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ムニール・ファトゥミの新作ビデオが東京都庭園美術館で公開
2018/11/24
《エキゾティックxモダン アール・デコと異境への眼差し》展でファトゥミの新作ビデオが話題を呼んでいます。
昨年末にアートフロントギャラリーで開催された個展《ペリフェラル・ ヴィジョン》は、まさにアジアの辺境、ぺリフェリックからの視点を写真やインスタレーションで表現したアーティストが、今度は1920年代の異境をテーマにビデオを発表しました。この時代の辺境とは、アフリカやインドシナ半島などフランスの旧植民地を指します。
ファトゥミはアール・デコのフィルムと広く目されているマルセル・レルビエの無声映画《人でなしの女》を分解し、その豪奢でモダンな設えの中で当時のクリエイターたちの存在を浮き彫りにしています。これはアール・デコのもつもう一つの顔、つまり植民地的なイデオロギーの影響を探ろうという試みです。また、ファトゥミはこの映画のために美術史を紐解き、マティスやパウル・クレーは北アフリカに滞在した経験があり、ピカソやフェルナン・レジェはアフリカのお面より創作のヒントを与えたと指摘します。一方でシュルレアリストたちは同時代に生きながらも植民地的な影響に自ら反旗を翻したことも重要視しています。このビデオによって、アフリカ彫刻に代表されるプリミティズムと植民地的なアール・デコとを結ぶ線を見せようとしているのです。
ファトゥミはこれまでにも実験的なビデオにより、異文化のはざまに立つ自分のアイデンティティを主張してきました。今回は時代を遡って1920年代から30年代にかけての歴史の中に、「異境」を追求した点が新しいといえます。一つの文化が成り立つためには常にそれを外側から見ている自分があり、文化を相対化することで自分の立ち位置をみせるファトゥミの方法は一貫しています。美しいアール・デコの画面に重ね合わされる幾何学的な力強いドローイングをぜひ展覧会でご覧ください。
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■エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し
会期:2018年10月6日(土)〜 2019年1月14日(月・祝)
会場:東京都庭園美術館
開館時間:10:00–18:00 (入館は17:30まで) *11/23、11/24、11/30、12/1、12/7、12/8は、夜間開館20:00まで(入館は19:30まで)
休館日:第2・第4水曜日(10/10、10/24、11/14、11/28、12/12、12/26、1/9)および年末年始(12/28-1/4)
ウェブサイト : https://www.teien-art-museum.ne.jp/