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大岩オスカール:旅人生はつづく(東京都現代美術館での展示から
2021/07/15
7月17日(土)から東京都現代美術館で開催されるグループ展《MOTコレクション Journals 日々、記す》展に大岩オスカールの大型作品と版画が展示されています。展覧会タイトルが示しているように、コロナ禍の日常やオリンピックなどを背景に日々、制作された作品がアンソロジー風に構成されています。「旅人生」を自認しながら、それぞれの場所で社会のありようを見つめ続けるオスカールさん。今回の特集展示のメイン作品などを紹介します。
オリンピアの神、東京に着陸
《オリンピアの神、ゼウス》2019 マーカーペン、木炭、紙 各h300 x w670cm (3枚組) ©OSCAR OIWA
この作品は2019年秋にパリの日本文化会館で発表されました(《トランスフィア #6》展、キュレーター:岡部あおみ)。リオ、東京、パリの記憶がコラージュ風に配され、縦に3枚を繋げると古代オリンピアの神、ゼウスの顔が浮かびあがります。目標に向かって日々努力する姿勢はアスリートもアーティストも同じようなもの、と作家はいっています。
自分は一度もオリンピック選手になろうと思ったことはありませんが、自分のベストの作品を制作したいという気持ちを持って毎日戦っているのは、スポーツ選手と同じではないかと思います。そこで、このような身近な生活の中の「戦い」の存在と「旅人生」を融合させた新しい作品シリーズを考えてみました。オリンピックのホスト都市になった、自分と関わりのある3つの都市「リオ・デ・ジャネイロ、東京、パリ」を取り入れたそれぞれの絵の中には、自分の隠れた思い出が込められています。
(国際交流基金 《トランスフィア 2016-2020》2021 記録集p.202)
コロナ禍の《隔離生活》、版画全作品初公開
2020年にはいるとコロナウィルスの感染が世界中に広がり、オスカールさんが拠点としているニューヨークもパンデミックの直撃を受けました。タイムズ・スクエアなど中心街から人影が消え、郊外のスタジオにさえ行かれない不自由な生活。それでも何か作りたい、描きたいという欲求から大型タブレットを使ってドローイングしたのが《Quarantine Drawing Series》(隔離生活)です。今年2月には、このデジタルドローイングをシルクスクリーンで版画化し、アートフロントギャラリーで展示しました。(展示についてはこちら)
今回の東京都現代美術館展ではこの版画全作品が初めてお披露目されます。上海、大阪、昭和の日本、そしてニューヨークと時空を自由に旅して、日常の何気ない情景の細部に思いを馳せてみてください。
《不完全な国》2020 56.5 x 76.5cm BFKリーブ紙にシルクスクリーン
アーティストの克明な眼と、まだワクチンが出来ていない昨年春の想像力に驚かされます。
《キッチン》2020 565 x 765mm BFKリーブ紙にシルクスクリーン
アーティスト自身のマンションの台所を基に、動物たちも共存するような未来の縮図が描かれています。
アートフロントギャラリーではこれらの版画シリーズのほか、同時期に制作された油彩画も取り扱っています。ロックダウンのニューヨークのお店が、略奪を防ぐためにベニヤ板をファサードに打ちつけて「ロックした」情景を描いたもので、記録、人々の記憶であると同時に「それでも描く」という作家の逞しい姿が浮かび上がってきます。
板を打ちつけたニューヨークの街並み(©OSCAR OIWA, video clip より)
《shop (market)》2020 キャンバスに油彩、木片58 x 76cm
《shop (China town)》2020 キャンバスに油彩、50 x 61cm
■MOTコレクション Journals 日々、記す
特別展示:マーク・マンダース 保管と展示
会期:2021年7月17日(土)- 2021年10月17日(日)
会場:東京都現代美術館
特別出品として、大岩オスカールがニューヨークでの隔離生活中に空想の旅を描いたドローイングによる新作版画20点、オリンピックに関わる3都市(リオ・デ・ジャネイロ、東京、パリ)をテーマにした6mを超える大作《オリンピアの神:ゼウス》(いずれも特別出品)を展示。