金氏徹平 Teppei Kaneuji
金氏徹平《White Discharge (Figure)》
これまで、プラスチック製品やフィギア、雑誌やマンガの切り抜きなど、身のまわりの事物を素材に、部分を切り抜き繋ぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作してきた金氏徹平。その表現形態は彫刻、絵画、映像、写真、舞台美術など多岐にわたり、一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求しています。近年では舞台にも積極的に関わり『tower-(THEATER)』(KYOTO EXPERIMENT/2017、Bankart/2017、六本木アートナイト/2018)では自身の映像作品を舞台化する形で演出を手掛け、セノグラフィー(舞台美術)として演劇ユニット チェルフィッチュとともに発表した作品、劇場版『消しゴム山』(KYOTO EXPERIMENT/2019)・美術館版『消しゴム森』(金沢21世紀美術館/2020)・配信版『消しゴム山は見ている』(2020)では同一テーマの作品を鑑賞形式を変えて発表するなど、表現の領域をますます拡張しています。
今回のアートフェア東京では、金氏の代表作の一つともいえるWhite Dischargeシリーズより、 フィギアの作品を出品します。White Dischargeシリーズは、まったく異なる物語や性質をもつありふれた日用品を用い、それぞれの形状を変えることなく積み上げ再構築したうえで、表面を白い樹脂で覆う作品シリーズです。個々の物体が持つ本来の意味が無視され繋げられた日用品は、白い樹脂で覆われることで「個体」の定義の曖昧さ、共存する複数のものの境界の曖昧さを視覚化させます。
角文平 Bunpei Kado
現在開催中の岡本太郎賞をはじめ、瀬戸内国際芸術祭、いちはらアートミックスおよび個展を含む自らの活動の中で、家(住環境)をテーマに作品を展開してきた角文平。今回のアートフェアでは生活空間の中にある物たちの本来の姿からの僅かなズレを面白おかしく表現した作品群を紹介します。
角文平《Tokyo Galaxian》2020、725x510mm、写真にアクリル絵具、ドローイング
この作品はTVゲームの創世記に人気を博したインベーダーゲームがモチーフになっていますが、よくみてみるとその中心にある戦闘機はなんと東京タワーです。この作品は第一号を2006年に作っていますが、その時はインベーダーゲームの戦闘機が東京タワーに似ているという事で作った物でした。
本作の青い光に包まれた東京タワーは、2020年のコロナ禍に医療従事者のための特別な照明パターンとして灯された時のものです。新型コロナは人類がおよそ100年ぶりに迎えた全世界共通の試練となりました。その未曾有の被害は作家にとってまるで未知の存在(インベーダー)からの侵略のように見えたといいます。緊急事態宣言下の東京で一人この作品を再現するために街に出た角は東京タワーが再び戦闘機に見えたといいます。この作品はポップな表層とは裏腹に当時の医療従事者と新型コロナの戦いをイメージしたものになりました。
カネコタカナオ Takanao Kaneko
カネコタカナオ《SO》2021、650x500x30mm、アクリル、キャンバスボード、アクリル板、マンガ
カネコタカナオ《TW》2021、650x500x30mm アクリル、キャンバスボード、アクリル板、マンガ
カネコは、武蔵野美術大学を卒業後2009年からキャリアをはじめ、落書きに根差したグラフィックな線や文字、キャラクターで構成された作品を生み出しています。彼のルーツは幼少期に親しんだ80年代の日本の漫画で、その当時から描くということと書くという行為を同列の価値を見出し、モノクロにこだわった輪郭の強いグラフィックを生み出しています。2017年のアートフロントギャラリーでの個展からコンピューターのキーボードのピースを用い、デジタル化が高度な発達を遂げた現代社会において、膨大な情報にさらされた人々が感じる漠然とした不安をテーマにした作品を展開。ときに現れるモンスターや溢れんばかりの量のキーボードのピースは、膨大な情報があふれる昨今において、もはや人間が処理しきれなくなり、ひとりでに動き出す信号のメタファーの様です。一方でカネコは、作品に80-90sに世界中で親しまれたヴィデオゲームのコントローラーやラジコンの送信機などのガジェットもしばしば引用しています。これらはまだデジタルの黎明期、コンピューターの持つ可能性を当時のキッズたちにわかりやすく示してくれた存在でした。グラフィックも音もローファイでありながらも、足りない情報は彼らの想像力が十分に補っていた。そんなデジタルがまだコントローラブルだったころの追憶と郷愁をカネコは示していると言えるでしょう。
「アートフェア東京 2022」
2022年3月10日(木) − 13日(日)(※3月10日(木)は招待制)
ぜひ、アートフロントギャラリーのブース【N054】にお立ち寄りください。