고 있다. 단색화에서 강조되는 물질성과 행위성은 나나에의 작업에서도 중요한 포인트들로, 이를 보다 세밀히 대입해 연구해보고자 영은미술관의 레지던시 기간 동안 작업 및 전시의 주제로 삼았다. 한국에서 제작한 캔버스에 모노크롬 계열로 추상화한 인물과 오브제들을 그려 나갔으며, 단색화에서 영감을 받은 형식적인 실험 외에도 작가는 같은 동아시아 작가로서 단색화가 서구의 모방이라는 일각의 의견에 대한 의문도 함께 내보이고자 하였다.
3개월의 레지던시 프로그램이 끝나고 일본으로 돌아간 작가는 이번 3월 도쿄에서의 개인전을 준비하며 한국에서와는 또 다른 해석의 단색화 작업들을 진행하였고, 이번 전시에서 아울러 선보이게 된다. 한편, 2025년 2월 현재 서울의 아트선재센터에서는 단색화의 대표 작가인 하종현의 초기작을 조망하는 <하종현 5975>전이 열리고 있으며 4월까지 이어진다. 이 전시를 찾아 관람하는 내내 나는 도쿄의 미토베상 작업들을 떠올렸다. 한국과 일본이라는 먼 거리를 이유로 실견하지는 못하고 이미지로 접한 근작들의 실제 느낌을 제작된 지 50년이 훌쩍 지난 하종현의 작품들을 보며 상상해 보게 된 것이다. 두 작가의 작품은 일견 다른 인상으로 보여질 수 있지만, 하종현의 배압법(캔버스의 뒤편에서부터 물감을 밀어내어 물질을 강조한 기법)에서 느껴지는 감각은 미토베상의 작품을 관람할 때의 감각과 분명한 공통점이 느껴졌다. 더불어, 이번 하종현 전시는 작가가 대학교를 졸업하던 해인 1959년부터 대표 시리즈인 접합 연작이 탄생하게 된 직후인 1975년까지를 네 개의 시기로 나누어 선보이고 있는데 전후의 혼란, 도시화 등 각각의 시대적 배경과 어떻게 상호작용하며 발전했는지를 조망하고 있기 때문에 끊임없이 세상의 이슈들과 호흡하며 변화해 나가는 미토베상의 작업 경향을 또 한번 떠올리게끔 하였다. 미토베 작가의 앞으로의 작업은 또 어떻게 변화하고 발전해 나갈 것인가. 앞으로도 꾸준히 기대감과 함께 바라보게 될 것이다. 또한 그가 건드리는 이슈들도 같은 미술인으로서, 또 같은 동아시아의 미술 종사자로서 주의 깊게 주목하게 될 것이다.
見どころ
今回の個展では、「Dansaekhwa(ダンセクファ)」をテーマに水戸部七絵の新しい挑戦を発表します。
テーマ
「Dansaekhwa(ダンセクファ)」とは、1970年代の韓国の芸術家たちによって実践された絵画形式で、モノクローム絵画の意味です。しかし、視覚表現だけではなく、精神やパフォーマンスといった多様な形式と素材を特徴としています。「Dansaekhwa」は日本語で「単色画」と訳されますが、先駆者たちの作品を参照すると、単に色数の少ない絵画という事ではなく、色数を絞ったことで、より物質的に、身体的に体感できる作品が多いように感じられます。
⽔⼾部はこの「Dansaekhwa」を 2024 年末から 2025 年にかけて参加した韓国廣州京畿道のヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスで知りました。これまで水戸部は、多彩な色と、重圧感のある盛り上がった絵の具が印象的な絵画作品を多数発表してきましたが、今回「Dansaekhwa」の見識を深めたことにより、「色数を絞ることで伝えたいことをより強く表現できるのではないか」と新しい挑戦への意気込みを語っています。また、「Dansaekhwa」の先駆者でもある朴栖甫(パク・ソボ)や李 禹煥(リ・ウファン)、鄭相和(チョン・サンファ)の作品が、例えばキャンバスを折り曲げ、それによって生じるひび割れを利用し、絵具を繰り返し塗ったり、剥がしたりすることによって強度のある絵画をつくりあげていることに気づき、「絵画の物質性と行為」という点で、水戸部のこれまでの絵具やオブジェクトの物質性を活かした作品との類似点を見つけ出しました。さらに、1960–70年代の韓国は物資質的にも困窮し、独裁的な政治制度下にありました。そんな状況を背景に、河鍾賢(ハ・ジョンヒョン)は、制作したモノクロの油絵具を麻布の裏面から押し付け「裏ごし」し、あふれ出た絵画表面を、さらに筆でなぞって擦り付ける「接合」シリーズに着手しています。水戸部は、このような彼らの作品の絵具の持つ物質性や、単なる支持体としてではないキャンバスの可能性を追求し、物質性絵画において「身体」という物理的なアナロジーがDansaekhwaを理解する上で極めて重要であると確信した、と語っています。
