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ART SG (シンガポールのアートフェア)開幕
2023/01/11
いよいよ開幕するART SGに、原田郁と角文平が参加しています。
原田郁は、ここ10年来、コンピュータならではの自由な視点で切り取ったCGの世界(彼女はそれを自分の内なる世界と呼んでいる)をモチーフにしています。今回も、シンガポールを舞台にした動画を展示していますが、一方でその遠景を切り取れば風景画になり、逆にごく近景を切り取れば色面を使った抽象画になります。
また近年、原田はCG映像や絵画による平面作品にこだわらず、だまし絵的な要素を含むインスタレーションも展開しています。こうした展開は、日本における原田の地位を確立し、近年では六本木アートナイトやICCでのグループ展など、広く作品を発表しています。1月3日からは東京・渋谷駅構内の吹き抜け空間ガラス面にも作品が設置されます。
一方、角文平は、日常の微妙なニュアンスのエッセンスをとらえ、独特のユーモアで作品化する新進気鋭のアーティストです。角の作品の真骨頂は、ありふれた日常品をパズルのように組み合わせることで、本来の機能や内容をズラし、新たな意味を生み出すことにあります。
角が使用する道具や物は、一見ごく普通の日常生活の一部に見えますが、それらは作家自身の手によって、その時々に生み出された想像上の形なのです。それらは、私たちが信じている日常の姿を投影したものです。それが社会から植えつけられた思い込みに過ぎないことを知らされるのは、本物と並べたときだけであり、この驚くべき状況を生み出しているのは、作家の1ミリの妥協も許さない高い職人技といえます。この高い技術に、柔軟な発想力と遊び心が加わり、彼の作品は実に多彩な展開を見せているのです。
近年、角は家や住生活をモチーフにした作品を次々と発表しています。例えば「石の庭」は、部屋の中に庭がある作品で、2020年のサンワ・コンテンポラリー・アートアワードでグランプリを受賞し、現代における都市の住環境のあり方について一石を投じました。
《Landslide》では、スケートボードでできた地面の上に家が建っており、建築物の自然の曖昧さを露呈しています。一見するとおもちゃのようなポップなスタイルで、国籍や年齢を問わず、容易に理解できる角の明るい作品群を、フランスの美術評論家クレリア・ゼルニックは、角の作品の「軽さと重さの共存」は「現代社会の見えない矛盾や不条理を露呈する」と評したように、作品の軽やかな跳躍は、アートが果たしうる社会的役割として海外からも注目されています。角は、瀬戸内国際芸術祭2013や奥能登国際芸術祭2017などの国際展にも参加した実績がありますが、シンガポールでもその普遍的な問題意識が広くアピールするでしょう。
ART SG General Information
●Date: January 12-15, 2023
●Venue: Marina Bay Sands + Convention Center
● Art Front Gallery Booth : FC12