屏東 ビレッジ企画展示
ここでは、かつて人々の生活が息づいていたこの場所、忘れられた漁村の廃屋で、私たちは耳を澄ませば響き渡るかもしれない「記憶の残響」を探求します。エキシビションのテーマ「反響定位」は、空間が持つ無数の声、過去と現在の重なりを感じ取る行為を意味します。かつての住民が置き去りにした生活の痕跡と、訪れる者の気配が響き合うことで、廃屋はただの物理的空間以上の「共鳴体」へと変わるのです。
参加アーティストたちは、音や光、インスタレーション、映像などを用いて「反響」を具現化し、見えない音や存在を感じさせます。家の壁や床、窓に至るまで、廃屋のすべてがアート作品の一部となり、来訪者はただ見るだけでなく、自らもこの空間の一部となって反響を生み出す役割を担います。作品が配置されるそれぞれの部屋には、時を経た静寂の中に漂う不在の「存在感」が息づき、過去に響いていた生活音や会話の断片がふと心に浮かぶことでしょう。
「反響定位」は、忘れ去られた場所に潜む記憶と対話し、来訪者自身がその反響を探る旅です。目に見えない歴史や失われた声が、この空間に新たな生命を吹き込み、ここで生まれる反響が未来へと続く軌跡となることを願っています。
主な展示作品:
市川平《バオバブ プランテーション》
星の王子様でも有名なバオバブ。この「逆さまの木」をモチーフに、固定されない物の見方を表すモニュメントとして世界中で展示されています。異なる視点で世界を見直す遊び心を表現しています。
角文平《人工湖》
地球温暖化と海面上昇をテーマにした作品です。台湾付近の海面上昇スピードは毎年平均5.7mmと地球平均を上回っている。平均気温が2度上昇すると屏東の1.04%が海に沈むという現実を背景に、頭上高くに舟を配置し、レーザー照射で仮の水面を作り出しています。この作品は、人類が自己利益を優先し自然のバランスを壊し続ければ、こうした未来が現実となる可能性を警告しています。暗闇に浮かぶレーザーの光は、私たちが未来に向けて守るべき「ボーダーライン」を象徴しています。
大島愛《girls throwing pillows》
白い粘土でできた少女たちが目覚め、遊び、争い、再び眠る様子を通して、人生や人間の本質を問いかけます。
大島愛《麗しい島について》
台湾の歴史や人々の生活を重ね合わせ、時を超えた「顔」を浮かび上がらせる試みです。
青山夢《蝙蝠怪獣》
日本の特撮や神話に影響を受けた怪獣シリーズの一作で、コロナウイルスをモチーフに社会に脅威をもたらした存在を具現化した作品です。脅威を可視化することで、その正体を見極め、乗り越える人間の強さを表現しています。この作品は過去の困難を振り返りながら、人々のたくましさと未来への希望を象徴しています。
屏東 アーティストルーム
屏東・海口のロングビーチホテルでは、地元宿泊業と国際アーティストによる「アーティストルーム」という新たな試みが展開されています。このプロジェクトは、アートと空間の融合を通じて、訪れる人々に新しい視点と体験を提供するものです。エキシビション終了後には、作品内に宿泊することが可能となり、アートとの対話や自然とのつながりを深く味わう特別な体験ができる仕組みです。
角文平《登攀と漂流》
角は、日常品と想像力を活かして既存の空間に独自の視覚的対話を生み出すことで知られています。今回の展示では、彼の「ボルダリングシリーズ」を大胆に取り入れ、カラフルなホールドが部屋の壁から天井にかけて散りばめられ、訪れる者が視覚的にも身体的にも「登攀」を感じる空間を作り出しています。このシリーズは彼が世界中で手掛ける代表的な作品の一つであり、ロングビーチホテルの一室で、スポーツとアート、日常と想像、屏東の壮大な自然とアクティブな遊び心が交差する空間に仕上がっています。
