コンテンポラリー作家
角文平 ≪Floating Islands #03≫ 2021, ベニヤ板、MDFに塗装、キャップボルト, 900x900x75mm
角文平(b.1978) の作品の本質は日常に在るありふれたものをパズルのように組み合わせることで、本来の物が持つ機能や内容をずらし、新たな意味を生じさせることにあります。現在、アートフロントでは、昨年のSanwacompany Art Awardで発表されたボルダリングシリーズの最新作を展示しています。ビビッドでカラフルなボルダリングのホールドを用いて表現された浮島たちは、現代社会の持つ住宅問題を背後に持ちつつも、明るく楽し気な風景として未来ある子供たちのために作られているかのようです。家族でだんらんするリビングや、子供部屋にフィットする、共に生活できる現代美術です。
角文平 ≪Floating Islands #04≫ 2021, MDFに塗装、キャップボルト, 410x140x47mm
西咲知美(西澤知美) ≪MRI inside head #02≫ 2015, バックライトフィルム、LED テープ、 ガラス 、木, 960x880x100mm
西咲知美は「現代における美容の在り方」をテーマにコンテンポラリーアートの分野で作品を制作している現代美術作家です。美容が医療と一層不可分になっている現代において、西澤の作品はそのような身体における美を形象的、観念的なレベルにおいて介入することで追及し、また身体の境界を問いただします。この作品でも美と医療の曖昧な境界線を呼吸するように点滅するチークと脳のMRIスキャンの画像を持ちいて絶妙に表現しいています。
昨年の個展、3月のアートフェア東京でもコレクターに人気があり、今後は自らがプロデュースする店舗の計画があるなど注目の作家と作品になります。
戦後のポップな作品
クレス・オルデンバーグ ≪Voting Button in a Landscape≫ (A.187) 1984, リトグラフ, 762x584mm
60年代アメリカのポップアートの旗手のひとりで、野外に置かれた巨大な彫刻で知られています。大量消費社会を象徴するような日常の見慣れたオブジェのスケールを引き延ばすことによって全く違う存在感を与えています。実際の作品のほか、ドローイングや設計図があります。この作品のモチーフである、「Voting button=投票ボタン」 とは、オンラインで投票できる押しボタンと、ドローイングにあるような針と糸で縫い付けられたボタンの二つの意味をかけあわせているようです。実際、ジェンダーや反戦など様々な社会問題に対して一票を投じることの大切さをユーモアたっぷりに伝えているのではないでしょうか。ファーレ立川(1994)では、オルデンバーグが設置した巨大なリップスティックを見ることができます。世界的な巨匠の作品をぜひこの機会に。
菅井汲 ≪VARIATIONS-4≫ 1995, リトグラフ, 650x500mm
菅井汲(1919-1996)はデザイナーとして出発した後にパリに移り住み、絵画や幾何学的なモチーフを中心とした版画で人気を博しました。愛車のポルシェでスピード走行を楽しみ、道路や道路標識を描いた作品も多く残されています。晩年には「S」字のシリーズを描き続け「S」は「スガイ」の「S」であるとともに、高速道路のカーブをも意味しているそうです。
いまだに古さを感じさせない先鋭的なデザインを所有してみるのはいかがでしょうか。
菅井汲 ≪スクランブルC≫ 1976, シルクスクリーン, 405×285mm
Ay-O ≪レインボーI I≫ 1980, シルクスクリーン, 530×700mm
1931年、茨城県に生まれた靉嘔は、1950年代明るい色彩の油彩画を発表し注目されました。その後ニューヨークに渡り、「フルクサス」のメンバーとしてオノ・ヨーコやナム・ジュン・パイクらと共に活動します。やがて、線で描く絵画の代わりに、モチーフにスペクトルを重ねる「虹」の作品が生まれ、ヴェニス・ビエンナーレでの発表等を経て、靉嘔は「虹のアーティスト」として注目を集めました。版画やペインティングなど様々なメディアで虹のシリーズを展開してきましたが、今回の作品は1971年の《ジャンケンポン》と1981年の《レインボーII》。どちらも円熟期のシルクスクリーンとして貴重な作品です。
Ay-O ≪ジャンケンポン≫ 1971, シルクスクリーン, 725×543mm