プロジェクトProject

Gallery's Picks for the Month (輝き続ける彼らのART)

  • Gallery's Picks for the Month (輝き続ける彼らのART)

サムネイルをクリックすると、拡大表示します。

Gallery's Picks for the Month (輝き続ける彼らのART)

ギャラリー

今月は「輝き続ける彼らのART」と題して、近年惜しまれながらもこの世を去った作家達の作品を紹介いたします。作家が生涯をかけて生み出し、表現し続けた作品群。その息吹を感じて頂けますと幸いです。

紹介する作品はご購入頂くことが可能です。作品のお問い合わせは contact@artfrontgallery.com もしくは03-3476-4868(担当:庄司・坪井)までご連絡下さい。


クリスト / CHRISTO 1935 - 2020
ジャンヌ=クロード / Jeanne-Claude 1935 - 2009


書籍『クリスト展 Christo:Works From The 80s And 90s』(発行アートフロントギャラリー1993)より

共に1935年6月13日生まれであるクリスト&ジャンヌ=クロード夫妻。ブルガリア出身のクリストは、首都ソフィアの美術アカデミーで、絵画や彫刻そして建築や装飾美術などを幅広くを学んでいました。1957年にウィーンへ亡命後ジュネーヴに行き、翌1958年にチューリヒで缶や瓶を布で包んだ「包まれたオブジェ」の制作を開始。同年にパリに居を定め、生活のために肖像画の依頼を受けるなか、依頼主の娘であったジャンヌ゠クロードと出会ったといいます。その後1961年には公共スぺースを題材としたアート作品のデザインと制作を開始。2021年10月に実現したパリの凱旋門を梱包するというアイデアもこの頃に生まれたと言われています。1964年にはNYに移住。以降、世界各地で大規模なプロジェクトを行いました。

クリスト《アンブレラ、日本とアメリカ合衆国のためのジョイント・プロジェクト1984-1991》1988, 鉛筆、布、パステル、木炭、クレヨン、エナメルペイント、地図 

アートフロントギャラリーとのご縁は、1991年に日本の茨城とカリフォルニアで行われたプロジェクト・アンブレラの開催をサポートしたことに始まります。写真のドローイング作品でも描かれている《アンブレラ、日本、アメリカ合衆国、1984-1991》は日本の茨城とアメリカのカリフォルニアの2地点を拠点に同時開催したプロジェクトで、傘の設置によってそれぞれの谷の地形的な共通点と差異を浮き彫りにしました。しっかりと固定されたスチールの台座に垂直に立てられた傘は茨城で1340本、カリフォルニアで1760本。茨城においては459か所の個人主や公的な場所にわたって傘が設置されており、プロジェクトに対する地域の協力と理解が伺えます。

上)ポスター「The Umbrellas, Japan-USA, 1984-91. Ibaraki, Japan Site」610x1000mm
下)ポスター「The Umbrellas, Japan-USA, 1984-91, California, USA Site」500x990mm

また、ギャラリーで見ることのできる作品として、パリを舞台にしたプロジェクト構想である《梱包されたアレクサンドルIII世橋》のリトグラフにコラージュを施した作品もございます。梱包のためのキャンバス地やロープは、コラージュとなっても微妙なドレープを呈する手わざで作品化され、まるで実際の梱包プロジェクトそのものの様です。

クリスト《梱包されたアレクサンドルIII世橋、1972-1990》edition 120, リトグラフにハンドコラージュ, 1991, h70 x w75cm
(作品のお問合せ:contact@artfrontgallery.com
その他、作品に関する関連記事はこちら クリストの遺産―実現したプロジェクト、しなかったもの


