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カネコタカナオ:二次元派展

カネコタカナオ:二次元派展

2022/08/24

カネコタカナオが開催中の展覧会「二次元派展」に参加しています。(カネコについては こちら)

この数年、SNSをきっかけに東アジアで爆発的な人気を獲得している日本のアーティストたちがいることを、多くの日本人はまだ知りません。彼らとそれを取り巻くアートシーンを本展覧会で初めて「二次元派」と名づけ、およそ30名のアーティストによる100点を超えるアート作品によって、日本のアートの現在地、そしてアジアの若者に共通する感性や時代感覚を読み解く試みとして本展は開催されました。

約20年に渡り東アジアの現代アートシーンを間近に見続け、現代美術史を研究してきた沓名美和は今日の日本現代美術の変遷を検証し、本展を通して、現在のポップカルチャーに根差した新しい表現者と、彼らを取り巻く文化・現象に焦点をあてています。

■ ■ ■二次元派展■ ■ ■ ■ ■ 
●第1会場
代官山ヒルサイドフォーラム(東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟)
8.24(wed.) - 8.28(sun.)

●第2会場
N&A Art SITE(東京都目黒区上目黒1-11-6)
8.24(wed.) - 10.1(sat.)

-- (8.24 – 9.3) 第1期テーマ
CHARACTER=キャラクター、少女の姿を借りた表現者たち=
小田望楓、金澤シュウ、きゃらあい、さめほし、サワダモコ、中居ベル、野澤梓、東麻奈美、宏美、まつもとこうじろう

-- (9.6 – 9.24) 第2期テーマ
HYPE =時代を映す表現者たち=
天野タケル、奥田雄太、カネコタカナオ、橋本ユタカ、BYNAM、Hogalee、森洋史、山口つばさ、山口真人、山口歴、Rooo Lou予定

--(9.27 – 10.1) 第3期テーマ
NEW HORIZON =実験から拡張へ=
大澤巴瑠、木原健志郎、木原幸志郎、杉田万智、suma、西村昂祐、フカミエリ、渡邊涼太予定

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カネコタカナオ 展示風景@ヒルサイドフォーラム

カネコタカナオの作品に登場するキャラクターは、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で描かれる。近年の作品はさらに、タイポグラフィーや幾何学模様、そして実際のコミックのコラージュを層構造で構成した新たなスタイルとして完成させている。

インターネットの領域が社会全体に広がり、日常にSNSが浸透するとともに私たちはその利便性だけでなく、匿名性から生まれる誹謗中傷やヘイト、極端な正義、陰謀論といったある種の弊害とも付き合わざるを得なくなっている。偏った情報や発信を「ノイズ」と捉えて無視することもできるが、カネコは人間が処理しきれない過度なノイズの在り様に強く興味を持ち続けている。

様々な姿で描かれるモンスターのキャラクターは、そうしたノイズに晒されたときに生じる人間の二面性を表現しているのだという。モンスターは鋭利な牙やむき出しの眼球が恐ろし気に描かれているものの、どこか自滅的で滑稽さを滲ませているのが印象的だ。リアルな社会とネットの世界で自身のキャラクターを使い分ける人間の複雑性や、膨大な情報を受け止めるうちに偏った思想を強固にしてしまう様子などSNSのなかで変容していく人間性を取り上げて、モンスター化していくキャラクターと重ね合わせている。

社会システムと人間の進歩スピードが乖離していくことで人間側がシステムのコントロールを失っている状態や、感覚の共有が進むことで個性を放棄していくだろう人間社会の未来予想図など、扱うテーマはシニカルだが、独特の諧謔的表現からは強い社会批判は感じられない。それよりも、どこか可愛らしく憎めないキャラクターを通して、人間社会への強い好奇心と深い親しみを感じることができる。(沓名美和 / 現代美術史家、アーティスト、キュレーター©︎kutsuna miwa)

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