展覧会Exhibition

春原直人 個展
≪Underneath≫ h2500 x w3900mm 和紙、岩絵具、墨 VOCA展2021出品作品

  • 春原直人 個展

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春原直人 個展

2021年6月25日(金) – 7月25日(日)

この度アートフロントギャラリーでは、春原直人の個展を開催致します。
日程 2021年6月25日(金) – 7月25日(日)
営業時間 水~金 12:00-19:00 / 土、日、祝 11:00 - 17:00
休廊日 月曜日、火曜日
春原(すのはら)直人は1996年長野生まれ、東北芸術工科大学大学院を修了後も山形にアトリエを構え制作を続けています。アートフロントでは2年ぶり2回目の個展を行います。最初の個展は2019年、当時まだ大学院生ながら2つの会場に収まり切れないほどの、伸びやかで力強い絵画を披露し、多くの美術ファンに将来を嘱望されました。卒業後もクマ財団の奨学生として継続的に支援を受け、数々のグループ展に招待されるなど作家として良いスタートを切ろうとしていましたが、その矢先にコロナ禍という思いもよらない大きな時代の変わり目に直面することを余儀なくされました。3度にわたる緊急事態宣言、それに伴う主要美術館への休業要請など美術界も翻弄され続けています。しかし、作家はこの状況下にも全く動じずに己の求める表現に向かって描き続けています。

巧みな技術と粗削りな表現を両立させるバランス感覚を持つその実力は、多くの美術関係者を魅了し続けています。前回の個展で発表した《蒼連》以降の作品においては、これまでの雄大な山の形が見てとれる遠景ではなく、より抽象的で身体的なストロークに重点を置いて描かれた近景の山(もしくは山の一部)を描いています。

今年は年明けから美術手帖の2020年代を切り開くニューカマーアーティスト100の中でも大きく取り上げられました。その後3月に開かれた若手作家の登竜門VOCA展2021では2名の推薦員から推されての出品となり、その注目度の高さを改めて証明しました。同賞は過去に福田美蘭や、小林正人、奈良美智、村上隆らその後もスター作家を生み出しています。また55歳以下の中堅作家を対象にした日経日本画大賞展にも二十代という若さで入選、こちらも2名の推薦員からそれぞれ別の作品で推薦されるなどまさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。

この度、春原は満を持して、自身卒業後初となる個展を行います。これまでと同様に山中に分け入るというフィールドワークの中で己の体を通して感じ取った存在を、大画面に身体的な表現として落とし込む新作平面を10点以上発表する予定です。また作家は今回1枚1枚の絵を魅せるだけでなく、展示空間自体を通して「山」を表現したいと意気込みます。山という単純な2音の発語では表しきれない多様な存在を、作家はどのように表現し、経験させてくれるだろうか、若い作家の野心的な試みに期待が膨らみます。

《Consist》 2021 / 各220×173cm / 和紙、岩絵具、墨


イメージの向こうにあるもの
大野正勝 (川崎市市民ミュージアム館長)

 春原直人は東北芸術工科大学大学院在学中から積極的に発表をつづけ、今年、若手の登竜門とも称されるVOCA展と若手中堅作家を奨励する日経日本画大賞展にそれぞれ推薦されるなど、注目株として一気に躍り出ることになった。作品は、自身の登山体験と山で描いたスケッチなどに基づいて制作された山岳風景。それらには以下のような3つの傾向がありそうだ。
 今年3月の「VOCA展2021」の出品作で本展にも出品される《Underneath》のように黒々とした岩と残雪によって勇壮な山容に描き上げられたもの。霧に包まれるかのような深みのある混沌とした空間にどこか不安を抱かせるもの。そのどちらにも属さず(あるいは両方の要素を含み)新たな表現の始まりを求め自身との格闘から生まれ出た抽象的な傾向のもの。

 VOCA展会場で《Underneath》を見ながら、山の姿を写すことを当たり前に考えていたが、それが「当たり前でなくなった」という春原の言葉を思い出した。創作とは、様々なものが停滞するなかで思いがけない要因と蓄えられた経験から生まれ出た新しい何かが展開してゆくことかも知れない。
 出品作の一つ《Levitating》には、水墨画の基本的な筆法である破墨や溌墨の技法が用いられ、刷毛跡が重なり合い濃淡を含みながら様々なイメージが生まれている。意図的に画面に下ろした刷毛が生み出すイメージの断片と自我や意図が排された刷毛跡が作り出す断片が混ざり合う。リトグラフによる表現を想起させるものなどもあり多彩だ。豊かな絵画空間が醸し出されている。こうしたイメージの断片の一つひとつは、自身の内にある感覚、体験、観念などを動員しながら山についての思索を繰返し、山に対する深く精神的なイメージを求めようとした結果と言えるものだろう。どの作品も時間をかけて見てみたい。
 本展の出品作では、山とは何なのかという春原自身の自問自答による「了解」が一つひとつのイメージに置換えられ、画面に印され、互いに絡み合いながら独創的な小宇宙を見せる。一つひとつの作品をじっくり眺めると、どれも見る者を日常ではない別の景色のなかへと連れてゆくかのようだ。
 そう感じるのは、墨色の刷毛跡による混沌としたイメージの向こうに何かを見出したいという人間の本能によるのか、それとも記憶に仕舞われた景色をそこに投影したいという思いによるのだろうか。やがて、絵画が持つ豊かなイメージの広がりと想像の時が流れ始める。

《Levitating》 1000 x 800 x 30 mm 和紙、岩絵具、墨

《Retrograde》 650 x 530 x 30mm 和紙、岩絵具、墨

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