田中信太郎 / Shintaro Tanaka 1940 - 2019


d2b97207ae34b74c545ae650a8477462.jpg

わずか19歳での鮮烈なデビューから79歳で亡くなるまでの60年間、田中信太郎のアーティスト人生は、1960 年以降の日本の現代美術史そのもの でした。読売アンデパンダン展で注目を集め、赤瀬川原平、篠原有司男らに よるネオ・ダダイズム・オルガナイザーズに参加。やがて 1968 年に発表し た「点・線・面」のミニマルな表現は、美術界のみならず、倉俣史朗をはじ めとするデザイナー、建築家にも強いインパクトを与えました。そしてパリ・ ビエンナーレ、「人間と物質」展、ヴェネツィア・ビエンナーレ等の国際展で 日本を代表するアーティストとして活躍。しかし、病床に倒れ、数年に及ぶ 闘病生活を経て、新たな表現形式による「風景は垂直にやってくる」をもっ て復活、精力的に制作活動を続けました。また、ブリヂストン本社、ファー レ立川、越後妻有、札幌ドーム等、数多くのコミッションワークも手がけ、 その作品は日常の風景のなかで人々に親しまれました。

田中信太郎 作品展_展示風景2020年9月_野口撮影_2.jpg

2020年秋にアートフロントギャラリーで開催した展覧会田中信太郎 作品展も記憶に新しい田中の作品ですが、それらの力強い作品群の一部は現在アーティゾン美術館の収蔵作品として、大切に継承されています。アーティゾン美術館では、田中の立体作品と、田中と親交の深かった倉俣史朗の作品が6階ロビーに常設展示として設置され、いつでも彼らの作品を一緒に鑑賞することができます。それは彼らが生前に過ごした時間がそこに常に存在しているかのようにも感じられます。

そして今回ここで紹介するのは、奥深い色彩が印象的な作品《風媒花》です。タイトルの「風媒花」とは、一般的に花粉を雄しべまで運ぶために風を利用する植物のことを指します。受粉のために鳥や昆虫などをひきよせる必要が無い風媒花には派手な花などは開花せず、目立たない花をつけるものが多いと言われています。画面には、その奥ゆかしさや、生命を繋ぐ風の流れが表れているかのように感じられます。

田中信太郎《風媒花》2010 キャンバスに油彩 660×920mm

Shintaro Tanaka “Anemophily” 2010 oil on canvas (detail)
(:contact@artfrontgallery.com
その他、作品に関する関連記事はこちら アーティゾン美術館、新収蔵品展について 新畑学芸課長に聞く


康夏奈 / Kana Kou 1975-2020


_DSC0045.jpg

康は山に登ったり海に潜ったりという、自然のなかに身を置くことを作品の制作プロセスに取り入れてきました。これらの身体的体験のなかで刻み込まれた記憶や不安や恐れといった感情が、その場所を深く知覚することで、しだいにその場を美しい場所として意識を拡張していく経験を絵に描き出してきました。

2011年に参加した小豆島のアーティスト・イン・レジデンスにて、康はそこの豊かな自然とおおらかなコミュニティに魅せられ、以降小豆島を活動の拠点として長く活動しました。瀬戸内国際芸術祭2013年に小豆島で発表した作品《花寿波島の秘密》という逆円錐形の作品は、この芸術祭を代表する作品として高い評価を受けています。また、2021年にも同作品が東京都現代美術館のコレクション展内の特集展示として再展示され好評を得ています。(東京都現代美術館のコレクション展の開館についてはオフィシャルサイトをご確認ください)

そしてここでは、康の愛した海と山をモチーフとした作品を紹介します。《海は青い 森は緑》は2013年の 個展で発表されました。康は2次元の平面作品だけにとどまらず、体験した風景を作品へと凝縮し、3次元の物質性を備えた作品を制作。康が「個体の風景」と呼んだその試みは、東京都現代美術館に収蔵されている《No dimensional limit anymore》や《海は青い 森は緑》などの立体作品に現れているといえるでしょう。

吉田夏奈 個展「海は青い、森は緑」2013 展示風景
(吉田夏奈の名前で活動していたが、2016年より在日コリアンだった父親の元々の姓である康を名乗っている。)

康夏奈《海は青い 森は緑》(4D-02)木、スチレンペーパー 、オイルパステル、クレヨン 2013 190x400x270mm


「康夏奈:宇宙からのもう一つの視点」および、「MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2」康夏奈 特集展示 展示風景

(作品のお問合せ:contact@artfrontgallery.com
その他、作品に関する関連記事はこちら 【康夏奈 作品展レビュー】彼女そのものが宇宙であったようにおもう(アーツ前橋学芸員・今井朋)

トップに戻る