本展では、色を絞るという新しい試みに加え、物質的、身体的に語り掛ける、より強度のある作品を展開します。
第一期:Study of Dansaekhwa
3月5日- 3月16日
韓国 廣州のヨンウン美術(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスで制作した絵画作品を発表。約3か月のレジデンスでは、Dansaekhwa(単色画)と言っても、単にシンプルな画面を真似るのではなく、水戸部独自のDansaekhwaを目指すべく、少しずつ少しずつ地道に色を減らしながら、抽象化した人物画の習作を50点ほど描きあげました。第一期では、その中から選りすぐりの数点と新作を展示します。

第二期:Dansaekhwa
3月21日- 4月20日
日本に帰国後「Dansaekhwa」の研究と体験をより自身の作品へと昇華させ制作した最新作を発表します。
幅2.5mを超える大作は、絞られた色彩とその絵の具の物質間によって、新たなる水戸部作品の新シリーズを見せてくれるでしょう。第二期では、日本帰国後の最新作、約10点を展示予定です。

作家プロフィール
水戸部七絵 Nanae Mitobe
神奈川県生まれ。画家。現在、ウィーンと日本を拠点に作家活動を行っている。2011年、名古屋造形大学 卒業、画家 長谷川繁に師事。2022年-2023年、ウィーン美術アカデミーに交換留学し、アラステア・マキンブン(Alastair Mackinven)に師事。2024年、東京藝術大学大学院卒業、画家 小林正人に師事する。
主な近年の展示に、「日本現代美術私観 高橋龍太郎コレクション」(2024/東京都現代美術館)、個展「project N 85 水戸部七絵」(2022/東京オペラシティ)、VOCA展(2021/上野の森美術館)個展「APMoA , ARCH vol.18 DEPTH -Blue Pigment-」(2016/愛知県美術館 )など。ほか多数の展示歴や収蔵作品がある。

水戸部七絵のDansaekhwa研究
チェ・ジョンヒ(韓国、ヨンウン美術館学芸室長)
日本の若い作家である水戸部七絵は、日本国内ではすでに大変有名な画家であるが、韓国のキュレーターである私は、勤務しているヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)のレジデンスプログラムを通じて、彼女とその作品を初めて知ることになった。彼女に直接会う前に見たイメージ資料を通して、私は彼女の制作に対し「とても独特で個性豊かな、感覚的な作品だ」という印象をもった。また、彼女がレジデンスプログラムに自身の作品を持ちこまなかったため、私は完成した作品を見るよりも先に、彼女に送られてくる制作用の材料(夥しい量の絵具)を「実際に」みるという経験をした。そしてこれは、今回のプログラムの企画者として特異で印象的な経験となり、彼女の個性的な作風を理解するのに大いに役立つこととなった。それは水戸部が使用する絵具の重さが、その作品に使用されるキャンバスよりもずっと重たいからだ。大変厚い表面と彫りを入れたような立体的なマチエールが、彼女の作品の代表的な特徴の一つである。
厚みのある表面の制作をするために彼女は手袋をはめて、まるでボクサーのような動作でキャンバスに色をのせていったり、筆よりはパレットナイフをたくさん使いながら非常に荒々しく抽象的なタッチを見せてくれる。しかし荒々しい中にも繊細な形態表現、感覚的な画面構成と調和のとれた色彩の塩梅は、作家の生まれもった才能を一目で読み取らせる。しかし、彼女の作業をより一層深いものに感じさせるのは、その向こう側に込められたストーリーとメッセージである。主に顔をテーマに制作してきた彼女は、外見や肌の色などによって引き起こされる問題に対し一種の反旗を翻すメッセージを作品に数多く込めてきた。また、さまざまな国家で起こる社会的なイシューを作品のテーマとして扱うこともあった。そのような彼女が、韓国で強く印象を受けたのがまさに「Dansaekhwa」(ダンセクファ)だった。
