展覧会Exhibition
川俣正 個展:Kawamata Archive 2024
2024年11月8日(金) - 2025年1月19日(日)
この度、アートフロントギャラリーでは、川俣正の個展を開催いたします。
日程 | 2024年11月8日(金) - 2025年1月19日(日) |
---|---|
営業時間 | 水~金 12:00-19:00 / 土日 11:00 - 17:00 |
休廊日 | 月曜日、火曜日、年末年始(12月23日ー1月7日) |
トークイベント | 2024年11月8日(金)18:30 - / 登壇者:工藤健志(田川市美術館・館長)x 川俣正 ※終了しました。 https://forms.gle/jUgwtMaD1QQ5RCHT9 |
レセプション | 2024年11月8日(金)トークイベント終了後(19:30頃~を予定) |
<作家コメント>
「Kawamata Archive 2024 」について――
以前、アートフロントギャラリーで「Kawamata Annual 」というタイトルで、年末にその年に行ったプロジェクトを回顧する展覧会を、通年で行なっていました。
今回は、「Kawamata Archive」という名称にして、引き続きその年のアクティブティを、写真、マケット、模型などで紹介する展覧会を行います。
自分が忘れないためにも、実際にどこで何をしてたかということを、明記した年表も作り、紹介したいと思います。
さて今年は、自分にとってどんな年だったのでしょう?
2024年10月 川俣正
「アニュアル」から「アーカイブ」へ。
活動の初期からドキュメントの重要性を唱えてきた川俣正。
本展は、1987年から1991年の毎年年末に川俣が行ったその年のプロジェクトを総括するドキュメント展示「Kawamata Annual」を20数年ぶりに「再開」させる試みであるが、「Kawamata Archive」と改称していることからも推察できるように、スマホから瞬時に世界の情報にアクセスできる時代性の中で、情報の「提示」に比して「体系化」が意識されているように思われる。ひとつのプロジェクトにおいてプランニングからインスタレーションの設置、そして解体までをひとつの作品と見なす「ワーク・イン・プログレス」を、プロジェクトの始点から終点に至るまで時系列的に分析、解釈することはもちろん重要である。しかし、川俣のプロジェクトにおけるマケットやドローイングはいわゆる「中間生成物」ではない。プロジェクトのプロセスで生み出されたものはすべて等価であり、それぞれが強い固有性を持っている。例えば、マケットやドローイングはプロジェクトに軸足を置きながらも、川俣の柔軟な創造力と独創性、そして不等角投影図法を用いた巧みな構成力によって平面ないしはレリーフの中にスペクタクルな空間を構築する、「アーティスト」としての表現と言える。一方、プロジェクトの記録写真や映像では、多くの協働者の中にその存在は溶け込み、川俣正というアーティストの営為を共同体に開放していく様子がうかがえる。プロジェクト・サイトそれぞれの風土や環境とそこに暮らす人々の生活に寄り添い、「日常」をダイナミックに構造化しながら、その感覚質を多くの人々と共有することで川俣という主体が客体化されていく「アートレス」な活動の状況が、「アーカイブ」という手法を基盤に据えることでより鮮明になっていくだろう。
本展ではギャラリーの屋外に近年精力的に手がけている《Tree hut》と《Nest》の新作が設置され、屋内の2つの展示室ではそのマケットをはじめ、写真と川俣の手書きメモによる2024年の活動ダイアリー、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」のためのマケット、モデルと現地で公開制作された作品に加え、六甲、仙台、京都で行われたプロジェクトの資料や、2024年の活動記録の写真、映像などがインストールされている。
プロジェクトごとに集成された資料、そのひとつひとつに主と従の関係性はなく、すべて等価であるため、我々は自由な視点による能動的な鑑賞が可能となる。ゆえに複数のプロジェクトを横断しながら、鑑賞者それぞれの興味関心に沿って情報へランダムアクセスすることで、現代が孕む課題を様々に導き出すこともできるだろう。プロジェクトと同様に、川俣の2024年の体系化された活動記録の総体である本展もまた、多様な見方や解釈・分析を受け入れる「参加性」と「開放性」を有しているのだ。
【工藤健志 / Takeshi Kudo】
1967年福岡県生まれ。2024年4月より田川市美術館 館長に就任。
1993年から1998年まで田川市美術館学芸員として勤務。川俣正のプロジェクト「コールマイン田川」(1996-2006)を発起当初から数年間、現場で体験する。
1998年、青森県立美術館の開館準備室時代から学芸員として在籍し、2022年から2024年まで同美術館の美術企画課長を務める。
主な展覧会は「立石大河亞」(1994年)、「山本作兵衛展」(1996年)、「ロボットと美術」(2010年)、「美少女の美術史」(2014年)、「富野由悠季の世界」(2020年)、「大・タイガー立石展」(2021年)など。
「Kawamata Archive 2024 」について――
以前、アートフロントギャラリーで「Kawamata Annual 」というタイトルで、年末にその年に行ったプロジェクトを回顧する展覧会を、通年で行なっていました。
今回は、「Kawamata Archive」という名称にして、引き続きその年のアクティブティを、写真、マケット、模型などで紹介する展覧会を行います。
自分が忘れないためにも、実際にどこで何をしてたかということを、明記した年表も作り、紹介したいと思います。
さて今年は、自分にとってどんな年だったのでしょう?
