展覧会Exhibition
川俣正 - 「 工事中 」 再開
2017年 8月18日(金) - 9月24日(日)
今回の「工事中」再開展は、1984年に行ったインスタレーションを新たな形で実現させます。ヒルサイドテラスの屋上のルーフトッププランを構想した裏には、パリに長く住む川俣にかねてから屋根並を作品に取り込みたいという思いがあり、ヒルサイドの低層建築がそれにふさわしいこと、また、近く撤去の予定されている歩道橋からの視点を重視したことがあげられます。ぜひ歩道橋からの眺めを堪能してください。さらに作品を間近に見たい方のために、予約制で屋上をご覧いただけます。尚、1984年当時のオリジナルマケット一式も屋内に展示します。
<おすすめの鑑賞方法>
1.今年でなくなってしまう歩道橋の上から、「工事中」のルーフトップの全景を鑑賞する。
2.1984年の展示をできる限り忠実に再現した、ギャラリー内作品を鑑賞する。
3.ヒルサイドテラスの屋上にあがり、ルーフトップの作品を間近に鑑賞する。
(定員制、要予約となります)
4.清津倉庫美術館へ足を延ばして、川俣正の過去の名作に出会う。
予約制にて、作品の中を歩ける屋上観覧を受けつけます。
★台風接近時など、悪天候の場合には屋上観覧できない場合がありますが、展示はご覧頂けます。
両日とも定員に達しましたので予約を締め切らせていただきます。メールアドレスの混乱に伴い、
ご迷惑をかけましたこと、深くお詫び申し上げます。
① 日時:8月19日~9月24日までの土曜日(15時・16時・17時)日曜日(15時・16時・17時)
② 予約方法:contact@artfrontgallery.com 宛てに、
・お名前
・希望する日時(第一希望、第二希望)
・連絡先メール(もしくは携帯電話)
以上をお送りください。
※雨天の場合には中止させていただくことがあります。
※梯子階段をのぼっていただくので軽装でお越しください。
日程 | 2017年 8月18日(金) - 9月24日(日) |
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営業時間 | 11:00-19:00(月曜休廊) ※18日は18:00レセプションよりオープン |
レセプション | 2017年 8月18日(金)18:00 - 20:00 |
同時期開催 | 川俣 正 - crossroads 新潟県越後妻有 清津倉庫美術館でも川俣正個展を開催します。こちらも是非お越しください。 http://artfrontgallery.com/whatsnew/2017/2017_cross_road.html |
遡ること1984年、川俣正は代官山のヒルサイドテラスで木材を利用したインスタレーション、「工事中」を公開した。当時、ヒルサイドテラスのリノベーション工事に合わせて建物全体に増幅し、長期にわたって展示される予定だった。今でこそ都市でも街そのものを使った屋外アート展が開催されるようになったが、当時は極めて珍しく、近隣の店舗などからの抗議を受けて1週間程度で撤去を余儀なくされた。
川俣はその後、代官山で1999年より隔年されていた若手屋外インスタレーションの公募展「代官山インスタレーション」展の審査員を務めている。
この展覧会は10年の歳月を経て次第に展示形態としても一般的になってゆく「都市」におけるアートの草分け的な展示であったが、「場所性」とアートの関わり、あるいは街づくりとアートの広がりにおいて一定の役割を果たしたということで13年に終了した。場所と関わるアートが一般化し、当たり前になってゆくなかで、公募展の審査をしながら川俣は「今の自分であったらこういうプランを考えるはずなのに」という思いを持ち続けたという。今回の展覧会はまず、終わらざるを得なくなった代官山インスタレーションの「リベンジ展」をしようというところから始まり、かつての「工事中」展を掛け合わせることで、もう一度、都市、場所性、アートの掛け合わせ方を模索する展示として計画されている。
30年余りの間に街の様相も変わりつつある。街の景観の変化、場所とアートとの関係性の変化を川俣は重視し、隣接する歩道橋から見ることが出来るヒルサイドのルーフトップ案を打ち出した。この歩道橋は近隣の店舗/住民からの要望を受けて会期後1-2か月後に撤去されることになっており、ある視点から見ることのできる最後の形をとどめたい意思から生まれたプランともいえる。また、特定の日には実際の屋上に観客を上げることも検討されている。屋内のギャラリー空間には1984年の「工事中」展のマケットやドローイングなどとともに今回のインスタレーションにまつわる新たな作品が展示される。30年を経て変わってきた都市とアートの関わりの現在進行形を見せる、新たな冒険の始まりともいえる展覧会になる。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
リベンジ? 帰って来た「工事中」
川俣正が代官山ヒルサイドテラスで「工事中」と題するインスタレーションをおこなったのは1984年のこと。建物の改修工事にともない、外壁を木材でおおっていく作品だったが、途中でテナントから「人が寄りつかなくなる」とクレームがつき、中止を余儀なくされた。ところが中止直前、写真週刊誌に記事が出て人がたくさん集まってきたため、テナントは手のひらを返すように続けてほしいと願ったそうだ。
ともあれ、その直後に川俣はニューヨークに渡り、欧米を股にかけて活躍。「工事中」は10余年後「ワーク・イン・プログレス」に名を変え、その後の川俣の方向性を決定づけていく。その意味で「工事中」は彼にとって大きな転機になった作品であり、初期の記念碑的プロジェクト(もちろん「記念碑」からほど遠いが)といっていい。
あれから33年――。当時の年齢の倍を超えた今年、再びヒルサイドテラスの屋外でインスタレーションに挑む。と聞くと、やりかけたまま貫徹できなかった「工事中」のリベンジ? と受け止めたくなる。たしかにそういう面もあるけれど、それだけではない。
1999年から2013年まで川俣は、代官山の街並を舞台にした隔年開催の野外公募展「代官山インスタレーション」の審査員を務めてきた。もともとこの公募展が始まったきっかけのひとつに「工事中」があったことは想像に難くないし、また、川俣のような都市と切り結ぶアーティストを発掘・支援しようという意図もあったはず。しかし結果的に、どれほどの逸材を輩出したかというといささか心もとない。川俣も審査員として必ずしも満足していなかったことは、辛口の講評からも読み取れる。きっと「自分ならこうするのに」とフラストレーションをためていたに違いない。だとすれば、今回は「代官山インスタレーション」のリベンジでもある。
今回、川俣が出してきたプランは、ヒルサイドテラスの屋上を木材でおおうというもの。これまで壁、通路、天井、小屋などさまざまなかたちに木材を組み上げてきたが、屋上を使うのはあまり聞いたことがない。なぜ屋上かといえば、ヒルサイドテラスの横の歩道橋が近隣住人の要望により撤去されることになったことと無縁ではないだろう。彼は歩道橋の上から見られるインスタレーションを築くことで、歩道橋に最後の「見せ場」を与えたのだ。これなら歩道橋がなくなっても、川俣作品を見た場所として記憶に残るはず。いわば歩道橋のリベンジ?
村田真 美術ジャーナリスト、BankARTスクール校長