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久野彩子 作品紹介: line

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久野彩子 作品紹介: line

ギャラリー

現在開催中の久野彩子個展「line」より作家による作品解説をご紹介いたします。

《subway map》/ 2020 / アクリル、真鍮


私は日頃から都市の風景に着想を得てそこから出てきた形を、鋳造技法を用いて制作をしています。

今回は人間が創り出してきたもののいろいろな線をモチーフに作品を展開しています。そこから展覧会タイトルも「line」と付けました。

個展《line》展示風景、2020


この部屋にあるのは初めてやってみた新たな展開で、古道具を用いての作品になっています。

金属は普通の状態で置いておくと酸素だったり空気中に含まれる硫黄でだんだん黒ずんでくるのですが、普通の鋳金作品だとそうならないように色留めをしたり、鋳物の変色を抑えるために着色をしたりするのですが、今回この部屋にある作品については金属の素地の色を出したままにしています。

一緒に組み合わせた古道具も最初は新しかったと思うのですが、だんだん経年変化というか使っていくうちにこういった感じの味が出てくるので、金属の作品も色留めをせずにだんだん馴染んでいく・変わっていけばいいかなと思って、敢えてキラキラのままにしてあります。

《35°42′36″N,139°48′39″E》(Skytree)/ 2020 / 箱、真鍮


中央の木箱を組んだ作品には、一番上にスカイツリーがあります。
スカイツリーは一番東京の中で一番高い建物だと思うので、高いところにつけたいなと思ってつけました。

そちらのザルは、古道具を探しているときにザルがあって、鋳造の技法でザルを使って砂をふるったりすることがありまして、これはちょっと目が粗いのですが、ザルという存在がかっこいいなと思い買いました。スカイツリーより東京タワーは地に這っているというイメージがあったのでザルにつけました。

《35°39′31″N,139°44′44″E》(Tokyo Tower)/ 2020 / ざる、真鍮


脚立の作品は最近できた渋谷スカイから見た西新宿の高層ビル群です。モード学園のビルなどがあり表情のある、西新宿方面の風景を表しています。これも高いところにあって、自分が脚立に登れるので上ってそこから見てもいいし、下からみてもいい作品です。

《35°41′22″N,139°41′30″E》(Shinjuku) / 2020 / 梯子、真鍮


レインボーブリッジは車輪、もうこんな車輪が通っているとは思えないんですけれども、昔の車輪にブリッジが合うなというイメージです。

《35°38′11″N,139°45′50″E》(Rainbow Bridge) / 2020 / 車輪、真鍮


扉の作品は都市とは関係ないんですがこの雰囲気がすごいかっこいいなと思いまして、この取っ手の部分がはずされた状態で古道具屋さんに売っていてどんな取っ手がついてたんだろうなと、昔を思い起こさせ、何かを想像させるような作品となっています。

個展《line》展示風景、2020


もう一方の展示室は「都市」というものと「日本」を意識した展示になっています。2020年に展示をするということでオリンピックに絡めた作品をつくれればいいなと感じ制作しました。

最初に中央の作品を説明しておくと、東京オリンピックっと思ったときに、外国からみた日本のイメージってどうなのかなと思い、日本の象徴っていえばやはり富士山だろうなと思い制作ました。

富士山を見ていたときに、頂上まで登ったことはないんですが、地図を見ていてやはり綺麗だなと思いまして、横から見たときの美しさがおそらく富士山の魅力だと思うんですけれども、その形っていうのがすごくきれいだと思ったので自分でその形を平面の地図から立体を起こして富士山を作りました。3776mらしいんですけれども1450mから50メートルメッシュで積み上げていって、頂上まである形にしていきました。

素材はこの銀部分は洋白とかジャーマンシルバーと言われる、昔は銀の代用品として使われていた、ちょっと鈍い銀色みたいな感じで静かなというかそういう色です。前にぐちゃぐちゃっとついているパーツは人間の手がはいったところで、登山道とか自動車道、地図に書かれた境界線、県境や地域の分断線のようなものがあるんですけれどもそういう人間が作っていたような線で、下に行くにつれて樹が生えてもともとの素材が出ているところは斜面で草木が生えていない状態です。真鍮の細かいパーツのところは人間が壊せる範囲というか、壊している部分。壊してしまえるような樹木が生えているところ、実際もう壊しちゃった部分を精密鋳造のパーツで表しています。

個展《line》展示風景、2020


これらの四角の作品は、オリンピックは連想するものを考えたときに、開会式閉会式、表彰式のときに掲揚される国旗がすごく印象的だなと思い制作ました。国旗の縦横の比率は国によって違いがあって、同じ比率で結構まとめられがちな気がしたんですけれども調べていくと正式な比率があってそれに合わせて30か国の国旗がここの部屋にはあります。

その30か国は夏のオリンピックの金メダル獲得総数ランキングで上位30か国までの国の首都をその地図の比率の中に収めています。その地図の中身としては、各国の首都の道路だったり、バスの路線図だったり、地下鉄や鉄道の路線図だったり、水路を抽出して形をつくっています。国によっては地下鉄がなかったりするので国の鉄道網だったり、道をつくりました。

作品のタイトルは頭に2文字の数字とローマ字がついているんですけれどもカントリーコードっていう国名のコードみたいなものが規定があるみたいでそれを作品のタイトルにつけています。

26か国を並べたこちらの作品に関してはそのメダリストの顔、金メダルをとった人の顔写真がずっと出るようになっています。資料をつくったので国によって全部違っているのでみてください。2016年の金メダリストの一覧なので、国によっては昔すごく活躍していたのに今はあまり金メダリストを輩出していない国もあり、人は誰も出てこないところもあります。

個展《line》展示風景、2020


展示室の中央に投影されているのは東京です。
これから開催するので建設ラッシュで建設しているところなどの画像がずっと流れています。

3段に並べて展示しているのは、過去のオリンピック開催国です。
一番上がイギリスで2012年、真ん中がアテネで2004年、一番下が中国で2008年。2000年代の開催地の施設のようすを映しています。オリンピック開催後に開催地に残る施設や財産がレガシーとなってどのように使われているかをスライドショーで流しています。ロンドンに関してはかなり再開発というか廃墟みたいにはなっていなくてまた新たな開発が進んでいるんですけれども、中国とアテネに関してはかなり使われずに廃墟のようになってしまっている。だんだん廃墟みたいになっていってしまっているところがわかると思います。

オリンピック終了後開催地域に残る影響や財産が、よい遺産となるか負の遺産となるか、日本はどちらの道を辿るか、考えるきっかけになればと思いました。

《water and sewerage》/ 2020 / シルバー、真鍮


この2点の丸の作品は、東京との上水と下水道を表しています。右側はシルバーでつくっており銀色になっておりこちらが上水で、左側が真鍮でつくった下水の一部です。一緒なのかなと思っていたんですけれどもかなり密度とかが違って面白いなと思ってつくりました。



久野彩子の個展は今週末まで。
是非この機会に、精密で力強い金属表現に加え、新たな展開を迎えた久野の最新作をご覧ください。

久野彩子 個展 : line
2020年2月7日(金) – 2月24日(月祝) 3月1日(日)









































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