プロジェクトProject
Gallery's Picks for the Month (猿楽祭特集)
ギャラリー
11月6日、7日に開催される猿楽祭代官山フェスティバル関連イベント「'80s→NOW ART FAIR 80年代から現在までのコレクションより」の出品作家、作品を一部ご紹介します。
オンラインでもご予約を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。詳細をお伝えさせて頂きます。(メールでのお問い合わせはこちらをクリック )
【出品予定作家】順不同
川俣正 / 磯辺行久 / 康夏奈 / 角文平 / 藤堂 / 原田郁 / 冨安由真 / 石田恵嗣 / 中谷ミチコ / 大岩オスカール / 大巻伸嗣 / 河口龍夫 / 竹中美幸 / ロイ・リキテンシュタイン / ロバート・ラウシェンバーグ / アントニオ・サウラ / アント二・タピエス / ウィフレド・ラム / ジョアン・ミロ / エステル・アルバルダネ / 粟津潔 / 管井汲 / 元永定正 / 谷川晃一 / クリスト&ジャンヌ=クロード / ジョゼ・デ・ギマラインシュ / ジミー・ダーハム / 黒木周 ほか
※出展作家は予告なく変更になる場合がございます。ご了承ください。
川俣正
1982年にベネチアビエンナーレ日本館の建物にインスタレーションを設置して以来、世界を舞台に活躍する川俣の作風は「製作プロセスそのもの」も作品であると示している。川俣の手がける主に都市を舞台とした大がかりなプロジェクトではアパートや公共空間に材木を張り巡らし、空間そのもののとらえ方を作品として見せている。川俣は与えられた場所の歴史的意味を掘り下げることでその場所にしか成り立ち得ない作品を構想し、作品設置を通じて新たな風景を提示する。瓦礫その他、多様な方法で集められた素材を使った制作プロセス全体が作品化され、プランドローイング、マケット、フォトドキュメントなどが残されていく。川俣の仕事は常に現在進行形であると同時に、実践の記録がアーカイブされていく点でもユニークだ。
2017年の猿楽祭で公開した川俣正のインスタレーション《「工事中」再開》はヒルサイドテラスのルーフトッププラン。これは80年代に大量の木材でヒルサイドを覆ったがほどなく撤去させられた経験へのリベンジでもあったが、このときに制作したマケットはバルサの軽妙なリズム感が川俣らしい作品となっている。
川俣正 個展「『 工事中 』 再開」2017、アートフロントギャラリー
康夏奈
康は風景を描くのに、実際にその場所で行った身体的体験をもとに描いている。山に登ったり海に潜ったりという経験は身体に記憶として刻み込まれ、その記憶をもとに風景を操作するというプロセスを辿る。瀬戸内国際芸術祭2013年に発表した《花寿波島の秘密》という逆円錐形の作品は、まさにパノラミックな視点を備えたものであり、この芸術祭を代表する作品として高い評価を受けた。11月13日~東京都現代美術館で開催されるコレクション展でも、絵画のインスタレーションやドローイングなどの特別出品を交えた、康の作品が展開される予定になっており、こちらの展示も必見だ。
身体ごと包み込まれるような大型作品だけでなく、小さな作品にも自然に対する康の温かい眼差しが感じられる。ドローイングするスピードに追い付いていくためには、絵筆よりもオイルパステルを好んだ。今回の猿楽祭の展示でもいくつかの小作品が並びます。
《花寿波島の秘密》 瀬戸内国際芸術祭2013 展示風景
藤堂
デュッセルドルフ芸術大学に入学し、ダニエル・ビュレン教授よりマイスターシューラー(M.A.)取得した 藤堂は、ベルリン、ケルンといった歴史ある場所を辿っては石を拾い集め作品化し、ガラスを挟み込んだ内部に時間を封じ込めた。帰国してからはこうした時間は主に都市の新陳代謝、つまり工事現場の瓦礫やそこにある石などに向けられ始めた。2020年の展覧会では、筑豊炭鉱の「ボタ」を集めてインスタレーション。最近では海外のファッションショーでの作品コラボなど活躍の場を広げつつある。
藤堂 個展「筑豊ボタ」2020、アートフロントギャラリー
冨安由真
10月30日より金沢21世紀美術館で個展を開催する注目の作家!
