展覧会Exhibition
石田恵嗣 : FLOW
2021年10月8日(金) – 10月24日(日)
この度アートフロントギャラリーでは、日本で初めてとなる石田恵嗣個展を開催致します。
日程 | 2021年10月8日(金) – 10月24日(日) |
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営業時間 | 水~金 12:00-19:00 / 土日11:00-17:00 |
休廊日 | 月曜、火曜 |
作家在廊日 | 10月8日(金)、9日(土)、10日(日)※予定は予告なく変更になる場合があります |
石田恵嗣は1975年千葉県生まれ。日本の大学卒業後に会社勤めをしていたが30歳を転機に絵を描き始める。美術教育をもとめてイギリスに留学しロンドンのチェルシーカレッジを2009年に卒業。2011年にRCAへ進学し2013年に同校を修了した。その後も二年間ドイツに滞在しながらヨーロッパを中心に作家活動を続けてきた。これまで日本での発表の機会は少なく今回が日本での初個展となる。
石田の描くイメージは一見絵本の挿絵のようなどこか懐かしく素朴な印象を持つが、よく見ると現実には起こりえない不思議な物語性が見てとれる。同時に、画面上には絵画としての色や形、描き方の探求が見てとれ、通常絵本には見られない荒々しい筆跡やドローイングのような線も魅力的である。
石田の絵画の最も顕著な特徴はイメージの並置にある。
一見、ノスタルジックな感じを漂わせる独特なイメージは、イギリス40年代から70年頃までに出版された幼児向けの絵本「Ladybird Books」シリーズや、少年少女向けのコミック雑誌などにそのルーツがある。リファレンスとしている挿絵は、もともと幼児教育の意図のために作られたストーリーに準じて描かれたものだっただろう。しかし石田は、その動きや表情などストーリーにおける状況をそのままに、キャンバスの上に移し替え、そこに、また別のリファレンスからもたらされたイメージ(オリジナルとは違うシチュエーション)を用いこれに並置させる。
この脈絡のない並置が、そのキャラクターと状況に全く異なる物語を生み出すこととなる。脈絡のないもの同士の組み合わせは、主にシュルレアリストが精神分析や無意識を引き出すために好んで用いた手法だが、石田のそれはこれらとは違っている。石田の絵画の中に時折妖怪などファンタジー的な要素が登場することもあるため、魔術的リアリズムの様にとらえられることもあるが、これも違っているといっていいだろう。というのも、上記のどちらもあくまで現実をベースにして、シチュエーションの一致しない異なるイメージ同士の並列を用いてわかりやすい非現実的なイメージを作り出しているからだ。石田のイメージの元はあくまで絵本であり現実ではない。誰かの作り出した何かしらのストーリーや状況をほかのもう一つの切り離された世界感と並列に置き、知っているようで知らない世界を作る。これは、従来の東西の美術や小説よりもむしろアニメや漫画、またはSFに近い、一種のif(もしもの)ストーリーであり、ここにかつてのシュルレアリストとは違う現代性が見てとれる。
もともとのストーリーにおける意味や役割を失ったキャラクターと状況を示唆するイメージは、観る者の経験をもとに全く違うストーリーとして解釈を委ねられる。ある意味オープンエンドな絵画であるといえるかもしれない。そこには、シュルレアリストが求めた不自由な自由(予期された意外性)はなく、作者も意図しない新たな組み合わせと読まれ方が存在するだろう。
今回の個展では、2枚一組の作品を6組程度と大判の新作絵画2点を発表する。石田の新しい試みは、2枚の絵画を並列に置くことで、2コマのイメージを作り、絵画1枚で見てとれるシチュエーションに、時間を加えることで、さらに複雑な物語性を呼び込むことである。あくまで静止画である絵画はこれにより映像的な時間の流れの側面もはらむようになり、そのストーリー展開は観る者の持つ経験によって異なる変化を作り出すことになるだろう。
これまで日本で見ることのできなかった稀有な才能が生み出す新しい物語をこの機会に是非ご覧ください。
石田の描くイメージは一見絵本の挿絵のようなどこか懐かしく素朴な印象を持つが、よく見ると現実には起こりえない不思議な物語性が見てとれる。同時に、画面上には絵画としての色や形、描き方の探求が見てとれ、通常絵本には見られない荒々しい筆跡やドローイングのような線も魅力的である。
石田の絵画の最も顕著な特徴はイメージの並置にある。
一見、ノスタルジックな感じを漂わせる独特なイメージは、イギリス40年代から70年頃までに出版された幼児向けの絵本「Ladybird Books」シリーズや、少年少女向けのコミック雑誌などにそのルーツがある。リファレンスとしている挿絵は、もともと幼児教育の意図のために作られたストーリーに準じて描かれたものだっただろう。しかし石田は、その動きや表情などストーリーにおける状況をそのままに、キャンバスの上に移し替え、そこに、また別のリファレンスからもたらされたイメージ(オリジナルとは違うシチュエーション)を用いこれに並置させる。
この脈絡のない並置が、そのキャラクターと状況に全く異なる物語を生み出すこととなる。脈絡のないもの同士の組み合わせは、主にシュルレアリストが精神分析や無意識を引き出すために好んで用いた手法だが、石田のそれはこれらとは違っている。石田の絵画の中に時折妖怪などファンタジー的な要素が登場することもあるため、魔術的リアリズムの様にとらえられることもあるが、これも違っているといっていいだろう。というのも、上記のどちらもあくまで現実をベースにして、シチュエーションの一致しない異なるイメージ同士の並列を用いてわかりやすい非現実的なイメージを作り出しているからだ。石田のイメージの元はあくまで絵本であり現実ではない。誰かの作り出した何かしらのストーリーや状況をほかのもう一つの切り離された世界感と並列に置き、知っているようで知らない世界を作る。これは、従来の東西の美術や小説よりもむしろアニメや漫画、またはSFに近い、一種のif(もしもの)ストーリーであり、ここにかつてのシュルレアリストとは違う現代性が見てとれる。
もともとのストーリーにおける意味や役割を失ったキャラクターと状況を示唆するイメージは、観る者の経験をもとに全く違うストーリーとして解釈を委ねられる。ある意味オープンエンドな絵画であるといえるかもしれない。そこには、シュルレアリストが求めた不自由な自由(予期された意外性)はなく、作者も意図しない新たな組み合わせと読まれ方が存在するだろう。
今回の個展では、2枚一組の作品を6組程度と大判の新作絵画2点を発表する。石田の新しい試みは、2枚の絵画を並列に置くことで、2コマのイメージを作り、絵画1枚で見てとれるシチュエーションに、時間を加えることで、さらに複雑な物語性を呼び込むことである。あくまで静止画である絵画はこれにより映像的な時間の流れの側面もはらむようになり、そのストーリー展開は観る者の持つ経験によって異なる変化を作り出すことになるだろう。
これまで日本で見ることのできなかった稀有な才能が生み出す新しい物語をこの機会に是非ご覧ください。