「アニュアル」から「アーカイブ」へ。
工藤健志(田川市美術館 館長)
活動の初期からドキュメントの重要性を唱えてきた川俣正。
本展は、1987年から1991年の毎年年末に川俣が行ったその年のプロジェクトを総括するドキュメント展示「Kawamata Annual」を20数年ぶりに「再開」させる試みであるが、「Kawamata Archive」と改称していることからも推察できるように、スマホから瞬時に世界の情報にアクセスできる時代性の中で、情報の「提示」に比して「体系化」が意識されているように思われる。ひとつのプロジェクトにおいてプランニングからインスタレーションの設置、そして解体までをひとつの作品と見なす「ワーク・イン・プログレス」を、プロジェクトの始点から終点に至るまで時系列的に分析、解釈することはもちろん重要である。しかし、川俣のプロジェクトにおけるマケットやドローイングはいわゆる「中間生成物」ではない。プロジェクトのプロセスで生み出されたものはすべて等価であり、それぞれが強い固有性を持っている。例えば、マケットやドローイングはプロジェクトに軸足を置きながらも、川俣の柔軟な創造力と独創性、そして不等角投影図法を用いた巧みな構成力によって平面ないしはレリーフの中にスペクタクルな空間を構築する、「アーティスト」としての表現と言える。一方、プロジェクトの記録写真や映像では、多くの協働者の中にその存在は溶け込み、川俣正というアーティストの営為を共同体に開放していく様子がうかがえる。プロジェクト・サイトそれぞれの風土や環境とそこに暮らす人々の生活に寄り添い、「日常」をダイナミックに構造化しながら、その感覚質を多くの人々と共有することで川俣という主体が客体化されていく「アートレス」な活動の状況が、「アーカイブ」という手法を基盤に据えることでより鮮明になっていくだろう。
本展ではギャラリーの屋外に近年精力的に手がけている《Tree hut》と《Nest》の新作が設置され、屋内の2つの展示室ではそのマケットをはじめ、写真と川俣の手書きメモによる2024年の活動ダイアリー、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」のためのマケット、モデルと現地で公開制作された作品に加え、六甲、仙台、京都で行われたプロジェクトの資料や、2024年の活動記録の写真、映像などがインストールされている。
プロジェクトごとに集成された資料、そのひとつひとつに主と従の関係性はなく、すべて等価であるため、我々は自由な視点による能動的な鑑賞が可能となる。ゆえに複数のプロジェクトを横断しながら、鑑賞者それぞれの興味関心に沿って情報へランダムアクセスすることで、現代が孕む課題を様々に導き出すこともできるだろう。プロジェクトと同様に、川俣の2024年の体系化された活動記録の総体である本展もまた、多様な見方や解釈・分析を受け入れる「参加性」と「開放性」を有しているのだ。
【工藤健志 / Takeshi Kudo】
1967年福岡県生まれ。2024年4月より田川市美術館 館長に就任。
1993年から1998年まで田川市美術館学芸員として勤務。川俣正のプロジェクト「コールマイン田川」(1996-2006)を発起当初から数年間、現場で体験する。
1998年、青森県立美術館の開館準備室時代から学芸員として在籍し、2022年から2024年まで同美術館の美術企画課長を務める。
主な展覧会は「立石大河亞」(1994年)、「山本作兵衛展」(1996年)、「ロボットと美術」(2010年)、「美少女の美術史」(2014年)、「富野由悠季の世界」(2020年)、「大・タイガー立石展」(2021年)など。