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=45&d=1794
冨安由真は、我々の日々の生活における現実と非現実の狭間を捉えることに関心を寄せて創作活動をおこなう作家。科学によっては必ずしもすべて説明できないような人間の深層心理や不可視なものに対する知覚を鑑賞者に疑似的に体験させる作品を制作。大型インスタレーション作品では、そこに足を踏み入れた鑑賞者は、図らずも自分自身の無意識の世界と出会うかのような体験を得るかもしれない。
資生堂ギャラリーで話題になった直後にアートフロントギャラリーで個展、古い家具に囲まれた空間で生きた蝶も展示した。ギャラリーとしては芸術祭で培った設営技術を使い主に冨安のインスタレーション作品をサポート。東京アートフェア、3331アートフェア、市原、KAAT、21美での大型の展示で常にサポートし2人3脚で進んできている。今後もいくつかの企画展に招聘されている。
冨安由真 個展「Making All Things Equal」2019、アートフロントギャラリー
中谷ミチコ
中谷ミチコはドイツのドレスデン造形芸術大学修了後、現在三重県にアトリエを構え制作活動を行っている。彫刻をつくる鋳型の内部に彩色して樹脂を流し込むことでネガをポジとして存在させる独特のレリーフは注目を集めファンも多い。2020年には東京メトロ銀座線虎ノ門駅に幅9mのパブリック彫刻「白い虎が見ている」を設置し、中谷独自の技法による立体表現と、その迫力が大きな話題となった。また今年7月には、新潟県・越後妻有里山現代美術館 MonETのリニューアルオープンに際して、レリーフ作品《遠方の声》を発表。複数点新設されたコレクション作品の中でも高い人気の作品となっている。中谷にとって8月のアートフロントギャラリーでのドローイング展も好評を博した。
中谷ミチコ 個展「引き出しの中のドローイング」2021、アートフロントギャラリー
ロバート・ラウシェンバーグ
20世紀のアメリカの美術家。抽象表現主義に対抗するコンセプチュアル、ネオダダの旗手として活躍、ジャスパー・ジョーンズとともにアメリカの代表的な作家となり、後のポップアートの隆盛にも重要な役割を果たした。日本では1980年代のアパルトヘイト否!に賛同して「WORLD ARTIST AGAINST APARTHEID」の文字を自ら書いたコラージュを作成した。これは、ラウシェンバーグが生涯にわたって、多くの人々(パフォーマー、版画家、エンジニア、作家、美術家、職人たち)とのコラボレーションを愛し、そうした共同作業の中から彼自身のアーティストとしての哲学を育んでいったことと無関係ではない。いつも社会の動静に目を向け、現在だったら「black lives matter」に対してアートで反応したかもしれない。 そのような社会批評の眼で作られたアパルトヘイト否!の作品を間近でご鑑賞ください。
粟津潔
映画や美術雑誌を参考に戦後独学で日本を代表するグラフィックデザイナーとなった粟津潔。1955年のポスター作品《海を返せ》が日本宣伝美術会賞を受賞して以来、原水爆禁止のアピールや韓国民主化運動を支援するポスターなど、作品を通して“社会をいかにデザインするか”を問い続けてきた。
ヒルサイドテラスのサイン計画に当初から加わり、色とりどりのサインを設置、サインデザイン賞を受賞。建築家やクライアントとのコラボレーションを継続して制作してきたというご縁があり、アートフロントにはシルクスクリーンの作品が多く残されている。
「私はすべての表現分野の境界を取り除いて、階級、分類、格差とかも全部取り除いてしまいたい」と語っていた粟津はベンシャーンや北斎の影響を受けながらも独自の世界をくりひろげ、2014年には金沢21世紀美術館で「粟津潔、マクリヒロゲル」展を開催した。
ジョアン・ミロ
1893年スペインのバルセロナに生まれ、同地の美術学校を中退後、バルセロナのガリ美術学校で本格的に絵画の勉強を始める。1918 年バルセロナで最初の個展を開催。彼の芸術は生地カタルーニャの歴史と風土に深く結び付いている。 1919年パリに出て、1924 年にシュルレアリスム運動の主唱者であるアンドレ・ブルトン、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアールらと知りあい、シュルレアリストの 一員となり、幻覚的、オートマティスム的絵画を経てオブジェや コラージュを試みる。1936 年に始まったスペイン内戦に刺激を受け て、描かれた壁画の大作『刈り入れ人』(逸失)を1937 年パリ万国 博覧会スペイン共和国館に発表。1940~42 年第二次大戦の戦火のさなかに天上的な霊感と美をもつ『星座』を連作。星、女、鳥などの象形文字的形象を駆使して、幼児的天真爛漫と絶妙な技術と の結び付いた詩的絵画をつくる。大戦後は彫刻、陶器、版画にも 優れた作品が多い。故郷のバルセロナにミロ美術館がある。1983 年マジョルカ島 で没する。
クリスト&ジャンヌ=クロード
都市の建造物や大自然を梱包する作風で知られてきたが、60年代より建物を梱包するなどプロジェクトは一層大がかりなものとなってきた。1991年に日本の茨城とカリフォルニアで行われたアンブレラの開催をアートフロントギャラリーがサポートし、その縁でドローイングやリトグラフなどを扱うようになった。そして、今年2021年10月には二人の念願でもあったパリ・凱旋門を包むプロジェクト「L’Arc de Triomphe, Wrapped, Paris (1961-2021)」が実現し、話題となった。
今回出品されているのはパリのポン=ヌフ・プロジェクトのサイン入りポスター。クリストとジャンヌ=クロードの手掛けたプロジェクトの中でも多くの人が実際に往来できるものとして記憶に残っている。パリのポンピドーセンターで昨年展示された資料によれば、アーティストとして、どのように梱包する布が周囲の光を集めるか、といった美的な要素はもちろん重要だったが、それ以上に、行政や地権者を説得して、プロジェクトを受け入れてもらい、梱包作品の支持体に布を取り付ける許可を得るというプロセスに多くの時間が費やされたという。2週間のポン=ヌフ・プロジェクトの間、人々は皆その橋を徒歩で渡りながら作品の本質を体感することができ、理解を超えた感動へと繋がっていった。
ジョゼ・デ・ギマランイシュ
1939 年ポルトガル、ギマランイス生まれ。およそ30年ほど前からアートフロントとの親交があるポルトガ ルを代 表 する現代美術作家であり、絵画、彫刻、パブリックアートなど多分野で活躍。リスボン万博、ポルトガル領マカオの中国への返還等の国民的イベントでモニュメントやロゴマークのデザインを手掛けたことでも知られている。また、非西洋文明圏における文化の交差に強い関心を示し、自身の作品テーマに取り入れるほか、アフリカ、ラテンアメリカ、中国などのプリミティブアートの熱心なコレクターでもある。日本国内でも、ファーレ立川、代官山アドレス、釧路シビックコア、宮城県図書館、十日町文化ホール、越後妻有・大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭など、各地で彼のパブリック・アートが親しまれている。
猿楽祭代官山フェスティバル関連イベント
「'80s→NOW ART FAIR 80年代から現在までのコレクションより」
会期:2021年11月6日(土)、7日(日)
開場:アートフロントギャラリー1F、2F(東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A棟)
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