かつてチューリッヒに友人を訪ねた川俣がリマット川の川辺を散歩していた時、川に浮かんだ不思議な建物を見つけました。友人に尋ね、Frauenbadと呼ばれる昔からある女性専用の屋外プールであることを知りました。その独特の習慣と木造の構造に興味をもった彼は、その形をまねて川の中に、そしてヘルムハウス美術館にもマケットを制作しました。2メートルを超える大型レリーフのほか、2点の小型マケットと図面、フォトドキュメントパネルが、1993年に早くもサイトスペシフィックな作品のひとつとして制作されました。
川俣作品のもとになったFrauenbad
installation view of Tadashi Kawamata "Frauenbad"
installation view of Tadashi Kawamata "Frauenbad"
"Frauenbad", h220 x w340cm
80年代にはこうしたプロジェクトベースの作品が多く生み出されましたが、それらの発端はニューヨークのPS1で行ったアーティストレジデンスにありました。1982年のベニスビエンナーレ日本館のアーティストに選ばれた川俣は、PS1の創設者でディレクターでもあるアランナ・ハイスに見いだされ、その後熱い招待を受け、NYで何度もミーティングを重ねることでプランが室内から室外へと広がっていったといいます。人との出会い、協議(多くの場合、場所の使用に関して交渉が必要)を通じて鋭く場所に切り込んでいく川俣のスタイルがこのころに確立しました。
"Frauenbad Limmat II", h34 x w56 x d8cm
"Frauenbad Limmat I", h36 x w51 x d8cm
installation view at SoKo museum
installation view at SoKo museum
installation view at SoKo museum
installation view at SoKo museum
2017年の川俣の個展は、清津倉庫美術館および代官山のアートフロントギャラリーで行われましたが、見逃してしまった方も今後もギャラリーにて一部の作品をご覧いただくことができます。併せて、ルーズベルトアイランド、ベギンホフ、工事中に関する本も販売しておりますのでご興味ありましたらぜひお問い合わせください。
川俣正の取扱い作品はこちらをご覧ください。