「Dansaekhwa」は、韓国の現代美術において、単色調のミニマリズム系抽象絵画作品を包括する言葉として、2012年以降に韓国語の名称の「단색화 (単色画)」と、ローマ字表記の「Dansaekhwa」の二つを併用して使用されている。単色画で強調される物質性と行為性は水戸部の制作作業にも重要なポイントであり、彼女はヨンウン美術館(Youngeun Museum of Contemporary Art)でレジデンスをしていた期間にこれらをより精密に研究するため、単色画を制作と展示における主題と定めた。彼女は、韓国で制作したキャンバスにモノクローム系統で抽象化した人物とオブジェたちを描き、また、単色画からインスピレーションを受けた形式的な実験以外にも、同じ東アジアの作家として、単色画がヨーロッパの模倣だという一部の意見に対する疑問も併せて表現しようとした。
3ヶ月にわたるレジデンスプログラムを終えて日本に帰国した彼女は、今年の3月に東京で開かれる個展を準備するにあたり、韓国で取り組んだものとはまた異なる解釈の単色画制作を進め、この展示で披露することになる。一方、ソウルのアートソンジェセンター(Art Sonje Center)では現在、今年の2月から、単色画の代表的な作家であるハ・ジョンヒョン(河鍾賢)の初期の作品を眺望する<ハ・ジョンヒョン 59-75>展が開催されており、4月まで展示される。この展示を鑑賞する間中ずっと私は、東京の水戸部七絵の制作を思い浮かべていた。韓国と日本という遠距離のために実際に見ることができず、イメージを膨らませていた彼女の最近の作品への実感を、制作されてから50年も経ったハ・ジョンヒョンの作品から想像してみることになったのである。二人の作家の作品は一見すると異なる印象のように見えるが、ハ・ジョンヒョンの「背押法」(キャンバスの裏面から絵具を押し出し、物質を強調する技法)から感じられる感覚は、水戸部の作品を鑑賞する際の感覚と明らかに共通する点がある。併せて今回のハ・ジョンヒョンの展示は、彼が大学を卒業した年の1959年から、代表的なシリーズである「接合」の連作が誕生した直後の1975年までを四つの時期に分けて披露しているが、彼の作品が戦後の混乱と都市化などそれぞれの時代背景とどのように相互作用し発展してきたのかを眺望しているため、この世界のイシューと絶え間なく呼吸し、変化していく水戸部の制作を改めて想起させるのである。作家、水戸部七絵の制作は今後どのように変化し発展していくのだろうか。これからもずっと彼女の制作を期待しながら観つづけるだろう。また、彼女が扱うイシューについても関心をもち、同じ美術家として、同じ東アジアの美術従事者として、彼女に引きつづき注目していくことになるだろう。
미토베 나나에의 단색화 연구
최정희(영은미술관 학예실장)
일본의 젊은 회화 작가 미토베 나나에는 일본 국내에서는 이미 꽤 유명한 화가이지만 한국의 큐레이터인 나는 내가 근무하는 영은미술관 레지던시 프로그램을 통해 작가와 작품을 처음 알게 되었다. 작가를 만나기 전 이미지자료로 먼저 접한 작업의 느낌은 “정말 독특하고 개성 있는, 감각적인 작품이다“라는 것이었고, 작가가 레지던시 프로그램에 작품을 가져오지는 않았기 때문에 나는 작가의 완성작을 실물로 보기 전, 작가에게 배달되어 오는 작업 재료(엄청난 양의 물감)를 더 먼저 ‘실제로’ 접하는 경험을 했다. 그리고 그것은 기획자로서 참 드물게 인상적인 경험이 되었고 작가의 고유한 작업을 이해하는 데에 큰 도움이 되었다. 미토베상이 사용하는 물감의 무게는 대체로 그 그림의 캔버스보다도 훨씬 무겁기 때문이다. 엄청나게 두꺼운 표면과 부조와도 같은 입체적인 마띠에르가 작가 작업의 대표적인 특징 중 하나이다.