一方で、浴室では「水平線」をテーマに、水平線を強調した幻想的な空間が広がります。空中に浮かぶ船や島が描かれ、海に面した屏東・海口のロケーションを感じさせる演出が施されており、部屋全体が「漂流」するような静謐で神秘的な感覚に包まれます。この対照的な「登攀」と「漂流」の二重構造が、角文平ならではの空間の物語を生み出し、訪れる者に視覚的な刺激と共に、自然の雄大さや冒険心を呼び覚まします。
エコ・ヌグロホ《想像の航海:愛と希望の旅》
インドネシアのアーティスト、エコ・ヌグロホによる「想像の航海:愛と希望の旅」は、屏東・海口エリアの芸術祭の中で愛と希望をテーマにしたインスタレーションです。この作品は、今まさに世界と人々に必要とされる「ポジティブな雰囲気」と「心地よい空気感」を生み出すことを意図して制作されました。愛、思いやり、分かち合いが私たちに力を与えるというメッセージを込め、壁面には柱のようにそびえる図像が描かれ、力強さが視覚的に表現されています。
エコは、想像を通じて現実の枠を超え、無限の可能性の世界へと一歩を踏み出すことの重要性を語りかけています。この「航海」では、善良さや思いやり、他者に愛を分かち合うことで私たちが日々の困難を乗り越える力を得られるのではないかというメッセージが伝えられます。壁面には「外宇宙への想像」にインスパイアされた幻想的なキャラクターが広がり、エコ独自のファンタジー世界が空間全体を包み込みます。
屏東・海口が国際化の一歩を目指している今、この作品は地域と共に前進し、愛と希望を未来に向けたポジティブな力の可能性として表現し、来訪者に楽観的なメッセージを届ける空間を提供しています。
青山夢《バレンの物語:百歩蛇と首長の娘》
青山夢の作品は、土地の物語や伝承を取り入れた幻想的な世界観が特徴です。今回、彼女は屏東の先住民族であるルカイ族の伝承「バレンの物語」をテーマに、独自の感性で「百歩蛇と首長の娘」を描き出しています。壁画には、神聖な百歩蛇が優美にうねり、村の守護と自然の力を象徴する存在として描かれています。その隣には、ルカイ族の首長の娘であるバレンが誇り高く佇み、伝承に宿る勇気や敬意が繊細に表現されています。
ルカイ族の神聖な伝承と青山の幻想的な表現が織りなすこの空間は、地域の歴史と自然に対する敬意を具現化したものです。青山の力強い色彩と象徴的な描写が、訪れる者に「物語の中を歩む」ような感覚を与え、自然と共存することの意義や美しさを再認識させます。
ロングビーチホテルのアーティストルームは、落山風藝術季の実験的な要素を取り入れた新たな試みであり、屏東・海口の新たなランドマークとして期待されています。会期後に作品内に宿泊できる体験は、訪れる人々にとってアートを一時的なものとしてではなく、生活に取り入れ、深く味わう機会となるでしょう。
エキシビション終了後には、作品の中に宿泊することも可能となり、訪れる者がアートと対話し、作品とともに過ごす特別な体験を味わえる、屏東の新しい名物となることが期待されています。
大岩オスカール《Giant Oil Octopus & Baby Octopus》
今回は、1999年に大岩が描いた作品《水族館》から登場したタコのような空想の水性生物「オイル・オクトパス」を巨大な立体作品として展開。巨大なオイル・オクトパスが、浜辺で風に舞う子タコを導き、海洋生態系の豊かさと家族の絆の温かさを象徴すると同時に、海を守り環境を大切にすることについて問いかけます。
展示は3月2日まで、ぜひお出かけください!
■2024落山風藝術季 -在海邊的人- Luo Shan Feng Arts Festival
会期:2024年12月20日(金)~2025年3月2日(日)
テーマ:People by the sea
会場:屏東海口港 看海美術館 Seaside Gallery(屏東縣車城鄉海口路1-12號、台湾)、およびその周辺
・美術館エリア
・ビーチ展示エリア
・街頭展示エリア
・ビレッジ展示エリア
・アート ホテル
ウェブサイト(photo: Pingtung County Government)