Summer Fictionに寄せて―金氏徹平インタビュー
Summer Fiction (除雪車), 1250 x 650 x 1650 mm, 2018

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Summer Fictionに寄せて―金氏徹平インタビュー

この夏、代官山での個展「Summer Fiction」と併せて、新潟県で同時期開催の「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2018」でも同テーマで作品を発表している金氏徹平。
今回テーマに選んだ「越後妻有地域の雪」について、妻有での展示そして代官山での個展について、インタビューを行いました。

ギャラリスト(以降G):本展は、越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭2018との連携展示として企画されました。現在アートフロントギャラリーで展示されている作品も、妻有で発表中の作品の延長線上にあり、ずばり「越後妻有地域の雪」をテーマとしているわけですが、「雪」あるいは「除雪車」をテーマに扱おうと思ったのは、どういった背景があったのですか。

金氏(以降K):初めて越後妻有に2017年の秋に視察に行きました。土地の特徴、地理や気象、歴史の話を聞きながら、中でもとにかく凄い豪雪地帯であること、雪があるとないとで全く違う世界になってしまうという話に驚かされました。初めて行ったのは10月でまだ雪は降っていませんでしたが、大きな除雪車が停まっていて、その存在感や迫力を感じました。雪のないところで見るものすごい力を持った重機、という状態が不思議で、重厚感は確かにあるけれど、働いていないので宙に浮いているような感じもある。その感覚が、SFの世界に近く思えたのです。

巨大除雪車


G:その体験が雪のない世界・季節の真っ只中に、除雪車あるいは、雪の風景をあつかうというコンセプトの中心にあるのですね。妻有の会場には巨大除雪車が何台も、代官山ではそれにくらべるとかわいらしい、家庭用除雪車が展示されています。

K:夏のあいだ、倉庫に眠っている除雪車をただただ見るだけでもいいのではないかと考えたのですが、除雪車が眠っている状態にSF的世界の広がりをもっと展開するために、映像や写真の展示、音響、照明の演出を加えたインスタレーションとして制作しました。越後妻有では、夏の間に冬の時間を想像する、ということにとどまりますが、代官山の展示ではそれに加えて、遠く離れた場所を想像するというレイヤーも加わったと思います。

地元の家庭用除雪車


G:展示されている映像、音、写真を記録したのは、雪深くなった2月に妻有を再訪されたときだそうですが。

K:サウンド・アーティストの荒木優光さん、映像作家の松見拓也さんと一緒に、もう一度冬の間にリサーチにいきました。実際に働く除雪車を見て、動きを見たり、飛ばされた雪をクローズアップして撮影したり、また除雪車が働いた痕跡 ―雪の壁、積み上げた雪山、そういったものを重点的に撮影しました。

リサーチ風景(左:金氏)


G:それが映像作品や写真作品におさめられているわけですね。特に印象的だった風景、エピソードはありますか?

K:実はリサーチに行った2月後半はすでに降雪量が少なく、なかなか除雪車が作動しませんでした。滞在日程の後半でようやく雪が降って、除雪車が動く噂を聞きつけては、取材にいったのですが、雪が降らない間にリサーチした風景が印象に残っています。面白いと思ったのは、人工的な雪山です。写真作品や映像でも取り上げていますが、汚い灰色の雪山ですが、除雪機がつくったものです。巨大なショッピングセンターの駐車場ごとに、人工の巨大な雪山ができている。除雪した雪を溜めておく場所がないので、広い敷地内に山を作るのです。それが不思議な存在感があって、人間と巨大な自然現象のぶつかり合いというか、ある意味で人間と自然との共存の姿というか、自然との関係性の中で生まれた造形物に圧倒されました。

人工の巨大な雪山


G:写真作品には、マンガのイメージをコラージュしています。このアイディアは?

K:写真の上のアクリルに、シルクスクリーンでマンガのイメージをプリントしています。この制作方法は、シンガポールの版画工房STPIで滞在制作をしたときに生まれた技法です。コラージュしているイメージは、子どものころに読んでいたSFマンガから取ってきています。70-80年代のマンガから読み漁ってとってきているわけですが、マンガ研究者によればこの時代のマンガは、現在よりも背景の書き込みが細かくて、より豊かな世界、未来をマンガを通して見せようとしていたのではないかといわれているそうです。

Games,Dance & the Constructions (snowplow) #7, 600 x 800 mm, 2018


G:確かに、本当に多様なイメージがちりばめられていますよね。

K:写真作品のシルクスクリーンはその都度レイアウトや色を変えるので、すべて1点物の作品です。ちなみに、使用している赤、オレンジ、緑、黄色などの色は、実は除雪機のボディの色に寄せています。また壁紙の作品では、反射シートにプリントしています。反射シートは、道路標識などで使用される素材ですが、これも妻有の風景や、土木的なイメージを重ねて選んだ素材です。

Games, Dance & the Constructions (Snowplow/ Wallpaper), 2500 x 6000 mm, 2018


G:代官山の展示では、妻有で展示されていない、石を素材にした彫刻もあります。

K:この石は、越後妻有地域を流れる信濃川の石です。信濃川の石は、まんまるとしていてかわいいので素材にしたいと思いました。石をかたどりして、白い樹脂にして石の上に載せています。雪だるまに見えると思いますが、雪が積もっている状態のことをテーマにした彫刻作品にしたいと考えて制作しました。降り積もっている雪の形は、その下にあるものに影響されてうまれる形です。いってみれば、積雪が生み出した形の原型が下にあるわけです。この石の作品では、そういった状態を表現しています。石を組み合わせることで、時間の感覚も複雑にさせています。石が長い年月をかけてこの形になるまでのタイムスケールと、寒くなると雪が降って形が生まれて、暖かくなるとそれがすべて消えてなくなってしまうことを繰り返しているタイムスケールとを同時にみせたいと考えました。

Summer Fiction(River Stone), 信濃川の石、FRP, 2018


G:金氏さんは、以前より「White Discharge」というシリーズで雪降る風景をテーマに制作されています。雪が降って、新しい風景や形が生まれることに関心があるのですね。

K:はい、僕は雪が生み出す風景にフィクション性を感じています。ギャラリーで流れている音声は、実際除雪機に乗られている方にインタビューした声を編集したものです。冬と夏の生活の違いなどを聞くなかで、冬の間は家にこもっている時間が長いのでいろいろ考える時間が多く、物語を書いていると聞きました。いろいろ聞いてまわると年配の男性で小説を書いている人が多いという話を聞いて、面白く思いました。現実的に、雪で生活や世界が変わって、フィクションが生まれる状況があるのかなと思ったものです。

G:それは興味深いですね。「雪」という夏から正反対の季節、またそこに生活する人の暮らしについても想像力をかきたてるような気がします。ぜひ多くの方に真夏のフィクションを体験してもらいたいですね。

冬の越後妻有


金氏徹平 個展 「Summer Fiction」 @ アートフロントギャラリー(代官山、東京)
2018年8月3日(金)-9月9日(日) 
月曜、火曜および8月13-17休廊

金氏徹平 - SF (Summer Fiction) in 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018 (新潟県十日町市、津南町)
2018年7月29日(日)- 9月17日(月):51日間

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ特別展示 @代官山蔦屋書店(代官山、東京)
2018年7月9日~9月16日

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