두꺼운 표면 작업을 위해 작가는 장갑을 낀 손을 이용해 복서와도 같은 동작으로 캔버스를 칠해나가기도 하고 붓보다는 나이프를 더 많이 쓰기도 하면서 굉장히 거칠고 추상화된 터치를 보여준다. 하지만 그러면서도 전혀 무디지 않은 형태적 표현, 감각적인 화면 구성과 색채의 조화로운 안배는 작가의 타고난 재능을 한번에 읽어낼 수 있게끔 한다. 하지만 이에 더해 그의 작업을 한층 더 깊이 있게 하는 것은 그 너머에 담긴 이야기와 메시지들이다. 주로 얼굴을 소재로 작업해 온 작가는 외모나 피부색 등으로 인해 일어나는 문제들에 대해 일종의 반기를 드는 메시지를 많이 전했으며, 여러 국가에서 일어나는 사회적인 이슈들을 작품의 소재로 다루기도 하였다. 그러한 그가 이번에 한국에 와서 인상 깊게 접한 소재는 바로 ‘단색화‘였다.
단색화는 한국 현대미술에서 단색조의 미니멀리즘계 추상 회화 작품들을 아우르는 말로, 2012년 이후 한국어 명칭 ‘단색화’와 영문표기 ‘Dansaekhwa’가 함께 사용되고 있다. 단색화에서 강조되는 물질성과 행위성은 나나에의 작업에서도 중요한 포인트들로, 이를 보다 세밀히 대입해 연구해보고자 영은미술관의 레지던시 기간 동안 작업 및 전시의 주제로 삼았다. 한국에서 제작한 캔버스에 모노크롬 계열로 추상화한 인물과 오브제들을 그려 나갔으며, 단색화에서 영감을 받은 형식적인 실험 외에도 작가는 같은 동아시아 작가로서 단색화가 서구의 모방이라는 일각의 의견에 대한 의문도 함께 내보이고자 하였다.
3개월의 레지던시 프로그램이 끝나고 일본으로 돌아간 작가는 이번 3월 도쿄에서의 개인전을 준비하며 한국에서와는 또 다른 해석의 단색화 작업들을 진행하였고, 이번 전시에서 아울러 선보이게 된다. 한편, 2025년 2월 현재 서울의 아트선재센터에서는 단색화의 대표 작가인 하종현의 초기작을 조망하는 <하종현 5975>전이 열리고 있으며 4월까지 이어진다. 이 전시를 찾아 관람하는 내내 나는 도쿄의 미토베상 작업들을 떠올렸다. 한국과 일본이라는 먼 거리를 이유로 실견하지는 못하고 이미지로 접한 근작들의 실제 느낌을 제작된 지 50년이 훌쩍 지난 하종현의 작품들을 보며 상상해 보게 된 것이다. 두 작가의 작품은 일견 다른 인상으로 보여질 수 있지만, 하종현의 배압법(캔버스의 뒤편에서부터 물감을 밀어내어 물질을 강조한 기법)에서 느껴지는 감각은 미토베상의 작품을 관람할 때의 감각과 분명한 공통점이 느껴졌다. 더불어, 이번 하종현 전시는 작가가 대학교를 졸업하던 해인 1959년부터 대표 시리즈인 접합 연작이 탄생하게 된 직후인 1975년까지를 네 개의 시기로 나누어 선보이고 있는데 전후의 혼란, 도시화 등 각각의 시대적 배경과 어떻게 상호작용하며 발전했는지를 조망하고 있기 때문에 끊임없이 세상의 이슈들과 호흡하며 변화해 나가는 미토베상의 작업 경향을 또 한번 떠올리게끔 하였다. 미토베 작가의 앞으로의 작업은 또 어떻게 변화하고 발전해 나갈 것인가. 앞으로도 꾸준히 기대감과 함께 바라보게 될 것이다. 또한 그가 건드리는 이슈들도 같은 미술인으로서, 또 같은 동아시아의 미술 종사자로서 주의 깊게 주목하게 될 것이다.