アペルト15 冨安由真 The Pale Horse金沢21世紀美術館
2021年10月30日(土) - 2022年3月21日(月)
《The Pale Horse 蒼ざめた馬》2021 / パネルに油彩 / 728 x 910x28mm
個展「アペルト15 冨安由真 The Pale Horse」 展示風景 / 金沢21世紀美術館, 石川 / 絵画、家具、日用品、古材、砂、電球、19Hzの不可聴音ほか / 撮影: 野口浩史
2021年秋から22年3月まで、金沢21世紀美術館にて開催した本展のために制作されたインスタレーション作品は、冨安が幼少期に見た夢に構想を得ており、その夢に現れた一軒の小屋を作品の舞台としていました。小屋にかけられた絵画《The Pale Horse 蒼ざめた馬》に登場する一頭の馬は、新約聖書のヨハネ黙示録にて「死」を象徴する騎士が乗った蒼ざめた馬に着想を得たものです。展示空間に足を踏み入れた鑑賞者を、現実と虚構とが交錯し合う、奇妙で幻想的な体験へと誘う作品です。
近年では従来の表現メディアである絵画とその周囲を含んだ空間の見せ方や手法に、そのダイナミズムを増している注目作家が手がける体感を重要視して構築された作品世界は、鑑賞者に対し絵画の裏側から19Hzの大きな音(人間にとっては不可聴音なため耳では聴くことができない)を流すなど、見えないものを知覚させるような新しい体験の機会を創出させました。
楳図かずお大美術展東京シティビュー
2022年1月28日(金)~3月25日(金)
あべのハルカス美術館
2022年9月17日(土)~11月20日(日)
《White Shadows over Trees》2022 / パネルに油彩 / 53 x 65.2 cm / photo:加藤健
《Shadowings》2022 /「楳図かずお大美術展」 東京展の展示風景 / 東京シティビュー / ミクストメディア / ©冨安由真 ©楳図かずお / 撮影: 加藤健
「楳図かずお大美術展」は東京会場と大阪会場の2か所で開催され、冨安は楳図作品をテーマに作品を発表する3組の現代アーティストの1人として参加しました。
楳図かずおの「ZOKU SHINGO - 小さなロボット」が着彩される前のオリジナルの素描(鉛筆画)101点ー。現実と虚構を往来するような作品で高い評価を得ている冨安は、素描101点が展示されている部屋全体の演出を手掛けるとともに、部屋の中央には小屋のような構造物を制作しました。
展示室の中央には格子状の小屋が設置され、『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』と、その前作となる『わたしは真悟』にインスピレーションを得た様々なオブジェと、冨安の絵画作品を設置。展示室内にはスポットライトやフロアライト、回転灯ろうやシーリングライトなど様々な照明が配置され、時間の経過と共に点いたり消えたりし、展示室内が真っ赤に染まる照明も含め、10分周期で様々な光の演出がなされる。また『わたしは真悟』のシーンさながら、時折黒電話が鳴る仕掛けもありました。
素描のモノクロームな世界と、夢の中にいるような光と影の空間演出が入れ子状になって交互に浮かび上がる空間——。ここでは「ZOKU SHINGO - 小さなロボット」の着彩と素描の世界観、そして楳図かずおと冨安由真という2人のアーティストによる表現世界というパラレルワールドが体験できる展示となりました。
瀬戸内国際芸術祭2022豊島
2022年8月5日(金)-9月4日(日) / 9月29日(木)-11月6日(日)
《かげたちのみる夢(Remains of Shadowings)》2022 / 「瀬戸内国際芸術祭2022」 展示風景 / 豊島 甲生地区, 香川 / 木板に油彩、アンティークフレーム、監視カメラ、モニター、サウンド、ラジオ、ブラウン管テレビ、砂、家具、日用品ほか
冨安は初参加となる瀬戸内国際芸術祭にて、古民家1棟をまるまる使った没入型インスタレーションを発表しました。
瀬戸内海の東部に位置する豊島。その甲生集落にある築100年あまりの朽ちかけた古民家を舞台に作品を展開。ここでどんな人たちが暮らしてきたか、今では誰も憶えていないその記憶の残像を、家は宿しているのだろうか――。
小泉八雲『影(Shadowings)』の中の一編『和解』に着想を得て、廃屋を舞台に現実から夢へ、そして夢からまた現実へと次元を行き来する『和解』の世界観を、敷地内を順路通り歩くことで鑑賞者が追体験することのできる作品となりました。
《Untitled (Brush)》2022 / パネルに油彩 / 31.8 x 41 cm
ATAMI ART GRANT 2022熱海
2022年11月3日(木)-2022年11月27日(日)
《Unison_Circle》2022 / 「ATAMI ART GRANT 2022」 展示風景 / ACAO SPA & RESORT, 静岡 / ドア、壁紙、建材、サウンド、塩、造花、椅子ほか / 撮影: Naoki Takehisa
《Unison_Circle》と題された冨安由真の作品は、もう使われていない古い大浴場にサウンドとオブジェクトを設置したインスタレーションでした。使われていない工事中の場所の為、立ち入る事は出来ませんでしたが、入れないことを逆手にとって、サウンドとVRを用いた、新作インスタレーションを制作しました。
このインスタレーションがみられるのは、VRのゴーグルを通してのみ。塩でつくられたサークルは「弔いと祈りをテーマ」に制作され、肉声とホテル内の環境音を多層化させた音声が大空間の中で反響して、音を通しても空間の広がりを感じさせるものになりました。
《Unison_Circle》と対をなすように制作されたVR作品《Unison_Circle_Reverse》は、HOTEL ACAOのインペリアル・ルームにて体験できるようになっていました。《Unison_Circle》の内部を写したVR映像を観客は一人ずつヘッドセットで操作しながら、まるで内部を歩き回るかのように360度鑑賞でき、新しい試みの冨安作品となりました。
《Unison_Circle_Reverse (The Passageway)》2022 / 「ATAMI ART GRANT 2022」 展示風景 / ACAO SPA & RESORT, 静岡 / VR映像、VRヘッドセット、パネルに油彩、紙に水彩、映像、サウンド、ラジオ、造花、椅子、机、テーブルランプ、その他
/ VR制作: ARCHI HATCH(YUTA TOKUNAGA) / 撮影: Naoki Takehisa
Object in 6053 (from Unison_Circle_Reverse (The Passageway))
制作年:2022
素材:パネルに油彩
サイズ:15.8 x 22.7 cm
ATAMI ART GRANT 2022 出品作品《Unison_Circle_Reverse (The Passageway)》より
今回紹介した作品の一部を、現在アートフロントギャラリー1Fの商談室に展示しております。
開催中の
中谷ミチコ 個展と併せてお楽しみください。