展覧会Exhibition
金氏徹平 - Summer Fiction
2018年8月3日(金)-9月9日(日)
金氏徹平は、1978年、京都府に生まれ、2003年に京都市立芸術大学大学院彫刻専攻を修了し、現在も京都を拠点に活動しています。この度、アートフロントギャラリーでは、初めての個展となります。
彫刻やインスタレーションを中心に、絵画、写真、映像、舞台美術など幅広い領域で制作をしていますが、金氏作品を特徴付けるのは、その素材と手法です。
現代の高度消費社会で大量に生産されるフィギュアやおもちゃ、日用品などを収集し、それらのパーツを分解し、その物質が本来持つ用途や意味を一度消失させます。その上で、それらを組み合わせ、再構成させるコラージュ的手法で、作品を作り上げています。
2009年には、横浜美術館にて、史上最年少個展作家となる「溶け出す都市、空白の森」を開催するほか、2016年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にて、個展「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」を開催。
近年では、舞台美術の制作にも積極的に関わっています。チェルフィッチュ「家電のように解り合えない」(2011年、あうるすぽっと)、KAATキッズプログラム 岡田利規演出「わかったさんのクッキー」(2015-2016、KAAT)、ダンサー辻本知彦と島地保武のユニット「からだ」の公演「あし」(2018年、象の鼻テラス)の舞台美術を担当するほか、自身の映像作品を舞台化した連作「TOWER」は、2018年六本木アートナイトのメインプログラムとして、六本木ヒルズアリーナにて展開したことは記憶に新しいでしょう。
本展は、今年金氏が参加作家のひとりとなっている「大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ」(7/29〜9/17、新潟県十日町市、津南町)との連携展覧会として開催されます。
金氏が芸術祭でテーマとするのは、ずばり「越後妻有地域の雪」。日本有数の豪雪地帯である越後妻有地域は、冬のあいだ、都市では見ることのない光景、道具がたくさん現れます。そうした状況に関心を寄せ、夏のあいだは眠るだけの除雪車の格納倉庫を会場に、除雪車、除雪道具を用いた彫刻作品を中心にし、雪降る2月に取材・撮影をした写真、映像、音を組み合わせた作品空間を生み出す予定です。
一方で、代官山では、テーマを同じくして、家庭用ミニ除雪機、信濃川の石を素材にした彫刻作品ほか、非日常的な雪の風景にマンガなどのイメージをコラージュした写真作品、映像作品など、新作を展開します。真夏の会期中に現れる、豪雪地帯というテーマをぜひお楽しみください。
関連情報:大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018の出品に関してはこちら
日程 | 2018年8月3日(金)-9月9日(日) |
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営業時間 | 11:00 - 19:00 (月曜、火曜および8月13-17休廊) |
レセプション | 2018年8月3 日(金) 18:00~20:00 |

真夏のフィクション~既知との遭遇
岡村恵子、東京都写真美術館学芸員
金氏徹平の代名詞的なシリーズの一つに、ありふれた既製品やその断片の組み合わせから立体を築き、上から塗料の入った白い樹脂や石膏をかけ流したWhite Discharge(2002年‐)がある。流体のヴェールが、個々のオブジェクトの輪郭や機能、意味やサイズ感を異化(無化)し、そこに既知の物から成る未知のモンスターが姿を顕わす。金氏の言に拠れば、そうしたWhite Dischargeのインスピレーションの一つに、雪景色があったのだという。* なるほど雪は、一夜にして見慣れたはずの窓外の風景を、そのままに非日常に変える。
新潟の越後妻有で展示予定のプロジェクトのために現地へリサーチに赴いた昨夏、金氏の関心を惹きつけたのは、会場となる予定の倉庫にしまわれていた除雪用車両の異様な存在感だった。街中の工事現場では見かけることのないパーツの組み合わせが特徴的な、豪雪地帯という土地柄ならではの重厚な重機との出会いが、やがて、「夏に冬を想起する」という主題に結びつく。
気まぐれに都市に降る雪は、どこかコンセプチュアルで、一時的なインフラの機能不全を招くことはあっても、大概は数日で復旧し、風景は呆気なく退屈な日常を取り戻す。だが、冬ごとに、ヒューマンスケールを圧倒する積雪量と向き合うことを日常とする地域の人々にとって、雪景色は、単に視覚的に愛でるだけのものではあり得ないだろう。むしろ、意識するしないに関わらず、生死を分かち得る白い虚無に対する怖れを、ごく自然なかたちで身につけているのではないだろうか。

それゆえ、圧倒的な機動力で雪をかき散らし、道を切り拓くのであろう大型除雪車の造形には、一方で、どこか無敵の英雄ロボットや秘密兵器のごときイメージが重なる。あらためて冬にも現地を再訪した金氏は、実際に稼働する除雪車の勇姿に痺れるとともに、そこここに築かれた人工的な雪山/雪捨て場の姿に、SFじみた非現実感を抱いたという。
フィクションは、現前にないものを想像で描きだす営みである。「絵空事」を物語る手法はさまざまにあるが、金氏徹平は、自らの手で線を描くのではなく、既にそこにあるオブジェクトや作為なく生み出された図像をさまざまに切り出し、それらの不条理な構成の末に、異質なものを立ち上げることにこだわってきた。「ふつう」と思って油断しているふとした現実の隙間に、突如あらわれる未確認物体は、現実と異界との間のチャネリングスポットか。金氏による真夏のフィクションには、どことなく愉快な、ホラーが潜んでいる。
*「誠実に自分の経験に基づいてつくっていくこと 金氏徹平インタビュー」『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森』2009年、赤々舎、p.115

Model of Unknown Stage (Snowplow) #1-4, 2018, プラスチックのおもちゃ, 撮影:加納俊輔
アーティスト
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