プロジェクトProject
[インタビュー] 金氏徹平:S.F.(Smoke and Fog)
ギャラリー
現在個展を開催中の金氏徹平に出品作品についてインタビューを行いました。
モノやイメージ、技術、文脈、価値、様々な異なるものを掛け合わせることで作品を作ってきた金氏の2013年から2021年までに制作された様々なシリーズを展開した本展。異なる素材や表現方法の中で、共通しているもの、金氏が常に考えている制作に対するイメージを語っています。
towerの歴史
今回の展示は、towerシリーズ作品と、これまで世界中で行ってきたコラボレーション作品のシリーズで構成しています。
towerシリーズは、2008年頃からいろんな形で作り続けていますが、一番初期のオリジナルに近い形が、今回壁面に展示しているドローイング作品です。最初は僕が一人でスケールを持たない建物、中身がどうなっているのか分からないもののドローイングを描いたところからスタートしました。
このドローイングをもとに、2009年に横浜美術館で個展をしたときに高さ8mくらいの大きなタワーにいろんなものをコラージュしたアニメーション作品《tower(MOVIE)》を制作。その後、2017年にKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭で《tower (THEATER)》を舞台上に高さ6mで制作して演劇公演プロジェクトを行ったり、京都芸術センターの中にある喫茶店のキッチンを彫刻作品《tower(KITCHEN)》に作り替えたりと、いろんな形で展開してきました。現在進行形のプロジェクトでは、金沢21世紀美術館の企画でアートバス 《tower (BUS)》も制作しています。
コラボレーションというコラージュ
僕の共通する手法・考え方にコラージュというのがあって、いろんなものを接続していって作品を作っています。それはモノやイメージだけではなく、技術もそうだし文脈もそうだし価値もそうだし全然違うものを掛け合わせることで何かを作っていくという事だと考えています。そういう意味で、色々なところとのコラボレーションを積極的に行っています。
今回展示しているガラス作品はベネチアのムラーノ島にあるベネチアングラスの工房Berengo studioで制作しました。そこは、様々なアーティストを招待して作品を作るプロジェクトを行っている工房で、これらはそこで制作した作品の一つのシリーズです。以前から、透明なプラスチックやガラスでできたものを集め、組み合わせて作品を作るという事をやっていて、その手法とベネチアングラスを掛け合わせて制作しました。ベネチアングラスでできた外側のドーム、その中に100均だったりとかホームセンターで買ったようなものや包装用のカバーだったりとか、そういう全然違う素材だけれども透明という共通点で繋がっているものを構成した彫刻です。色んなものがレイヤーになって一塊の作品になっています。
違う物質の様なものが混ざっている状況を想像してみる
展覧会や作品に付けているタイトル「Smoke and Fog」(煙と霧)というのは、全く異なるものなんだけれども、似ている。けれどもやはり違うもの。違う物質の様なものが混ざっている。そんな状況を想像してみると、頭の中で面白いことが想像できる。架空のフィクション的な事もそこに含まれているし、現実の素材を使って想像したフィクションだったり、想定するという事、考えるという事が僕の作品全般に共通することだと思っています。
《Smoke and Fog(マテリアルのユーレイ)#38 》2021 プラスチック製品、金属製品、石粉粘土、塗料 680x330x400mm
《Smoke and Fog(マテリアルのユーレイ)#38 》は、色んなコラボレーションだったり演劇だったりいろいろとやってきた中で彫刻に原点回帰しようと考え展開しているシリーズの一つです。簡単にいうと透明なガラスも一緒なのですが、モノトーンの色んな素材を掛け合わせて彫刻を作る。その中に、モノが元々持っている機能を活かしたり、活かさなかったり。形を関連付けたり、付けなかったり。その中に違和感と調和している部分を考えながら形を作っているという事をやっているシリーズです。この作品にもいくつか穴が開いていますが、穴も金属などの素材と同じでモノトーンの物質として扱っています。
タイトルの中の「マテリアルのユーレイ」というのは、異なる物質が掛け合わさっていくうえで固有の物質感が宙に浮いた状態にならないかなという考えがあって付けています。形の意味だったり用途などを、活かしたり活かさなかったり、という事をしていく中でそれが起こるのではないかと考えています。
金氏徹平の個展「Smoke and Fog」は2021年10月3日(日)まで。
今後も様々な展開を遂げる金氏作品にご注目ください。